3rd mission 俺の魔法は…けん玉!?

 異世界にやって来た元ニートの俺は、森から抜け出した先にイタリア風の町を発見。そこへ向かう。そして、そこで仕事を探すために町中を探し回ってみるが、この世界の文字が読めないのと地理感がない事が原因で完全に道に迷ってしまう。そんな時、俺の目の前に茶髪に白いドレスを着たオッドアイの美人なお姉さんが現れる。どうやら言葉はお互いに通じるようで彼女は、お腹を空かしていた俺にパンを恵んでくれた! そして、なんと俺をギルドという所へ連れて行ってくれるらしい! いやぁ~、異世界に来て不安だったけど……何とかなりそうで良かった! お姉さんに感謝だ!



















 ――早速パンを食べ終えた俺は、お姉さんに連れられてギルドに向かっていた。最初この町に来た時は、思いもしなかったが……この町は、以外にも道が複雑だ。色々な所に小道が存在するし、家や店が至る所にある。しかも、どの家も似たような石造りの家ばかりで見分けがつかない。


 初心者には、いきなりハードな町だったのかもしれない。俺は、そんな事を思いながら、イタリア風の石とレンガの町を隅々まで見て楽しんでいた。すると、そんな俺へ前を歩いている茶髪オッドアイの女性が、話しかけてくる。



「そう言えばさ、自己紹介していなかったね! 私、エルビラ! この町でちょっとした運搬業をやっているんだ! アナタは、なんて言うの?」


 お姉さんに名前を聞かれた俺は、一度咳払いをした後に異世界に来て初めての自己紹介をした。


「……おっ俺は、進藤大我しんどうたいがっていうんだ! なんか突然ここに飛ばされて来てしまって……よく分からないけど、とっとにかく仕事を見つけたいと思ってこの町にやって来たんだっ!」


 まだ少しだけ緊張してしまう。当然だろう。女の子と会話するなんていつぶりだろう。キョドってしまうのも無理もない……。俺は、なんだか恥ずかしくなって頭の後ろをポリポリ掻いたりしてお姉さんの後について行った。すると、彼女はそんな俺に喋りかけてくれた。



「……へぇ~。大我ね! よろしく! ねねっ、大我はさ……何処からここに来たの?」


 エルビラお姉さんが、そう問いかけて来たので俺は、一瞬だけ「日本!」と答えそうになったが……しかしここでふと立ち止まった。ここは異世界だ。普通に「日本」と言っても通じないのではないか……そう思った俺は、返事を変える事にした。


「……んーっと、その……きょっ、極東の寿司国? みたいな……」


 すると、エルビラお姉さんは突然笑い出して俺に言ってきた。



「……ふふふっ、何それ~。寿司って何よ? ふふっ、アナタ面白いのねぇ」


 よく分からないが、褒められた。でも、それが俺の心の中の失ってしまった自信と女性に対する苦手意識を癒すには十分すぎた。


 ――素敵だ。エルビラさん。なんて素敵な方なんだ……。……そっ、その何がとは言わないが……大きいし。



 そんな幸せを感じながら俺達は、歩き続けた。そして、ついにやっと俺達はお目当ての場所に到着した。エルビラお姉さんが俺に言った。



「はい! 着いたよ! ここがギルドです! この町の人達は、皆ここで適性を調べて貰って仕事を受けてるんだ! 報酬とかもギルドで受け取るよ!」


 ギルドの建物の見た目は、ちょっと面白かった。何というか、イタリアンな雰囲気の町並とは全然違った……アメリカの西部開拓時代のサルーンみたいな所だった。ウエスタンドアが正面にはあって……様々な格好の人々がそこを行き来していて……なんだか、そこだけ異国感があった。



「へっ、へへへ……」


 俺の口から少しだけ笑い声が漏れてしまった。


「……どうかした?」


 お姉さんが、キョトンとした目で見つめてくるので俺はすぐに笑うのをやめる。


「なっ、何でもないですよ! そっ、それよりも早く中に入りましょう!」


 俺は、そう言うとそそくさとギルドの中に入って行った。












 中に入ってみると、そこはよくアニメなどで見かけるギルドと同じような風景だった。受付があって、広告が貼られてあって……そして、なぜか酒場がくっついている。


 面白いのは、この酒場。明らかにイタリアンなこの町とあっていない。雰囲気がここだけ完全にウエスタンなのだ。



 ――ポーカーしてる奴らもいるし……。



 しかし、そんなこんなで俺は、お店の中をある程度見た後に早速仕事を貰うために何処にいけば良いのかを探し回った。しかし、探し始めて3秒で自分が文字を読めない事を思い出す。



