第37話 内緒のお買い物。

「よし、置き配で時間のみ指定。明日以降」

 明日は平日。

 愛娘由都は高校に登校するから、家には私だけ。でも、午前中から午後一番目までの範囲指定にしたの。

 由都は冬休み前の面談期間だから帰宅が少し早いのよね。


 ……。


 モニタに出たのはご購入ありがとうございます。の文字。


 今購入したのは由都と、それからみさきさんへのクリスマスプレゼント、のおまけ。


 最初は、愛娘宛てのクリスマスプレゼントのおまけを探していたのよ。

 由都にはあれも似合う、これも似合う……! って、選ぶのが楽しかったわ。

 カートに入れて、さて、と、って思っていたの。

 ……その後で、みさきさんにも……、って思ってしまって。


 クリスマスプレゼントは由都と京さんの分、それからみさきさんの分も既に購入済。


 私の両親、京さんのご両親とお祖父様お祖母様、そして先達庵のお二人にも。きちんと配送指定済。私の両親は海外なので少し早めに指定した。

 先達庵のお二人には今日お返しのハンカチを探した売場で良いものが購入できたので別々に配送指定をして頂いたので、安心。


 京さんからついさっき、『しず、無事に着いたよね。おやつとご飯、食べた? 土岐さんと由都は僕が送るから安心してね。今、しゃぶしゃぶを食べに来ているよ。今年の君の誕生日の打ち合わせとそれから去年の話を色々しているんだ。土岐さんから了承されたから、次は車で送らせてね?』

 っていうメールが着いた。


『ちゃんと着いています。おやつのチョコレートケーキは食べました! 色々ありがとう!』

 ……返信。

 ごめんなさい、そして、ありがとう、京さん。


 本当に。


 誰かの車に一人で乗せてもらうのと、京さんの車に一人で乗るのは意味が全然違うし、今までは普通に乗っていたのに。


 ……私が、一人で色々考えているだけなのは、分かってるつもり。


 京さんからメールをもらって読んで、去年はみさきさん、由都と一緒にご実家に帰省されたのよね……って思い出して、

 ご両親に愛娘をよろしくお伝えしてね、って意味でよろしくね、ってしたことを思い出したのも、……うーん、となってしまったのもそう、私。


 我ながら、京さんへの返信は無難なものだった。


 さすがに、今年はまだ、「今年は私が一緒に行きたいです!」とか言える筈も、そのつもりもないし。


 そもそも、去年の私が愛娘をお願いします! って思っていた程の熱量が今の私にあるの? と自問自答したら、まだ、全然自信がない。


 でも、来年なら……もしかしたら、って。


 だから、みさきさんの分もクリスマスプレゼントのおまけを注文したの。


 ……これが届いたら由都に相談して、

「お母さん……やり過ぎだよ……」って言われたら、自分のものにしようと思う。


 みさきさんの分のおまけは、それくらいの退路あり、の内緒のお買い物なのだけれど……。


 あ、そうだわ。由都への分も見付からないようにしないと。


 ありがとう! って言ってくれる由都のかわいい顔、たくさん見たいものね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る