そう言った紗夜は、不敵に笑う。

「固定概念で凝り固まったお前らなら、こんな方法出せなかっただろ? 使えない科学技術にしがみついたお前らじゃ、こんな裏ワザ、気づけなかったんじゃないか?」

「それは、そうかもしれないけど」

 そう言って大國さんは、苦笑いを浮かべる。

「紗夜ちゃんが言っている魔術っていうのは、そんな万能なものなのかな? 何かしら、ルールに則って行う必要があるんじゃないかな?」

 大國さんはそう言いながら、イズニの方を一瞥する。その視線を受けて、異世界人は眠たそうにあくびを浮かべた。

「うーん、そうだよ」

「ほら! 魔術には、未来の機械と魔術で作った人体を紐付けれるような、そんな時代どころか世界を飛び越えた結びつきを定めるようなものなんて、そんな無茶を押し通せるルール、どうやって満たそうっていうのかな?」

「それはもちろん、ルールに則って、だよ。イズニ。代償について、説明してやれ」

「説明するのだるー」

 そうは言うものの、イズニさんは紗夜に言われた通り、口を開いた。

「一体で、人一人がどうにか出来る範囲のことは出来る、って感じでしょーか?」

「……一体?」

 そうつぶやいた大國さんへ、紗夜が肩をすくめる。

「生贄だよ。一人を捧げれば、人間一人が行える結果を手に入れることができる。ま、その人間の結果、未来を先取りして今の時代に引き寄せられる、とでも考えてもらえればいいんじゃないか? まぁ、生贄に捧げないといけないのは、別に人間じゃなくてもいいんだが」

「未来を、先取り……」

 そうつぶやく大國さんに向かって、紗夜は大仰にうなずく。

「そうだ。未来は変えれないと考えているお前には、確定した未来をこの場に呼び出せれる、先取り出来るっていうのは、そこから発生する未来を変えれることだって、そう思わないか?」

「……所詮、人一人がやれることですよね? それならそれほど大したことはありませんし、この場に生贄にできそうな人間は、この娃ちゃんの体だけですよね?」

 そう言って大國さんは、紗夜たちが持ってきた娃の体が入るクーラーボックスを一瞥する。

 そしてその瞳を、すぐに紗夜の方へと移した。

「でも、それだと『デバイス』の娃ちゃんに紐づける体がなくなっちゃいますね。あ! それとももしかして、無理やり私を生贄にしますか? もちろん、素直に従うつもりはありませんけど」

「まさか。そんなの、殺人と同じじゃないか。そんなマネ、ボクはしないよ」

 その言葉を聞いた大國さんは、満面の笑みを浮かべる。

「それなら、よかったです! 私としても、やむを得ずとはいえ、この時代の方を害するような行動は支度ありませんでしたし! ね? ナミネさん!」

「同意する」

 宇宙人の言葉を聞いた未来人は、満足そうにうなずいた。

「だとすると、その代償、生贄というのは、人以外、ということなのでしょうか? 確かにそれだと数は揃えれそうですけど、先取りできる未来は、そこまで大きな物を得ることは出来なさそうですね! それこそ、『デバイス』と、魔術で作った体を紐づけることなんて、全く出来なさそうですね!」

 そう言って満足気に笑う大國さんへ、紗夜が大胆不敵に笑う。

 

「いいや? まだあるじゃないか。ここに、未来の『デバイス』と、魔術で作った娃の体を紐づけることが出来る、生贄にピッタリの存在が」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る