第2話 そして中学生

 四月から中学校に通い始めた彩音あやね。明るい性格と見た目もかわいらしいショートボブが似合う彼女は結構人気があった。

 中学校では小学校から仲の良かった木村春香きむらはるか高橋翔太たかはししょうたと同じクラスになった。翔太はスポーツ万能でイケメンということもあり人気者だった。小学校からの友達ということもあって、気軽に翔太と話す彩音は「付き合ってる」と噂になったが、ずっと仲のいい友達という感じできた二人は『付き合う』という雰囲気ではなかった。むしろ春香の方が小学校のときから翔太のことを気にしている感じだった。三人とも部活も同じ陸上部に入った。


 そこへ現れたのが戸鳴野となりの小から来た有澤麗美ありさわれみだった。前髪をそろえセミロングでキリっとした顔立ち『負け知らず』という感じの彼女も、彩音と同じクラスになった。

 麗美れみは学年一の美人という噂で、本人もそういう認識らしい。麗美れみは、いつも数人の美人女子たちと行動する。よくある光景である。彼女は吹奏楽部に入っていた。かなり翔太のことが好きなようで、休み時間には翔太のいる輪の中に入っていこうとする。

 翔太は優しい性格で麗美と仲良くしていたが、それを気にする女子たちは、彼女の強引さに少々うんざりしていた。


 そんな彼女が気に入らないのは翔太が気軽に彩音と春香に話しかけることだった。あるとき、彩音と春香は麗美れみに、

「なんで翔太君は、あなたたちに話しかけてくるの?」

と質問された。余計なお世話である。

「なんでって、用があるからじゃないの?」

というと、

「ふーん」

と不機嫌そうに言う。

「私たち小学校から一緒だったから、話しやすいんじゃないかな」

と春香がフォローになっているかどうか怪しいリカバーをする。

すると麗美れみが、

「私、翔太君のこと好きだから」

という。

彩音は『なんで私たちに宣言するの?』と思ったが、喧嘩になるのも嫌だから、

「美男美女でお似合いね」

というと

「そうね」

と言って去って行った。彩音は翔太のことを友達としか思ってなかったので、麗美れみのことを『変な人』と思う程度だったが、春香はどうだったんだろう?


「春香、大丈夫?」

「なにが?」

「春香、翔太君のこと好きだったんじゃない?」

「ちょっとね。でも、それほどでもないし」

「そう、ならいいけど」


 結局、麗美れみは翔太に気持ちを伝えたようだが、翔太が上手に断ったようだ。

 春香もそのことを聞いたようで機嫌がいい。

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