8th mission 明らかに人質な女の子

 ――ついに、冒険が始まる。車に乗って石を港に運ぶ仕事を依頼された俺なわけだが……その度の道中で俺は、びっくりする事に遭遇した。



 なんと、石が入っていると言われていた車のトランクの中には……女の子が入っていたのだった……!?






















 こんな事があるだろうか? 俺は、驚きで言葉も出ずにただボーっとトランクの中の女の子の事を見ていた。すると、それに対して女の子の方はさっきまでのジタバタ暴れまくっているのから急に静かになって俺の方をジーっと見つめて来た。彼女は、口元をハンカチみたいな白い布で塞がれているせいで喋れない。



「んー! んー!」



 そのうち彼女は、ジーっと見つめるだけでなく何かを俺に訴えてくるようになった。彼女の体は他にも両手を拘束されていて、足も光の輪みたいなもので止められていて、絶対に身動きが取れないようにされていた。だから、何となくこの子が俺に何を求めているのかを俺は理解した。




 ――しっかし、拘束を解除するにしてもなぁ……。この手足についている光の輪は、おそらく魔法でできている……。コイツを壊す方法なんて俺は知らねぇぞ……。しかも、こういうのって勝手に拘束を解いて、もしも逃げたりでもしたら……それこそ俺、後でヤバい感じにならねぇかな?




 俺は、そう思って女の子が訴えかけているにも関わらず何もできないでいた。





 ――ここは、もう……見て見ぬふりをして…………。




 そんな風に魔が差したりもしたが、俺はそれでも彼女の事をどうしても無視できなかった。






 ――あぁ……どうしよ……。




 そんな風に俺は、うだうだと悩み続けたが……とうとう、もう我慢ならなくなって俺は手を伸ばして彼女の手足を拘束している光の輪に触れようと手を伸ばした。





 ――しかし……!






 触れた瞬間にビリっと手に電流が走る。痛みが俺の身体にも伝わってきて、反射的に俺は手を引っ込める。触れた方の手をぷら~んっと振りながら俺は、トランクの中にいる彼女に向かって言った。



「……うーん。やっぱり無理だよ。……俺、この世界に来たばかりで自分の魔法もあるらしいけど……魔法なんてまだ使った事もないもん。……こんな魔法でできたものを取る方法なんて……分からないよ」



 俺は、そんな事を言って視線を彼女から逸らした。






 ――どうすれば良いのかなぁ……。




 諦めようにも諦めようとしない自分に少しだけ呆れた。前の世界の俺なら、こんなのすぐに諦めている所なのに……この世界の空気を吸ってから考え方が変わったとでも言うのだろうか……。



「んー! んー!」



 すると、俺が悩んでいる所へトランクの中に体を曲げて入れさせられていた女の子の叫び声が聞こえてくる。



 ――ふと、どうしてだかその子の顔を一瞬だけ見た俺は、そこでふと拘束具ではなく、ハンカチの方に手を伸ばして彼女の口を解放してあげる事にした。すると、女の子はハンカチが取れた途端に顔をムッとさせて喋り出した。




「……はぁ! やっと外してくれた! アナタね……いきなり拘束具の方に手なんか伸ばして何がしたいわけ? 見て分からない? この魔力拘束具は、並大抵の力じゃ開かない。例え、どんなに凄い魔導士であったとしても解除に3年はかかる程よ! そんな事も分からないような人が、よくもこのアタシを……こんな狭い所に隠したわね! カルデルーポのクソ野郎め!」



 彼女の開幕の一言は、このようにとても衝撃的な言葉のオンパレードで始まったわけだ。俺は、彼女の言葉に口だけ開いて何も言い返せずに固まっていた。すると、彼女が言ってきた。



