③
僕は、死のうと思っていたのだ。
娃の後を追うように。もう、この世界にやり残したことなんて、なにもないと、そう思っていたのだ。
……そっか。結局、それに、戻るだけ、か。
夏休みも、もう、終わろうとしている所で。
夏休みの最初に、戻るだけ。
……なんだか、懐かしいな。夏休みに入った、最初の頃のことが。
ベランダに、未来人がいて、その話を、学校の理科室にいる、幼馴染に話した。
その幼馴染にお金をせびって、未来人が求める映画を集めて、そして未来人を呼び出したのだ。
その結果、娃は、AIとして蘇った。
……でも、僕はそれに満足出来なくって、『デバイス』の娃は一割しか世界を感じれないと、それだけしか、娃の世界はないって、ずいぶん狭まった世界に復活させてしまったって思っていて、だから、体を作ろうって、そう思ったんだ。
そこから、紗夜と異世界人を召喚して、イズニさんがこの世界にやって来た。彼女の魔術による協力の下、娃の体を作り始めたのだ。
そうしているうちに、もう一人の娃が『デバイス』に蘇って、けれどもどちらも僕は選べなくって、ずいぶん紗夜に、そしてイズニさんになじられた。
……その時、娃を二人に増やした場合の注意点も、かなり聞いたよな。
そして、僕を、情報生命体としてコピーするって、僕が決意をしたんだ。
その結果は知っての通りだけれども、もし今日、僕がその決断をせず、ずっとなぁなぁで時間が経過したとしても、きっと夏休み前までに、今の僕の生活は破綻していただろう。
……有機生命体の僕と、情報生命体になった娃とでは、全く時間の捉え方が、価値観が、違うはずだからね。
僕にとって、悩んだ期間はたった一、二週間程度だったけれど、あの二人の娃にとっては、もう何年も悩んでいる状態が続いていたと感じられていたはずだ。そんな関係が、維持出来るわけがない。
……結局、大國さんが言っていた未来が、正しかったんだ。タイムパラドックスは、起こせない。だから、僕は娃を蘇らせることが出来なくって。
そして、それを理解して、結局夏休みの最初に行おうと思っていた計画を、実施することになるのだろう。
僕も、娃と同じく、変えようもない元データとなるのだ。
そう考えていた、その時。
家の、インターホンが、鳴った。
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