19th mission 飛行機・特攻!
岩のけん玉の玉の部分が砕けた。左右から降り注ぐ隕石を鉄球の力で守っていた俺だったが、これがそろそろ限界を迎えようとしているのだ。鉄球が凹みだした。
このまま行くと鉄球が壊れる……。何としてもそれだけは阻止しないといけないのだが、しかしそのために作った隕石のけん玉。これが、とても脆い。いや、隕石に隕石をぶつけているのだから仕方のない事なのかもしれないが、しかしそれにしたってびっくりだ。
けん玉の心臓と言っても過言ではない玉の部分がたった一度の衝突で粉々に砕けてしまった。今、俺が魔法で作った岩のけん玉は、持ち手と糸の部分とそして糸にくっついた真ん中に穴の開いた玉の欠片。これだけが残っていた。
こんな状態で、次に左側から降って来る隕石から身を守る事なんて不可能としか言いようがなかった。
――どうする……。何か、何か策はないか?
俺は頭の中で様々な策を練った。しかし、そうは言ってもゆっくり考えてられる程時間はない。……何か。何か良いアイディアが思い浮かべば……。
隕石は着々と俺の下に落ちてきている。このままでは、ぶつかる。間違いなく衝突してしまう。そうなれば……今度はアリナの治療も受けられるか分からない。
――何としてでも防ぎきらないといけないわけだ。俺は、自分の頭の中で小学校時代にけん玉の技の練習をしていた頃の自分を思い出した。
さっきだって、咄嗟に「野球」を思い出したから困難を切り抜ける事ができた。だから、きっと今回だって……。
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何かあるはずだ。良い策が。……何かきっと。
そんな時、俺の目の中に穴だけがぽっかり開いた玉の欠片とそして、今自分が握っている全身が無事の岩でできたけん玉の持ち手と皿のついた部分が目に入った。
俺は、咄嗟にその穴だけあいた欠片の方を手で持ってみて感触を確かめる。
「……これだ!」
咄嗟に俺は、過去に練習したある技とそして、そこから繰り出す最高のアイディアを思いつき、咄嗟に持ち手から手を離して欠片の方へ持ち替えだす。そして、ぶんぶんと今までと違い、持ち手の方をグルグル回しだす。
――正直、こっちの耐久性がどんなもんか分からんが……やってみない事には始まらねぇよな!
少し離れた所から見ていたサマンサも驚いた顔を浮かべていたのが見えた。……少ししてもうすぐそこまで来ていた隕石に向かって俺は、回転をかけておいた持ち手の方を勢いよく降り注ぐ隕石の方にぶつけに行った。
「……行くぜ! これが、ケンダ魔法の更なる技! ……
俺の放り投げたけん玉の持ち手が降り注ぐ隕石の真下から激突。大皿の部分が衝突し、そしてその衝撃によって隕石とそして、けん玉にひびが入る。
ひびは、一気に広がっていき……途端に両者の攻撃手段は、粉砕される事になる――。
「馬鹿な! アタシのメテオが!」
黒服の魔女は、びっくりの様子で半分に割れる隕石の姿を見ていた。しかし、彼女もマフィアの人間であった。攻撃が失敗したと分かった途端に彼女は、すかさず自分の手に持っている杖を空高く掲げて上空にまだ星として光っているだけの隕石を操作し始めた。
「……次こそこれで、チェックメイトよ! なんせ、アナタにはもう使える武器がないんですからね! その鉄のおもちゃで次の攻撃を守ってみなさい! ぶっ壊してあげるから!」
彼女は、そう言うと杖で宇宙にあるであろう隕石をこっちに来させ始めた。このままでは、俺の下に今度こそ隕石が衝突してしまう……!
――しかし、そんな事はさせなかった。俺は、すぐに真っ二つに割れた隕石の片方をキャッチした。
「……そうしてくる事は、読めてたぜ。……だからこそ、俺はさっき隕石に持ち手の部分を当てに行く時にけん玉の尖った先の部分をわざと狙ってぶつけたんだ。その結果、アンタが降らせてくれたこの隕石は、真っ二つに割れてくれた。……これを狙ってた」
サマンサは、一瞬だけ空から目を離して俺の方を見て来た。途端に彼女の表情が、緊張に満ちた顔に変化したのが分かった。
彼女は言った。
「……まさか、隕石が半分になると分かって……最初からそれが狙いで……。だから、隕石をぶっ壊したタイミングですぐに手を伸ばしていたというの!?」
俺は彼女の問いかけに笑って答えた。
「ご名答! 俺の本当の狙いは、さっきの隕石をぶっ壊す事じゃない。その後だ。……おそらくお前は、全ての隕石を撃ち終えてもう一度この広大な宇宙空間の中にある隕石を探さなくてはならなくなる。……その間の時間を狙えば良い! だから、俺はいち早くあなたを倒すために真っ二つになった隕石をすぐに掴み、そして魔法をかける事に成功した!」
俺の手の中にあった隕石が形を変えて少し大きなけん玉の形を作り出す。玉を糸でぶら下げた状態にしてから俺は、向こうにいる敵の姿をよく狙った。
「しまった……!?」
今更になってピンチを悟ったサマンサの口からそんな言葉が放たれたが、しかしもう既に遅かった。彼女の頬っぺたにゴツゴツした隕石でできた大きなけん玉の球体をぶん投げた。
「……食らいやがれ!」
俺の石でできたけん玉のボールが、彼女の頬っぺたへ飛んで行った――!
――To be continued.
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