33th mission 実力差

 ――2つの隕石が、吸血鬼の放った攻撃を無効化した。俺は、その小さい子石程度の隕石の衝撃を見てすぐに誰が来てくれたのか察知した。




「……サマンサ!」




 日中は、黒い服に全身を包み大きな帽子を被っていた女の子だったが、今の彼女は普段と全然違う格好をしていた。ピンク色ベースで白とピンクのしましま模様をした温かそうなボタンのついた長袖のパジャマを身に纏い、頭だけいつもの黒い大きな

魔法使いの帽子を被っており、手には大きな杖を持っていた。




 ――なんだか、凄く……アンバランスな格好だ…………。





 そんなツッコミを心の中で決めた俺は、サマンサの後姿をジーっと見つめていた。彼女は、激昂した感じにホテルの建物の一番上の屋上に立つ吸血鬼に向かって言った。







「……貴様か。お嬢を傷つける者は、誰であろうと……私が許さん!」




 サマンサは、そう言うとそのまま杖を吸血鬼の方に向けて早速自らの魔法を発動させた。そして、それを見ていた俺の手の中で苦しそうに眠るアリナがサマンサに向けて言った。



「……気を……つけて…………サマ……ンサ……」






 サマンサは、コクっと頷きすぐに詠唱を始める。



「……宇宙を飛び回る流れる岩石たちよ……。行き場もなく彷徨う……悲しき隕石ニビル達! 今、結集せよ!」




 刹那、サマンサの杖の上。遥か上空より真っ暗な闇を突き抜けて岩石たちが彼女の周りに結集する。






 そのとんでもない数の隕石達の数を見て吸血鬼ノース・ヘラトゥは、興味深そうに微笑む。







「……ほぅ」




 吸血鬼が余裕の笑みを浮かべる中、サマンサは更に結集させた6つの隕石達を吸血鬼にぶつけに行った。









「……くたばれ。このゴミめ……」




 サマンサは、一気に上空に浮かんだ隕石達を容赦なく吸血鬼にぶつけに行った。6つの超巨大な隕石達が一か所に集まっていく。


 俺は、この隕石の波動を見て驚いた声で言った。






「……おいおい! ちょっと待て! そんなデケェ隕石を6つもぶつけに行ったら俺達の宿がぶっ潰れちまうだろうが!」





 しかし、こんな事を言ってもサマンサは、止まらない。



「……殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す!」




 サマンサの強烈な隕石が吸血鬼にぶつかっていきそうになる……。直前まで来たその時だった……!










「……素晴らしい魔法だ。宇宙を操るなんて……我も驚いたよ。しかし……残念だが、我にそんなタダの魔法攻撃は通用しない」




 ノース・ヘラトゥは、そう言うと自分の懐から何かを取り出した。






 ――あれは……なんだ?




 俺には、暗闇でよく見えなかったが……しかし明らかに剣ではなかった。それほどの長さはない。小さい何かだ……。何だろう。あれは……。





 吸血鬼は、その謎の物体を取り出すとそれを勢いよく、まるでテニスのラケットのように思いっきり振った。そして隕石を、その手に持っている何かに当てると彼女はその瞬間に詠唱を始める。







「……生まれ変われ。覇・ネクロマンシー……」




 刹那、その何かにぶち当たった隕石が光に包まれる。そして、たちまち光の中で隕石は、姿を変えていく。……ノース・ヘラトゥは、隕石の1つが変化を遂げている間に更にもう1つ……もう2つと隕石に自分の手に持つ何かを当てていった。






 そして、全ての隕石に触れ終えるとたちまち、彼女の周りに降りかかって来ていたはずの隕石達は、全て光の中で豆粒のように小さいサイズに変えられてしまっていた。






「……なっ。何!?」




 そして、豆サイズになってしまった隕石をノース・ヘラトゥは手に持ったそのアイテムで6つ全て弾いて、何処かに飛ばしてしまう。サマンサは、ショッキングな声で言った。






「……そっ、そんな……バカな……!」





 絶望していた彼女だったが、そこへ吸血鬼は更に告げた。





「……聞かなかったか? 我に普通の魔法は通用せん。お前達の普通の魔法は、全て……このネクロマンシーで無力化できる。分かったか? これで……力の差を。古代魔法の使い手を出せ。我を倒したければな。そうでないと……楽しめぬ」







「くそ……」



 サマンサは、とてもショッキングな声でそう呟いた。すると、吸血鬼は言った。





「……まぁ、良い。今日ここで古代魔法の使い手を殺しておこうと思ったが……めんどくさくなった。やめよう……。お前は、生かしておくぞ。……全てを破壊する滅殺の魔法……ケンダ魔法の使い手よ。今度会う時を楽しみにしているぞ……」





 吸血鬼は、そう言うと俺達の元から消えた。彼女は、闇に包まれていつの間にか姿を消していたのだ。





 残された俺達3人は、まだ強張った表情をしていた。サマンサは、悔しそうに言った。






「……クソッ!」















 俺達の上に三日月が輝くのであった……。



















 ――To be continued.

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