第12話 改めまして、お誘いします。

「……はい、みさきです!」

 

 メッセージアプリよりもメール、メールよりも電話の方がきちんと会話をした、と実感できるから電話での連絡にした。


「時間は大丈夫?」


 一応、確認する。


 デートの行き先候補は幾つか絞れたけれど、まだ、決まっていない。

 でも、悩みに悩んでいた昨日、独りで夕ご飯を食べていた時、先にみさきさんの予定を訊かないといけないのでは? と気付いたのだ。


 そう、私と違ってみさきさんは忙しい。


 なるべくお昼休みの時間帯になるようにかけたのだけれど。


 通話が難しかったら、とりあえずメールだけさせてもらおう。そう思っていた。


「大丈夫です! 今、大学の敷地内で昼食を取っていました。……学食じゃなくてベンチです。しずるさんの声を聞けるなんて嬉しいです!」


 本当に嬉しく思ってくれているのが分かる声だ。

 それでも、弾んだ声が大きくなりすぎないように気を遣ってくれているらしい。


 あと、相変わらず、耳に残る良い声。


「あ、あの、ね。来週の土日か次の祝日、空いてますか? お出かけ……デート、しませんか?」


 またお出かけ、と言ってしまい、慌てて訂正する。


 このお誘いはデート、デートなのよ!


「……全て空けます!」


 力強く返事をされた。大丈夫なの?


「ご予定があるなら優先してね」


「じゃあ、予定のない日をメールかアプリでご連絡しても良いでしょうか。今週末迄には必ずご連絡します。由都ちゃんにもよろしくお伝え下さい。三人で会えたら良いなあ」


「……ありがとう。お願いします。……じゃあね」

「はい!」


 気分がやわらいだ。


 みさき先生……みさきさんは、本心から、由都のことも待ってくれているのね。


 本当に、私……お母さんのしずるさんを思ってくれている人。


 嬉しい。早く行き先を決めよう。


「お母さん……お母さんと会えるなら、みさきさん、もうね、本当に外せない用事以外はそれを優先するから。あと、もし忙しくても時間は作るよきっと。みさきさん、今だってお誘いの電話がきた、やるぞ! ってめちゃめちゃはりきってるよきっと!」


 高校から帰宅した愛娘に電話での遣り取りを話したらこう言われた。


 そうなの、かも。


 確かに翌日の朝、『全ての日が空きました。日時と待ち合わせの場所のご連絡をお待ちしています。本当に楽しみです』というメールが届いた。


 メッセージアプリじゃなくて、メールで。


 きっと、メール好きな私にあわせてくれているんだ。


 そんな気遣いも、嬉しい。


『ご連絡ありがとう。今日中には日程他を連絡します。待っててね』


 返信をしようとして、慌てて一言付け足す。


『私も楽しみ』


 できた。……送信。


 みさきさんに喜んでもらえたら嬉しいな。









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