カフェ店主は探偵中
第1話 琴理、拉致される?!
あたし・
「もうッこのシスコン!一生そうしてなさいよ!」
店の中に向かって捨て台詞を吐いて、くるっと向きを変え、こちらに向かってハイヒールでカツカツと歩いてきた。
こわっ!
目を合わせないようにしてすれ違おうとしたら、
「ちょっと貴女あなた!」
と腕を掴まれた。
「貴女、
うぅっ、答えたくない。
--この店の店主である
と言っても血は繋がっていない。
両親は結婚当初子供ができず、当時三歳だった貴兄を養子に引き取った。その十年後に思いがけず女の子、あたしを授かる。
ところがあたしが八歳、貴兄が十八歳の時に両親は交通事故に遭い、帰らぬ人となってしまった。以来ずっと貴兄はあたしを育ててくれた。私は十四歳になり、若く見られるけど貴兄は二十四歳だ。
「どうなのかしら?」
グイグイ迫られて、あたしは認めざるを得なかった。
「そ、そうですけど…」
「ふーん、貴女がね」
その女の人は上から下まで私を眺め回し、
「こんなちんちくりんじゃ心配にもなるわよね。そうだ、貴女を変身させてあげるわよ。ついてらっしゃい!」
言うが早いかあたしの腕をグッと掴んで、あろうことかそのまま拉致した。
全力で逆らったけど、その女の人は細い割にものすごい力であたしを車の中に押し込む。
その車には運転手さんがいて、後部座席であたしはその女の人の名前を知った。
「私は高垣麗華よ。あなたのお兄様のお友達、と言っておこうかしら。あなたのお兄様に今日交際を迫ったら、『妹が嫁に行くまでは真剣な交際は考えていない』と断られたわ」
それは口実かも知れないとあたしは思ったけど、黙って聞いていた。
「そこで私は考えました。あなたをさっさと嫁に出させればいいんだわ!と」
勝ち誇ったように言う、麗華さん。
……この人、あたしが中学生って分かってんのかな?
貴兄の周りって、なんか変な女の人が多いかも…。
あたしはなんだか脱力してしまい、抵抗を諦めた。
とりあえず命の危険はなさそう。
そうして強引に連れて行かれた先は高級そうな洋服屋さん。
「ちょっとこの子を磨いてあげてくれる?」
麗華さんはあたしを店員さんに引き渡した。
「私どもにお任せください」
店員さんはにこにこしながらあたしを中に導いた。
30分後、キラキラに飾り立てられたあたしが鏡の中にいた。
ちょっと大人っぽい水色のワンピースに、ヒールのある靴、耳からはキラキラのイヤリング。
誰、これ?状態。
麗華さんは腕組みをしながらあたしを品定めするように上から下まで見回した。
「まぁ、これならそこらへんの普通の男の何人かは引っかかるでしょ。さっ、早く婚約でもしてお兄さんを安心させてあげちゃって!」
「いえっ、あたしはまだ中学生なんで婚約者は必要な…」
あたしの訴えも虚しくそのまま強引に連れて行かれた先は、お洒落なイタリアンレストラン。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます