第2話 合コン?


テーブルをくっつけて長ーくした席に、小綺麗な格好をした20人くらいの男女がランダムに座っている。


こ、この状況はもしや、合コン…?いや、婚活パーティー?

よくわかんない。どっちでもいいけどっ!


「あの、私、みせいね…うぐッ!」


テーブルの下で麗華さんに思い切り脚を蹴られた。

ヒールは痛いよっ……!


「黙ってなさい!モテるチャンスよ」


あたしが涙目になっていると、隣の席の大学生風の男が話しかけて来た。


「君、静かだね。俺あんまりうるさい子好きじゃないんだ。あっちで二人で語らない?」


「い、いえ、遠慮します」


その場の舐めるような、値踏みするような視線が居心地悪く、あたしは席を立った。

トイレから出て来ると、さっきの大学生風男が外に待っていた。

しつこっ!


「もう帰りますんで…」


あたしが脇を通り過ぎて帰ろうとすると、腕を掴まれた。


「まぁまぁ、そう言わないで。まだ始まったばかりだしさ。ドリンクある?カルーアとかならいけるんじゃない?コーヒー牛乳だよ。緊張が解けるよ」


差し出されたグラスを口に当てられて、思わずごくっと飲んでしまった!

あれ、ほんとにコーヒー牛乳だ。美味し!

そしてなんだかちょっと楽しくなってきたかも。


「よしよし、良い子だね。もう一杯いっとく?」


あたしの頭を大学生風男が触ろうとしたその時、横からすごい勢いでその手が振り払われた。


振り返ると、貴兄だった。


大学生風男を目で殺しそうな勢いで睨みつけ、胸倉を掴む。


「中学生に酒を飲ませていいと思ってるんですか?」


その眼光の鋭さに男性は完全にビビっている。


「ちゅ、中学生?!知らなかったんスよ!マジ勘弁して下さいよ!」


貴兄は大学生風男の胸元を掴んで、低い声で静かに言った。


「この子はこの僕が手塩にかけて育ててきた宝です。そんじょそこらの男に触れさせるわけにはいきません。速やかに消えて頂けますか?」


「ごめんなさいぃっ」


男は貴兄が言い終えるか言い終えないかの内に

逃げ出した。


「フン、100年早い」


その後ろ姿を見送って、貴兄が呟く。

それから床にぺったり座り込んでいる私の前にしゃがんで、顔を覗き込んだ。


「琴理、どうもない?」


あたしはコックリ頷く。

でも、知らない場所に慣れない格好で連れてこられて、自分で思っていたより緊張していたみたいだ。

貴兄の顔を見たらホッとして、同時に泣きそうになった。

泣き顔を見られないように、あたしは俯く。


その頭の上に、暖かい手が置かれた。

それだけであたしはすごく安心する。

小さい頃から貴兄は、泣いているあたしの頭に何度手を置いてくれただろう。

貴兄はしばらくそうしてあたしが落ち着くのを待っていてくれた。


あたしの涙が引っ込んだのを確かめて、貴兄は手を差し出した。


「帰ろう、琴理」


貴兄の大きな力強い手に捕まって、あたしは立ち上がる。

そして小さい頃みたいにそのまま手を繋いで家に帰った。



途中、私は高垣麗華という女性にあの店に連れて行かれた経緯を話した。

話を聞き終わると、貴兄は無表情で「わかった」とだけ言った。


「でもそう言えば、貴兄はなんであんなにタイミングよくあの場に現れたの?」


あたしがふと、疑問になってきいてみると、貴兄は、


「僕は行きがかり上、探偵でもあるようなのでそこら辺は…」


と言って言葉を濁した。

もしかして、あたしのスマホの中にGPSアプリでも仕込まれてたりする??

貴兄だったらやりかねない…。


深く考えると冷や汗が出るので、その夜は貴兄が作った晩ごはんを食べてさっさと寝ました!


その後貴兄がどう動いたのかは分からないけど、麗華さんがカフェに現れることは二度となかったのだった。


「カフェ店主は探偵中」 〈完〉



※作中で未成年の登場人物が飲酒する場面がありますが、この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

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カフェ店主は名探偵?! 天海透香 @Amagai-m

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