④
玄関の扉を開けると、想像通りの人物が、そこに立っていた。
「遅いぞ、漣。お前の想い人の入れ物を、届けに来てやったというのに」
「運んでくるの、だるー」
紗夜とイズニさんは、かなり大きめな、クーラーボックスみたいなものを脇に置きながら、そう言った。
そのクーラーボックスみたいなものには車輪がつけられており、長めの取手を持って、そこを引っ張って運べる仕様となっている。
あの中に、娃の体が入っているのだ。
紗夜は、以前言っていた通り、体が出来たから、家まで届けてくれたのだ。
それを見て、僕は申し訳なさに押しつぶされそうになった。
……わざわざ届けてもらったけど、でも、この体を使う必要は、もうなくなっちゃったな。
そう思っている僕の心中を察しているはずもないのだけれど、紗夜が怪訝そうに口を開いた。
「何だ? ずいぶん暗そうな顔をしているな。愛しい人がやって来たんだから、もっと嬉しそうな顔をしろよ」
「どうせ、二人の姉の中を取り持つのに、失敗したんでしょ? あーあ、そういう優柔不断さ、マジでだるー」
「……とりあえず、中に入ってよ。状況を説明するからさ」
そう言って僕は、幼馴染と異世界人を、リビングに案内する。
突然現れた来訪者に、未来人は驚きの表情を浮かべ、宇宙人は相変わらずの無表情だった。
「えっと、その、どちらの方かな? 漣くん」
「僕の、幼馴染の紗夜と、異世界人のイズニさんですよ」
そこから僕は、未来人に宇宙人、幼馴染に異世界人という、全く異色の四人について紹介する。そして、それぞれのペアで、何を行おうとしていたのかも。
大國さんは、娃の体を作ろうとしていた所で、一瞬眉を寄せたが、それもすぐにいつもの笑顔に消えていった。
「娃ちゃんの体を作ろう、だなんて、かなりビックリしたよ! でも、肝心の娃ちゃんが、もう私たちに反応しなくなってるんだから、問題ないよね! うん! タイムパラドックスは、発生しようもない状況だよねっ!」
「一つ、ボクからも質問があるんだが、いいか?」
「はい、どうぞ? 紗夜ちゃん!」
右手を挙げる紗夜に向かって、大國さんが笑顔でそう言った。
その笑顔を受けて、紗夜は僅かに首を傾げる。
「ボクの記憶が確かなら、まだ『デバイス』は一つ、残っていたよな?」
「うん、そうだね!」
その問いに、大國さんは大きくうなずいた。
未来人が言っている通り、『デバイス』はあと一つ残っている。
……娃Cを蘇らせて、すぐにフォーマットした『デバイス』が、あるはずだからね。
そう思うのと同時に、僕は紗夜が何をしようとしているのか、気が付いた。それはあの理科室の夜、僕が行おうとしていたあの方法を、彼女が実施しようとしているのだということに。
だから僕は焦りながら、口を開く。
「紗夜。それは――」
「なら、その余った『デバイス』に、もう一度娃を蘇らせてもらえないものかな?」
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