……は?

 告げられた娃の言葉に、僕は一瞬固まってしまう。

「え、だって、その、コピー先、は?」

「ああ、大丈夫大丈夫。後『デバイス』は二つあるから、心配しないで! といっても、フォーマット化が必要なので、ちょっとまってもらうことになると思うけど!」

「な、なら、そもそも、そのコピーはどうやって――」

「自分が、担当しよう。先日榧木娃を抽出した情報量は保持している。差分アップデートをすれば、求めているエントロピーは抽出可能と判断」

 その話を聞きながら、僕は手にした皿を落とさないように必死だった。テーブルの上に、それぞれ皿を置いていく。

 しかし、あまりに衝撃的な会話の内容だったためか、大國さんとナミネさんから、怒られてしまった。

「あ、漣くん、間違ってるよ! 私、カルボナーラじゃなくて、アラビアータ!」

「逆に、自分はアラビアータではなく、カルボナーラを所望していた」

「……あ、すみません。置く場所、間違えちゃいました」

 乾いた笑いとともに、僕はそう言った。言いながらも、心の中は、先程考えていた疑問で埋め尽くされる。

 そんな僕の心中を知る由もない娃は、さも嬉しそうにこう言った。

「良かったね、漣! これで選択肢が増えるよっ!」

 

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