9th mission 石、みぃ~つけた
冒険に出た俺だったが、変な打撃音がする。何事かと思ってトランクを開けてみるとそこには、地雷系女みたいな格好をした美少女がいた。彼女は、明らかに人質に取られている様子で……どうすれば良いか迷っているとエルビラさんから連絡があった。その子も一緒に港へ運んで欲しいと……。
俺がやってるこの仕事って、実はかなりヤバい……!?
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「わーい! やっとあの狭い空間から出る事ができたわ!」
俺の隣、助手席から聞こえてくるのは可愛い女の子の声。しかし、それは本来なら聞こえてはならない声でもあった。
俺は、この隣に座る女性のせいでさっきまで感じていた眠気も消えてしまったので早速出発した。そして、ハンドルを握ってアクセルを踏み、車を動かしていると隣からチラチラ視線を感じる。
「……すっごいわね! この世界にこんな乗り物があったなんて!? どういう作りなのかしら?」
隣に座る手足を光の輪で拘束されている女の子の声だ。彼女はさっきから俺が運転しているにも関わらずお構いなしに話しかけてくる。
──コイツは……運転中に運転者を妨害しちゃいけませんって習わなかったのかよ!?
な〜んて心の中で思ったりもしたが、そもそも最近まで車なんて存在していなかった世界なのだから習ってなくて当然か……。俺はため息をつきながら車を進める。すると、隣からまたしてもあの子の声が聞こえてきた。
「ねねっ! そういえばまだ名前言ってなかったわよね? アタシ、アリナ! よろしくね」
俺も返事を返そうとした。しかし、そこで俺はある事に気づいて声がうまく出せなくなってしまう。
「たっ大我だ……」
緊張するなぁ。考えてみたら、女の子と2人きりで今、車の中にいるんだもんなぁ……。
俺は、緊張のあまり顔を一切アリナの方へ向ける事なく運転に集中している風を装っていた。すると、そんな俺に対して彼女は、ムッとした表情でこちらを見てくる。
──なっ、なんだぁ!? 俺、何か怒らせるような事でも言ったか?
俺がパニック状態でいるとアリナは更に俺との距離を詰めてきて、ジーッと睨みつけてくる。それから少しして彼女は俺の頬っぺたに手を伸ばしてきて突然2本の指で俺の頬っぺたの肉をつねってきた……!
──ブニィッと俺の肉が指で潰される。
「いっ、痛い痛い! ちょっ、おい! やめっ、やめろって!」
アリナの手が俺の頬っぺたを痛めつけてくる。この尋常じゃない痛みに俺はハンドルを片手で固く握りながら、もう片方の手で彼女の事を追い払おうとした。
しかし、彼女は手を離さない。アリナは言った。
「……あのさぁー、人と話をする時は相手の目を見なさいって習わなかった〜? ねぇ?」
──手を離さないどころか力をどんどん強めていっている!?
「いててててててててててェッ! やめてって!」
しかし、彼女はやめない。それどころか、更に彼女は手錠で2本の手が繋がれている事を良い事にもう片方の手も使ってきて、2つの手で俺の頬っぺたを掴んで来るのだった……!
「二刀流は、きついってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
とうとう俺のハンドルを握る手が耐えきれなくなって左右に意味の分からない位にグルグル回し始める。……それに伴い車体が意味の分からない位に回転したり、くねくね動いたりして大変な事になってしまう。車の中でも軽く揺れたりしたが……それでも尚、アリナは俺の頬っぺたから手を離さない。俺は、ついに痛みが限界に達して音を上げてしまう。
「……分かった! 分かったから! 分かったから頼む! ……ごめんって! 許してって!」
俺は、必死にそう言う。すると、隣で聞いていたアリナはとても嬉しそうな顔をして俺に言ってきた。
「……うむ! よろしい! それなら、今日の所は許してやろう!」
そうして、アリナは俺の頬っぺたから手を離して抓るのをやめた。
――何なんだ? この子は……。沸点が分からん……。挨拶とかにうるさい子なのか? 勘弁してくれよ……。
俺は、彼女の事を横目でチラッと見ながらそんな事を思っていた。それから、呆れた声で彼女に言った。
「……すまんが、運転中は目を見て話をする事ができない。だから、勘弁してくれ」
しかし、彼女の反応は素っ気ない。
「あっそ……」
――意味が分からん。けど、何なんだ? このわがまま女は……。人質のくせに……。
イライラッと来たが、そこで怒ろうとする事ができないのが俺の悪い所。俺は、その後も黙って運転を続ける事にした。
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――しかし、俺が黙って運転を続けていると隣でうるさくアリナがうるさく独り言を言ってくる。
「……あぁあ、やだやだ。なんで、こんな冴えない顔の奴と一緒に行かなきゃいけないんだろ……はぁ……」
あからさまに溜息をつく。聞いてて凄く不快だった。更に彼女は、言ってきた。
「……だいたい、そもそもカルデルーポの連中に捕まっちゃう所が最悪だよねぇ……。ホント、ないわぁ……」
――カルデルーポというのは、パパの事だろうか? 何の話か全然分からない。……でも、なんだか良い気分はしなかった。しかし、彼女はそれでも話を続けてくる。
「……はぁ、やだなぁ……。できればもっとイケメンだったらなぁ~」
「……あのさ、うるさい。運転中は静かにしてもらえるかな?」
俺は、とうとう我慢の限界に達して彼女の方へつい首を動かして反応してしまう。アリナの顔が正面に見える。すると、彼女はそんな俺をからかうように言うのであった。
「……あぁ~、良いの? 運転中は邪魔するなとか言っといて、こっち見ちゃって~?」
彼女がそう言うが、俺はもうそんな事よりも少し彼女に怒りをぶつけたい気分だった。
――少し位なら……。
そう思って俺が、心の中で思っている事を彼女にぶつけようとしたその時だった!?
「……ん?」
ふと、アリナの胸元に目が行ってしまう。
――あぁ、いやというのも……別にその……おっp……じゃなくてそう言うスケベぇ~な事を妄想したとかではなく……単に気になるものが首からぶら下がっていたのだ。
それは、さっきまで車に乗せる前まで着いていなかったネックレス。透き通った紅い色をした石の入ったネックレスをぶら下げていた。俺は、それを見て怒る前になって突然、興味が湧き尋ねて見る事にした。
「……おっ、おい? そのネックレスいつからつけてた?」
すると、彼女は答えてくれた。
「あぁ、ついさっきだよ。さっき乗ってた後ろの狭い所に一緒に入ってたんだよ」
「え……?」
俺の脳みそがそこで停止する。後ろに入っていた? それってまさか……。俺は、そこで何となくこの石が何なのかを察した。
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そして、次の瞬間俺は、驚きの余り叫んでしまった。
「その石を今すぐ渡してくれぇ!」
プロイビート・ストーンが、ネックレスにされていたのだった……。
――To be continued.
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