20th mission 誓いましょう! 戦う事を

「食らいやがれ! ケンダ魔法の妙技! ボール・スラスト!」



 俺の手の中で瞬時にけん玉へ変化した隕石。これのボールの部分を長い糸を使って飛ばす技。これまで「ベースボールブレイク」とか「飛行機・特攻エアプレーン・クラッシュ!」とか……そう言った技名を開発してきた俺が、まだ唯一決めていなかった技だ。命名は、今決めた。






 そして、俺の放ったボール・スラストは、一気にサマンサの頬っぺたの辺りへまで飛んでいき、岩石の塊のようになっている部分が彼女の肌に激突。打撃と共に彼女の体は、吹っ飛ばされていった。






「くっ……!」



 地面に体をぶつけてゴロゴロと転がっていくサマンサの体。彼女は、本当に痛そうに頬っぺたを手で抑えながら俺の事を睨みつけてきた。




 まさか、自分がここまで追い詰められるとは思っていなかったのだろう。そんな感情も彼女の表情から何となく読み取れた気がした。サマンサが、苦しそうに呼吸を始める。





 それを見て俺は、確信した。




 ――行ける! このまま隕石を降らせなければこのまま押し切れる!




 そう思った俺は、すぐに次なる攻撃を繰り出そうと吹っ飛ばされた彼女の元へ走り出した。




 しかし、そんな時に俺の耳に入って来たのはアリナの必死な声だった。




「やめて! もうやめて! こんな戦い何になるの! 意味ないよ!」



 彼女は、両手足を拘束されているせいで動けやしなかったが、しかしそれでも必死に叫んで自分の気持ちを俺達にぶつけて来た。





 ……でも、それでも……。今、ここで叩かないと次またいつ隕石を落とされるか分からない……。倒さないと……いや、





 俺は、心の中でそう決心して走るのやめなかった。すると、近くにいるアリナの声はどんどん必死さを増していった。




「やめて! お願い! これ以上は、ダメ!」




「……」






「……死んじゃうよ! やめて!」



 ――殺す……!









 俺が、倒れているサマンサのすぐ傍まで接近して隕石で作ったけん玉を彼女に至近距離からお見舞いしてやろうと手を振り上げたその時だった……!









「やめて! ……サマンサ! 命令よ! 今すぐこの戦いをやめなさい!」



 アリナが、咄嗟に発言したその言葉を聞いた途端にギリギリ片足の膝で立つ事はできていたサマンサの目が苦しそうなのから変化して、覚悟の眼差しとなった。そして、彼女はすぐに自分の近くに落ちていた杖を手に持ってそれで短い詠唱を唱えた。




「……岩よ。守れ!」



 刹那、彼女が降らせた隕石の破片がサマンサの元に集まっていき、それが1つの防御壁として彼女の体の前に展開される。その分厚い岩の壁は、地面からまるでゴツゴツしたモノリスの如く立っており、サマンサの事をけん玉の攻撃から守ってくれるのであった。




 俺のけん玉が、岩の壁に当たり、お互いの岩が両方とも粉々に砕けると同時に……サマンサの作った岩の壁の破片が飛び散る。そして、その瞬間にサマンサは更に詠唱する。



「……吹き飛べ!」



 これと同時にサマンサは、粉々になって地面へ降りかかっていく岩へ呪文をかけて俺の下に飛ばして来た。無数の岩のカスみたいなのが、俺の身体にミサイルの如く飛んで来て痛めつけてくる。俺は、咄嗟に後ろへ移動して、攻撃から逃れた。そして、攻撃が止むと俺は、再びサマンサの方を睨み付けて、彼女の元に突進していこうとした。




 しかし、俺がそうやって足を一歩前に踏み出したその時、サマンサの強い声が俺の心に響いて来た。





「止めだ! この戦いは、もう終わりだ!」





「え……?」



 俺は、眠りから覚めたばかりの御姫様のように目をパチパチさせて信じられないと言った顔で彼女の事を見ていた。すると、サマンサは語った。




「……お嬢からの命令だ。この戦いは、今すぐやめとする」



 俺は、その言葉にキョトンとして、すぐに疑問に感じる事を口にした。




「……じゃ、じゃあこの戦いの勝者は一体……?」





「今日の所は、貴様で良い。なかなかだったぞ……じゃ」



 そう告げ終えるとサマンサは、とっととアリナの事を担ぎ上げてその場からいなくなろうとした。しかし、俺はそれじゃあ我慢ならなかった。




「待ってくれよ! それじゃあ、これから先俺はどうすれば良いんだ!」



 その問いかけにサマンサは答えた。



「……逃げ続ける以外に手はないな。まぁ、私達にはもう関係のない事だ。……じゃ」




 そう言って彼女は、アリナを抱きかかえて何処かへ行こうとした。しかし……俺は。




「待ってくれよ! アンタら、パパと……いや、カルデルーポと対立しているんだろう? なら、俺に力を貸してくれよ!」



 サマンサの足がピタッと止まる。アリナの表情もピクッと変化した。



「……なんだと?」


 サマンサがそう言った後にアリナも口を開いた。




「どういう事……?」




 俺は、正直に彼女らへ自分の答えを言う事にした。






「……カルデルーポ・ファミリーには、俺の……俺の大切な人がいる。その人は、間違いなくカルデルーポに騙されているんだ。……騙されて利用されている。だから俺は、あの人を助けてあげたい。そのためにも……カルデルーポと戦う!」



 俺は、エルビラさんの事を語るとサマンサとアリナは、お互いに顔を見合わせて真剣に考え出した。そして、お互いにコクリと頷くとサマンサの方が俺に聞いて来た。






「……お前、本気で戦うつもりなのか? カルデルーポは、お前が思っている以上に巨大な組織だ。……このシタデラクア王国の国土の半分は、奴らの土地だ。それでも……その大切な人の為にお前は戦えるのか?」








 その問いに対する俺の答えは、1つしかなかった。さっきサマンサとの戦いの中で俺は、決めたんだ。……”戦う”と。








「あぁ……」


 俺が、強く頷くとサマンサとアリナは、一度お互いに目を合わせて考え出す。目と目を合わせるだけ会話ができるという辺りにこの2人の強い信頼関係を俺は感じた。










 そして、少しして2人はほぼ同時にお互いにコクリと頷き合ってそして、言ってきた。











「……良いだろう。お前に力を貸そう。カルデルーポ・ファミリーを倒すためにな」




















 かくして、2人の乙女と1人の男による壮絶な戦いの物語は、幕を開ける事となる。
























 ――To be continued.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る