 ――どっ、どうしよう……。お姉さんは……。



 しかし、俺が後ろを振り返るとそこには、さっきまで一緒にいたはずのエルビラお姉さんが何処にもいなかった。困った俺は、その場でビクビクしながらギルドのあちこちを見渡して立ち止まっている。



 ――どっどうしよう……。僕は、何処に行けば……。




 すると、そんな時にちょうど俺の傍を歩いて来ていたお店の従業員の格好をした青い髪の女性が、俺に話しかけて来た。


「……お客様、どうなさいました?」


 僕は、ようやく言葉が通じる事に安心感を覚えてその女性に要件を伝えた。すると、すぐに彼女は僕を案内してくれた。












 それからすぐに受付の3番の窓口へ案内された俺は、さっきの従業員のお姉さんの指示を聞いていた。



「……本日は、職業適性検査を受けたいとの事で良いですか?」



 俺は、答えた。


「はっ、はい。……そっ、その……それで検査っていったい何をするんですか? 痛いですか?」


 すると、青髪の従業員のお姉さんは笑って答えた。



「うふふ。痛くなんかないですよ。ただ、これから持ってくる水晶にお客様の手をかざしてもらうだけですから。それで、水晶に写ったものがお客様の魔法です。魔法が分かったら、お客様にどの職業が向いているのかをお伝えします。そして、今日か明日にはお仕事が始められるようにこちらの方で色々準備を致しますので書類の方、書くのよろしくお願いしますね。あっ、ちなみに言い忘れてましたが水晶に手をかざすと魔法以外にあなたの名前なども浮かび上がって来ます」



「はっ、はい!」


 俺は、元気よく返事をした。やっぱりこの世界には、魔法が存在する! 俺もついに魔法を使える! 





 ――楽しみだなぁ……。どんな魔法を使えるんだろう? 火? 料理人とかになっちゃったり? または、雷とか落としたり? 冒険者とか勇者になって……冒険とか? くうぅぅぅぅ! 楽しみだなぁ!



 少しして青髪のお姉さんが水晶を持ってきた。


「それでは、始めたいと思います! 手を前にかざしてください!」



 そう言われると俺は、すぐに手を前にかざした。その瞬間、水晶が光り出し、その透明な球体の中に何かの映像のようなものが浮かび上がって来る……!





 ――なんだ? 何が来るんだ……!?
























「……なんでしょう? これ?」


 受付のお姉さんは、ポカンと口を開けていた。俺も彼女のその声を聞いて目を見開いてみると……。




 なんと、水晶の中に映し出されていたのは……けん玉だった。けん玉が、棒の中に刺さる映像。それが、流れていた。異世界の住人である受付のお姉さんは、当然そんな事も知らず、ポカンと水晶の中の映像を見ていた。



 少しして彼女は、困った顔で俺に尋ねて来た。



「……こっ、これは?」



 俺は答えた。


「えっ、えーっと……けん玉?」



 彼女は、首をかしげている。何を言っているんだこの男は? と言った顔をしていた。また少しして彼女は、一度受付の席を離れて奥へと姿を消し、同じ従業員の人達とヒソヒソと相談話を始めた。



 俺は、既に嫌な予感がしていた。



 ――ここへ来て、どうしてだか小学生の頃にけん玉の練習を一生懸命にやっていた頃の自分の姿が頭の中に思い浮かんだ。
















 しばらくして、受付のお姉さんが苦笑いを浮かべて俺に言ってきた。



「……すいません。お客様。その……お客様のようなその……けっ、けん玉? といった謎の物体を作りあげる魔法を持った人など初めてでして……。一応、これがお客様の魔法の内容なのですが……」



 受付のお姉さんが、俺に髪を渡してくれた。そこには、俺の「しんどうたいが」という名前とそして性別。それから最後に……魔法の説明が書かれていた。



 ――なになに~……えーっと、触れたものをけん玉に変える魔法。通称――”ケンダ魔法”。……うっ、なんだぁ? このだっさい名前は……。それに、触れたものをけん玉に変えるって……。何の需要があるんだよ。この魔法?


 俺は、一度落ち着いた後に店員のお姉さんに問いかけてみた。



「……あっ、あのぉこれって……職業は一体何に……?」



 すると、受付のお姉さんは凄く申し訳なさそうに頭を下げて俺に言った。




「……すみません! タイガ様に適正のあるお仕事は見つかりませんでした! 申し訳ございませんでした!」










「……なっ、なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」







 どうやら、俺はこの世界でもニートになる運命のようだ……。



















 ――To be continued.

 

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