15th mission 覚悟を決めて俺、戦います!

 ――現実世界でニートだった俺は、ある時突然異世界に飛ばされた。この世界では真っ当に生きようと決意したが、しかし俺には職業適性が全くなく、ギルドで仕事を受け取る事ができなかった。そんな時、俺を救ってくれたのがエルビラという美しい女性。彼女に連れられて、俺はカルデルーポという人に出会い、禁断の石プロイビート・ストーンというヤバイ石を謎の車に乗って運ぶ事になった。だが、車の中に乗っていたのは、石と……もう1人。女の子。彼女の名前は、アリナというらしい。よく分からないが、両手両足を拘束されている彼女。そんな時、謎の黒い服の魔女が俺達を襲ってきた。その女は隕石を操り、どうやらアリナとも知り合いのよう。戦いの中、俺は大ダメージを負い、倒れてしまう。すると、アリナが回復の魔法で俺の体を癒してくれるのであった!? そして、聞きたくなかった真実を俺は聞かされた。


















「……そう。これで、分かったでしょ? アナタは、マフィアに騙されてこんな危ない仕事を引き受けたわけよ。分かったでしょ?」



 アリナが、俺の身体に手をかざして傷を癒す魔法で治療を続ける。その間に俺は、頭の中がごちゃごちゃになっていて……なんて返して良いのか分からず、ただ下を向いた。






 アリナのおかげで傷はかなり癒えた。本当だったら「ありがとう」と言うべき所なのだろうが……俺は、何にも言えなかった。そうこうしているうちにアリナは、目の前に立つ黒服の魔女――サマンサって呼ばれてたその子に声をかけた。



「……アナタも。これで分かったでしょ? この人は、無実なんだって……。ただ、巻き込まれただけのね。これ以上の攻撃はやめなさい」




 すると、サマンサは納得がいかない様子で反論しようとした。



「しかしお嬢様! 例えそうであったとしても……この男は、お嬢様を……」



 しかし、途中まで言いかけた所でアリナは今までで一番強い眼差しをサマンサに向けて言い放った。




「……これは、命令よ! 関係ない人をこれ以上傷つけないで!」



 そう言うと流石のサマンサも黙っておとなしく従うのであった。




「……はい。お嬢様」



 そうして再びアリナが僕の治療に集中しだして、しばらくの間は沈黙が続いた。














 ――だが、アリナが回復を終えると彼女はサマンサに伝えた。




「さっ、帰りましょう。申し訳ないのだけど……私、見ての通り歩けなくて……家まで連れて行って貰えるかしら?」



 彼女が、サマンサにそう言うと彼女は、自分の黒い帽子をクイっと上げて答えた。



「分かりました」



 そうして、サマンサは俺の事など眼中にない様子でアリナの元に近づき、彼女をお姫様抱っこして歩き始めた。俺は、そんな彼女らの姿を見て消えかかっていた声を振り絞る。




「あっ、あの……これで……送っていきましょうか……?」



 すると、抱っこされていたアリナが答えた。




「……良いのよ。これでもサマンサは、相当鍛えてるからね。抱っこして私を運ぶくらい簡単よ。……あぁ、そうだ。流石にこの石を持って行っちゃうのも申し訳ないわね。……返すわ」




 そう言うと彼女は、ネックレスにしていたプロイビート・ストーンを俺にパスする。俺は、それをキャッチした。






「……じゃあね。アンタもすぐ逃げなさいよ。マフィアは、何してくるか分かんないから……」



 そう言うとアリナは、サマンサに抱っこされたまま何処かへ歩いて行ってしまう……。俺は、そんな彼女らの背中を見てグチャグチャになった頭で必死に考えていた。






 ――俺は……マフィアに騙されていた…………。もしそうなら、いつか殺されるかも……。




 恐怖が俺の心を支配しだした。どうしようもない恐怖に俺は、やがて体までも震えだして……どうしようもない思いに駆られ出した。
















 ――マフィアが、俺を騙した……。
















 ――怖い……。怖い……。



















 その時、ふと俺の脳内に1人の女性の姿が写る。





 ――美しい白いドレス。明るい茶髪……左右がオッドアイのエルビラさんだ。









 ――あの人も……俺と同じように騙されちゃったのかなぁ。あの人もパパ……いや、カルデルーポに騙されているのかなぁ?


















 ――いや、そうだよ。あんなに優しい人がマフィアなんてやるわけないんだ。……きっと、何か弱みを握られて……それで……騙されているに違いない! ……そして、そうなんだとしたらきっと俺とあの人は……いずれ殺される。用済みになったら……消される。




















 ――嫌だ。そんなのは、絶対に嫌だ……。










 俺が、そう思うのと同時に自分の心臓が強く跳ねたのを感じた。……心臓が鼓動した。何かが俺の中で呼んでいる気がする。





 ――それが何かは分からない。でも……。





















「……俺に















 俺は、立ち上がった。そして、前へ……アリナ達がいる方へ歩いて行った。車のトランクに手を置く。すると、俺の気配に気づいたサマンサがアリナを抱っこしたままこっちを振り返る。彼女は、すぐに俺の覚悟を感じ取ったようで口元をニヤつかせていた。












「……待てよ。もうちょっと……俺の相手をしてくれよ…………」









 俺はそう言った。





























 ――To be continued.


 

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