13th mission 容赦ない一撃
――グランティーノ・ファミリー? なんだそれ? 敵対組織? この女は、一体何の事を……。
俺には、分からなかった。彼女が……この黒い魔法使いが何を言いたのかを……。しかし、それは本当に全く分からなかったわけではない。本当は、うすうす気づいてもいた事だ。それでも、自分にとってこれ以上嫌な情報を聞きたくない一心でこの女の言葉に対して分からないを貫いた。
すると、黒服の女は俺の様子を見て舌打ちをかましてきた。そして、言うのだった。
「ほぉ……それを聞いても尚、知らないって顔か……。悪いが、私はそう言う風にとぼけられるのが、とても嫌なんだ」
刹那、女は杖を持っていない方の右手を空高く掲げる。それと共に空中でずっと待機していたメテオ達の一部が、その輝きを増し出す。
「――!?」
俺が、ピンチを感じ取ったその時、目の前に立つ黒服の女は一瞬だけこちらをギロッと睨みつけてそして冷酷な眼差しと声で告げた。
「……まずは、手始めに……貴様の両腕目掛けて落とさせて貰う」
そして、この言葉の後に女は空高く掲げていた右手を勢いよく下げる。そのタイミングにピッタリ合う感じで輝きを増していた3発の隕石が、一気に俺の方へ目掛けて降り注いできた。
どの隕石も大きさ自体は、そこまでではない。普通にその辺にある石って感じだったが、問題は大きさじゃなかった。
――スピードと勢い……それから熱。間違いなく喰らえば、俺の両腕がズタボロにされてしまうだろう。そんなとんでもない物が俺の方へ目掛けて降り注いでくるのだった…………。
「……ああああああ! 待ってくれ! 石が欲しいんだろ? 石だったら……すぐにでもわt……」
――渡す。と言いかけて俺の言葉が止まった。それは、突如として俺の脳内にあの町で俺の事を待ってくれているであろうあの人の姿が思い浮かんだからだ……。
「……エルビラさん」
少しだけ……ほんのちょっぴりだけ彼女の事を思うと勇気が湧いて来る感じがした。
――そうだ。俺、このミッションを終えて、あの人の所に帰るんだ……。絶対こんな所で終わらせちゃダメだ。
俺は、決意を固めだす。しかし……。
気持ちはそれで良くても……現実問題として、隕石を封じる方法なんてなかった。
俺の両腕に3発の隕石が直撃。右に2発左に1発の隕石が左右から交差するように降って来る。当たった瞬間に両腕のあらゆる骨がズタズタにされて、俺の手から激痛が走る……!
「んぐうううぅっ!」
その今まで味わった事もないようなとてつもない痛みに耐えられなくなった俺は、隕石が俺の両腕の骨をズタズタにした後、ショックで後ろに倒れた。
地面に自分の身体がつくと、俺の顔がある辺りでちょうどさっき自分が座っていた運転席のドアが見える。しかし、そんなものを呑気に見ている暇なんてない。俺は、痛みを増して動かす事もできない両腕に苦しみながらも必至にチカチカする目で自分の周りを確認。女は、まだ向こうに立っていた。
何かを言っていたが、痛みがあまりにも凄すぎて……彼女の声なんて聴いている余裕もなかった。
「……苦しい」
俺の口からそんな言葉が漏れた。すると、黒服の女にも俺の言葉が聞こえていたのか彼女は、更に厭らしい笑みを浮かべて来てニッコリ笑ったまま何かを喋り出した。
おそらく、俺の事を煽っているのであろう。俺は、そんな女の様子を見ながら自分の中で何かを悟った。
――死ぬのかな……。
不思議と死への恐怖はなかった。むしろ、死ぬ事自体はすんなり受け止められそうだ。でも……最後にまたエルビラさんに会いたかった……。
そんな事を思いながら俺は、チカチカする目でまだ必死に生きよう生きようと回っりの景色を見ていた。本能だけは、まだ死にたくないらしい……。
でも、気持ちは……諦めつつあった。そんな時、俺が偶然車のある方へ視線を移し、そっちをチラッとだけ見てみた。すると、そこには運転席の方へまで移動してきていたアリナの姿があった。彼女は、とても心配そうな顔をしており、俺の事を窓越しに見て、その鎖で繋がれた手を使って何とか、ドアを開けようとしていた。
――どうして、ドアを……。
俺は、もう思考もろくに回らなくなっていた頭で色々考えてみたがアリナがこっちへ降りてくる理由なんて分からなかった。
「アリ……ナ…………」
そう言って俺は、瞳を閉じた。
――To be continued.
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