第15話 デート、の行き先。
『来週の土曜日11時、こちらの駅に集合、はいかがでしょうか。庭園をゆっくりと散策してから時間をずらしてお昼を頂くのはどうでしょう? 映画とかの方が良かったら、遠慮なく教えてね』
……送信。
庭園のホームページのURLと最寄り駅情報もちゃんと添付できた。
今日の愛娘由都の予定はお父さん、京さんとのデート。
この間私と由都とみさきさんの三人で行ったカフェが気に入ったみたいで、京さんとそこで待ち合わせてお昼を食べてからお買い物らしい。
お夕飯の時は私も誘ってくれるとのことなので、その前に大事な連絡を済ませておいたのだ。
由都は私達と行った新しいお店にお父さんを連れて行きたいらしい。そんなに気に入ったのなら、ぜひまた皆でも行きたいわよね。
そして多分、お父さん……京さんは今日のお買い物で愛娘の合格のお祝いを一緒に選びたいのだと思う。
「お母さん、私達との待ち合わせ前に必ずみさきさんにデートの場所を連絡しておいてね! 帰ったら確認するから! 行ってきます!」
元気に挨拶をしてくれた由都に、改めて言われてしまった。
そう、デートの場所。
メールはほぼ毎日、あたりさわりのないことをやり取りしているのだけれど、来週の土日どちらも大丈夫、までで止まっていたの……。
庭園、とか若い子に? とは思ったのよ私も!
でも、水族館もプラネタリウムも映画もお買い物も、全部、三人で行ってたの!
しかも私、愛娘と家庭教師さん、若い二人の恋愛のお邪魔じゃないかしら、って心配しながら……。
うう、思い出しただけで恥ずかしい……。
由都が、「お母さん、一緒に行けるよね?」って何度か確認していたのも、私は遠慮した方が良いのかな、って思ってたし……。
京さんに聞いたら「もしも二人で行きたいならあの人達はしずにそう伝えるから」って言われてたから、安心していて。
実際、二人でお出かけすることも多かったから、三人で、の時は一緒に行っても良いのね、って嬉しかったの。
だからたくさんの場所に三人で行って(たまに京さんも増えて四人で)、楽しくて……。
今回、デートで行く場所が見付からなかったという結果で。
由都に相談したら、「どうせ私も行くんだし、行ったことがある場所でも大丈夫だって! それよりは早く決めて連絡!」って。
でも、やっぱりそういう……恋愛対象は私だっていうみさきさんの気持ちを伝えてもらった後で最初に行く所だから、って考えていたら、もう来週、になっていて……。
今朝、再度由都に背中を押されて、送信したの。
……やっと。
『庭園、素敵ですね! 土曜日、場所と時間も確認しました! 今から楽しみです!由都ちゃんにもよろしくお伝え下さいね』
30分後。もしかしたら、30分も経ってはいないかも。
返信が、早い。
嬉しくて尻尾ぱたぱた、の黒い美人な狼さんがスマホの向こうに見えた気がして。
……何だかすごく、安心した。
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