少し考えた後、僕は質問を口にする。

「その錬成する人間の体っていうのは、どんな体なの? 何種類かパターンみたいなものが、あったりするのかな? もしくは、男性の人間はもうこういう顔の人しか錬成できない、みたいな制約があるの?」

 僕の言葉に、イズニさんは首を振る。

「いーや、ないよ。顔のレイアウトも、自由自在さー。こんな人間を錬成して欲しい、って、絵画を描いたりしたりするのさー。でも、そうした人間を作るにしても、制約があるんだよー。一つは、錬成出来るのは体だけで、同じ生きている人間を複製出来るわけじゃないし、死んだ人間を蘇らせれるわけでもない、ってゆーこと。あと一つは――」

「人体を錬成するための、捧げ物だな?」

 紗夜の言葉に、イズニさんは気怠げに頭をかきながら、うなずいた。

「そーだよ。錬成する人体に元となっている人がいるのなら、その元となった人か、それに近しい人物に関する捧げ物が、長く使っていた道具とか、一緒にその人のそばにあったものが必要だ、ってことがわかってさー。何でもかんでも、自分の好みの人間の体だけを生み出せる、ってわけじゃないんだよねー、これが」

「……その捧げ物って、錬成したい人体、本人でもいいの?」

 僕は、家にある娃の骨箱を、その中に収められている姉の遺骨のことを思い出しながらその問を発していた。

 僕の問に対して、イズニさんはなんのためらいもなく、うなずく。

「それなら、問題ないかなー。逆に、向こうの世界だと死んだ人間の体だけでも蘇らせたいって人も結構大勢いて、墓荒らしが増えて、大変だったんだよねー」

 でも、一言も話してくれない人がずっとそばにいるのも、キツイものなんだけどねー、と、イズニさんはそうつぶやいた。

 その言葉を、顎に手を当てながら聞いていた紗夜が、口を開く。

「つまり、生成したい肉体の元となっている人が使っていた物だけでなく、多くの時間を過ごしてきた者でもいい、だから本人そのものでも問題ない、ってことか」

「そーゆーことー」

 紗夜の言葉に、イズニさんはそう言って同意する。その言葉を聞き終える前に、僕は間髪入れずに口を開いた。

「他に、人体錬成で必要な材料は何があるの?」

「んー、そうだなぁ。石灰とか、リンとか、鉄とか――」

 僕はイズニさんが読み上げる、娃の体を生成するのに必要な他の材料をスマホにメモしていく。

 そんな僕の隣で、紗夜が口を開いた。

「それで? イズニ。お前、そこまで話したってことは、お前は当然人体を魔術で生成出来るんだろうな?」

 紗夜の挑発的な視線を受けて、イズニさんは鬱陶しげな表情を浮かべた。

「材料があればねー」

「漣。金は出してやるから、気にせず買え」

「……ありがとう」

「んー、今の会話の流れだと、わたしはその生贄を一体、作ったほうがいい感じかなー?」

 その異世界人の言葉に、僕は大きくうなずいた。

 こうして僕は、AIの姉と未来人と宇宙人が家で待っている間に。

 娃の体を作る計画を、幼馴染と異世界人とで進めることとなったのだ。

 

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