第14話 [愛娘 由都]予習とお話とお母さんの誕生日と。

 こんにちは、由都です。


 お母さんとみさきさんの初めてのデートも無事に済みました。私も一緒だったけど、十分、デートだったよね。


 今日はほんの少しだけ、時間を戻したお話を聞いてね。


 私とお父さんと、二人でした会話です。どうぞ。


 場所は、お父さんのマンションです。


「お父さんありがとう。これで学校の予習はしばらくの間は大丈夫だね」


 お父さん、実は文系科目も得意。


 私が文系科目は少し苦手、みさき先生は教えるのは理系科目よりは苦手、なのでとてもありがたい。


「指定校推薦だからよほどのことがなければ合格を取り消されることもないだろうけれど、気を付けるのはとてもいいね。それに、知識は君の武器になるから」


 お父さんは、すごくいいことを言ってくれた。


 周囲の子達よりも先に大学合格を決めたけれど、校内の友人にはまだ秘密。


 知っているのはスポーツ推薦で推薦合格を得た友達だけ。お互いに秘密にしていないといけない期間だから漏れる心配もない。

 あとは先生方と身内だけ。つまり、お母さんお父さんとそれぞれの実家と、あとはみさき先生。それだけ。


 みさき先生、みさきさん。家族枠だよ? お母さんもお父さんも了承済。


 まあ、「先生にも伝えて良いよね?」って私が言った時のお母さん、今から考えたら『あらあらやっぱり……うふふ』な感じだったなあ。

 あれ、絶対に愛娘家庭教師みさき先生が恋愛関係、だと思ってたよね。


 あの頃の私が先生の恋愛対象がお母さんだってことが全然伝わってなかったって気付けてたら、もう少し早く二人の関係、進んでたのかな。

 

 ただ、お母さんは私の進路が最優先なのは間違いないから、むしろ、今の進み方の方が良かったのかな。


 まあいいや、もじもじしてるお母さん、かわいいから。

 先は長いと思うけど、進んでない訳じゃないから先生……みさきさんには頑張ってほしいな。


「由都のことだから心配してはいないけれど気を付けてね。受験というもので心身に負荷が掛かる人もいるから。今の時期は指定校合格、というのは秘匿事項で」

 あ、お父さんの真剣な顔。


 これはきちんと聞かないと。

「うん。とにかく気を付けるね」


 私の場合はあり得ないし、考えてもいないけれど、こういうことが身内から漏洩する事はままあるらしい。

 お父さんのお婆ちゃんだから私にはひいお婆ちゃん(実はみさき先生の高校の理事長さんだ)がこっそり教えてくれた。


 だから、私もひいお婆ちゃん達の学校に中学校から入学、ということもできなくはなかったけど、「由都ちゃんなら大丈夫でしょうから」と今の高校を薦めてくれたのはひいお婆ちゃん。


 ひいお婆ちゃんとお婆ちゃんとお母さんとは実の孫それから息子(お父さん)より仲良し。

 お婆ちゃんお爺ちゃんとはあんまり会えない(二人とも学校関連じゃない職種でバリバリ働いてるから)けど、その代わりひいお婆ちゃんとひいお爺ちゃんとは会えている方だと思う。


 離婚の時には、ひいお婆ちゃんもお婆ちゃんも、「しずちゃんと由都ちゃんとの関わりが減らないなら良いわ」と言ったくらいに元お嫁さんとひ孫(と孫)を好いてくれているひいお婆ちゃんとお婆ちゃん。


 あ、お母さんの方のお婆ちゃんお爺ちゃんとも仲良しだよ? ただ、今のお母さんくらいの年にお婆ちゃんがお母さんを出産してて、今は早期退職で海外在住中なの。


 だから、お母さんの方のひいお婆ちゃんとひいお爺ちゃんに会えるのはお墓参りの時くらい。色々あって毎年とはいかないんだよね。もちろん、連絡はたくさんしてるよ。


 離婚についてはお父さんのお婆ちゃん、お母さんつまり私のひいお婆ちゃん、お婆ちゃんとほぼ一緒の反応。


 私も両家のお婆ちゃんお爺ちゃん、大好き! 


 もちろん、ひいお婆ちゃんとひいお爺ちゃんもね!


「土岐さんも自分のご実家には一切話していないらしいから。ありがたいね。君の家庭教師に推薦した者としては鼻が高いよ。で、どうするのかな、しずの誕生日は」


 今は11月半ば。お母さんの誕生日は近い。

 12月の最初の頃で、クリスマスよりも大分早いから、うちは毎年12月は賑やかだ。


 絶対に指定校推薦で合格できるという確証があった訳ではないけれど、お母さんのお誕生日を心置きなくお祝いしたいから頑張れた、というのは大きかった。


「うん、その前に今週末は私、お父さんとデートでしょう? お母さんに声を掛けてたカフェの店長さんを牽制したら一緒にプレゼントを買いに行こうね!」


「もちろん、お供をさせてもらうよ。前日に君の装いをメールで送ってくれるかな?」


「うん、分かった! 仲良し親子しようね!……お家でも仲良しだけど!」


「嬉しいね。しずはともかく、僕は年頃になったら由都からは距離を取られるかと思ってたよ」


「うーん、確かにお父さんうざい! とかパパがうるさいの! とかって子、クラスにもいるけど。話聞くと、お父さんと違いすぎるからうんうん、って聞いてるだけ」


「偉いね、聞き上手は素敵だよ」


 お父さんのことを学校で言うと、何を話しても自慢になっちゃうから自然とそうなってるんだけど。でも。


「お母さんがそうだから! お父さんも素敵だよ。……あれ」

 困った。


 二人を見守りたい、と思ってるのに、大事な事、忘れてた!


「由都、どうしたの?」


「私……みさきさんにまだお母さんの誕生月しか訊かれてないかも」

「へえ。土岐さんにしては珍しいね」


「ちゃんと告白してから聞きたい、って言われてたから。誕生日のお祝いは私がいつも預かってたの。……今日、私が家を出るとき、お母さんデートに誘う、って頑張ってたから……みさきさん、今頃喜びまくってるかも」


「……だったら、少し時間を置いてから伝えなさい。土岐さんが興奮して発熱でもしたらたいへんだよ」

「そうだね、そうする。……去年は三人でお母さんの誕生日お祝いしたけど、今年は?」


「僕はしずの誕生日かクリスマスか、どちらかに参加させてもらえたら嬉しいな」

「そっかあ、でも両方の日を四人でお祝い、も良いよね! そのうちお父さんと私の二人きりになるかもだけど!」


「そうだね。本当に由都は母親の恋愛に理解があるねえ」


「お相手によるよ!」

 私は思わず、握りこぶし。


 そう言えば、お母さん、デートの場所、決まったのかな?






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