第13話 [家庭教師 土岐みさき]お誘い……!
うちの大学は緑とベンチが多い。そして、一般の方も入ることが出来る。
正門の近くには金属探知機があり、この広い敷地内にも幾つもの防犯カメラが設置されていたりはするけれど。
今日のお昼は焼きそばパンと卵サンドと抹茶ラテ。四限が少し早く終わったので無事購入できた。
近所のパン屋さんがお昼だけ正門近くで出張販売をしてくれているのだ。
もちろん、大学には許可申請済。教授や准教授、講師の先生方は前日予約をしている方もいるらしい。羨ましい……。
焼きそばパンのソースとふかふかのコッペパンが絶妙。保冷剤と保冷バッグを使えばしずるさんと由都ちゃんへのおみやげに出来るかなあ、と思いつつ、口を動かす。
スマホの着信音。
放っておこう。内定先からの連絡はメッセージアプリだし。
あ、でも一応。実家とかかも……。
そう考え直して画面を見る。
「し、しず……!」
急げ、急ぐんだ土岐みさき!
「はい、みさきです!」
間に合った……。でしゅ、とか言わずに済んで良かった……。
時間は大丈夫かと確認してくれるしずるさんの優しい声が染みる……。
「大丈夫です! 今、大学の敷地内で昼食を取っていました。……学食じゃなくてベンチです。しずるさんの声を聞けるなんて嬉しいです!」
留守番電話対応にならなくて良かった!
しずるさんは普段から私の声がきれいだと褒めてくれる(喜!)けど、あまり大声になってはいけない。
「あ、あの、ね。来週の土日か次の祝日、空いてますか? お出かけ……デート、しませんか?」
お出かけ、をデート、って言い換えてくれた……!
「……全て空けます!」
声は抑えろ、土岐みさき!
「ご予定があるなら優先してね」
みさきさんと会う以外で優先する予定なんて、外せない用事の由都ちゃんと会う、くらいじゃないかな。そもそも、由都ちゃんも一緒なのだから、優先の必要はないよね。
「じゃあ、予定のない日をメールかアプリでご連絡しても良いでしょうか。今週末迄には必ずご連絡します。由都ちゃんにもよろしくお伝え下さい。三人で会えたら良いなあ」
進学先が決まった女子高校生だから、お友達との予定などもあるだろう。お友達は忙しくても、自由に一人で行きたい所や行きたかった所もあるかも知れないし。
しずるさんと二人きりでなくて良いの? って?
あのね、しずるさんは常にかわいらしくて素敵で安らぎ笑顔が最高だけど、愛娘由都ちゃんといる時にふと見せる「お母さん」の顔が最っ高! なの!
「……ありがとう。お願いします。……じゃあね」
ありがとう、なんてこちらが何十回でも言いたいです!……でも、うるさくなるから。
「はい!」
……私、最後がうるさかったかも。
焼きそばパンと卵サンドをきちんと食べて抹茶ラテも飲み、指定のゴミ箱に分別廃棄。
その後は一目散に図書館へ。
提出課題、内定先へのレポート、あとは……。
大丈夫、来週末に終える予定だったものを少し前倒しするだけ。
『全ての日が空きました。日時と待ち合わせの場所のご連絡をお待ちしています。本当に楽しみです』
メール送信したのは、翌日の朝。
我ながら良く頑張った。全部は終わらなかったけど余裕のあるスケジュールは組めた。
あと、何故メールかと言うと、しずるさんはメールを好まれるからだ。かわいい。
それに、メールなら、しずるさんフォルダを作れる。
ちなみにメッセージアプリはしずるさんと由都ちゃんと私と先生で作ったグループ。家庭教師関連用。たまにしか使われないけど、やっぱりあると安心だよね。
由都ちゃんや伊勢原先生とのやり取りはまた別のグループだ。こちらは頻繁に使っている。
『ご連絡ありがとう。今日中には日程他を連絡します。待っててね 私も楽しみ』
通学途中の乗り換え駅で確認したメール。
空白が……。
きっと、あ、そうだわ、って追加してくれたんだ。
うわ、嬉しい。
どうしよう。
楽しみすぎて私、来週中に終える予定の諸々、今週中に終えるかも知れない……。
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