「……ていうか、アンタ何者? 見ない顔ね? この国の人じゃないのかしら?」


 俺は、そこでやっと喋る事にした。



「……俺は、大我。その…………こことは違う別の国からやって来た」



 すると、女の子はぶっきらぼうに言った。


「ふーん。あっそ」


 かなり辛辣な態度だ。






 ――うーん、こういう時どう接していいか分からないんだよなぁ……。



 俺は、そんな事を思っていると突如、目の前でトランクの中に入っている彼女が俺の事を睨みつけて言ってきた。




「……んで? アタシの事は、いつここから出してくれるわけ? アタシ、手足を拘束されて自分の力だけじゃここから出られないんだけど?」



 俺は、困りつつも彼女の言う事に従い、トランクの中から出してあげる事にした。拘束具に触れると電流のようなものが流れてくるので、それに気をつけながら彼女の体を慎重にトランクの中から出してあげて地面の上にゆっくりのせる。





「……あぁもう! 痛い! もっと優しく扱いなさいよ!」



 そんな声が聞こえてくるがここは無視する事にした。それから、俺は彼女に尋ねて見る事にした。




「……君は、何者なんだ? 俺は、君がこの車に乗っている事なんて知らされてなんか…………」



 すると、彼女は言った。



「あら? カルデルーポのクソジジイから何も言われていないの?」


 俺は、キョトンと彼女の事を見ていた。すると、女の子が口を開き始めた。



「……私はね…………」



 そうして、何かを言おうとしたその次の瞬間に今度は別の所から音が聞こえてくる。




 ――それは、まるで昔の黒電話の受信音。チリリリリーン! という音が車の中から聞えてくる。





「……もしかして、パパから電話か?」



 そう思って、俺は女の子にちょっと待ったと手で合図を送ると俺は、車の方へと移動し、ドアを開けて音のしている車のハンドルの真ん中を指でトンっと叩くとその瞬間にハンドルに魔法陣が出現し、その中から声が聞こえてくる。



「……大我? 聞こえてる?」



 声の主は、おそらくエルビラさんだ。聞いた途端にすぐ分かった。俺は、彼女の声を聞いた途端に喜んで反応した。



「はい! 聞こえてますよ!」


 すると、彼女は言った。



「良かった! ごめん。ちょっと良いかな? 実は、1つだけ伝え忘れていた事があってね……」



「はい! なんでしょう!」


 彼女は、魔法陣越しに僕へ言ったのだった。



「……えーっとね、実はこっちの確認不足であなたに頼んだ任務とは関係のない人が車の中に乗っていてね……それについて話そうと思って……」




「はっ、はぁ……」




「……うん。あのね、実はその子も港へ運ばなきゃならない人でね、その……こっちのミスで石と一緒の所にいれてしまったみたいで……。あぁ、別に怪しい感じではないよ! 安心してね!」




 ――いや……安心できねぇよ!



「とにかく、まぁ……こっちの判断としては同じ港に運ぶものだし、ついでによろしくって感じなので……あっ、絶対にハンカチは取らないでよ。それだけは、よろしく!」


 

 ――え……?



 俺は、チラッと後ろを見た。すると、そこには厭らしい笑みを浮かべて俺を見ている女の子の姿があった。エルビラさんは、この後に「じゃっ!」と言って電話を切ってくれたが、俺はこの後もドキドキが止まらない。後ろにいる女の子は俺に言ってきた。




「ふーん。そこに、魔法陣で話せるのがあるのねぇ~」



 ゴクリッと生唾を飲み込んで、女の子の次なる言葉をしかと聞き入れることにする。





「……ねぇ、私の事も運ばなきゃいけないみたいだけどさ……これ以上、あの狭いトランクの中にいるのはいやなの。だから、こっちの椅子に座りたいなぁ~。座らせてくれなかったら、こっそりそこの魔法陣使ってばらしちゃおっかなぁ……」












「……言うとおりにするので許してください」





 そうして俺は、彼女を助手席に運ぶ事にした。……かくして、俺の旅は1人から2人へと変わったのだった。
















  ――To be continued.

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