第5話 救出
昼の時刻を告げる地震が起きる、同じ頃。子供の悲鳴が耳に届いた。
声が聞こえた場所は、向かう先の野営地だった。
「アルッ!?」
この森にいる子供としたらアルしかいない。バルドルがついているはずなので問題はないはずだが、彼の傷は癒えていない。熱は昨夜のうちにかなり下がったが、守れるほど動き回れるとは思えない。
「急ぎます」
フアニアを抱えるニーロの腕の力が強くなると同時に、走る速さが上がった。振り落とされないように必死にニーロの肩口に掴まる。激しく揺れるなか、口に入れている甘味をいっきに飲み込まないように気をつける。せっかくの甘味なのだから、少しでも長く味わいたい。
大人が走れば野営地は遠くはなく、森を抜け河原沿いに走ればすぐについた。
そこにはどこからどう見ても荒っぽそうな男が三人ほど、バルドルを囲むようにして対峙していた。アルの姿が見えず、フアニアは手を強く握りこむ。
「キーラン、わかってるな」
「頼みます。僕は荒事は得意ではないので」
爽やかに微笑むキーランに呆れながら、ニーロは抱えていたフアニアを受け渡した。キーランはニーロから受け取ると、そっと地面に降ろして背後にかばうようにして立ちはだかった。
「あの……」
「大丈夫です」
何も不安などないように微笑むキーランに、フアニアはただ頷くことしかできなかった。彼の服を掴んで、バルドル達の所へ向かうニーロの背を見守る。
男達はようやくこちらに気がついたのか、一人がニーロに目を向けた。
「何だ、まだ人がいたのか」
「いや。あっちには子供がもう一人いるぞ。そっちも必要なんじゃないか?」
彼らの手には刃物が握られていた。一人は片手で剣を握り、もう一人は槍を手にしている。一番立場が上と思える男の手にはナイフが両手に一本ずつ握られている。
刃物を持つ男達に目を向けられ、フアニアの中で不快感が勝っていく。彼らの視線から隠れるようにしてキーランの背後にぴったり隠れる。
「怖いですか?」
答えられなかった。フアニア自身が荒事の場に身を置いたことはないけれど、神々の知識の中で不快な出来事として記憶されている。そのせいで、つい身構えてしまう。
ニーロも教師なのに、何故率先して荒事の場に向かえるのか。恐る恐る様子を窺っていると、彼は右手を背にまわし、マントの陰から剣を取り出した。そんな物を背負っていたとは全く気がつかなかった。
「そなた達に問う。ここで何をしている」
「おっさんに答える義理はねぇな。さっさとそこの子供渡しておっちんじまいな」
「危ねぇッ!」
剣を手にした男が舐めた態度でニーロに刃を向ける。そのことに気がついたバルドルが声をかけるが、ニーロはまったく慌てる様子がなく剣を鞘から抜こうともしない。むしろ、鞘から抜けないように封をされているようにも見えた。
ニーロが右手に鞘ごと剣を構えるのと同時に男の片手剣が頭上から振り下ろされるが、刃が届く前に男の体が横に吹っ飛んでいった。
「っ!?」
勢いよく吹っ飛ばされた男は森の木に派手にぶつかり気を失った。一瞬の出来事にフアニアには何が起きたかよくわからなかったが、ニーロの剣が先ほどとは別の位置にあるので、彼が原因であることしかわからない。
「問題はなさそうです。我が君、ここで隠れていてください」
「え? あっ、はい」
突然のことにまた呼び方について指摘するのを忘れてしまった。キーランは軽い足取りで吹っ飛んだ男の側まで行くと、彼の服をひんむいて手早く拘束していく。その間、残った男二人はニーロがただ者でないことに気がついたのかようやく警戒する。
「おっさん、あんた何者だよ」
「こちらも答える義理はない。それより、ここで何をしていた」
「アルをどこへやった!?」
バルドルは腕を怪我したのか、右腕を押さえ込んで膝をついていた。今にも飛びかかりそうな雰囲気で男を問い詰めるが、男は答える気が無いようだった。
「……仕方が無い」
ニーロは大きくため息をつくと、剣を体の正面で縦に構え、威厳のある低い声で唱える。
「大地を汚す罪人の名を、審判の神へ捧げます」
紡ぎ終えると同時に、槍を構えていた男の懐にニーロが入り込む。すぐさま槍でニーロを突こうとするも、剣で槍を振り払われ男の体が地面に叩きつけられた。
大きくマントが翻り、背中の服に刻まれた紋章が目に映る。
天秤を模した紋章に、男が声をあげた。
「お前っ、
残ったナイフを手にした男は後ずさり、フアニアに目をつける。ぎろりとした怯え切った瞳と目があい、フアニアは背筋が震えた。こちらに一直線に向かってくる男がフアニアの元に辿り着くことはなかった。いち早く気がついたバルドルに飛びかかられ、押さえつけられたからだ。
「怪我をしているなかすまない。助かった」
「いや……こちらこそ、助けてもらってすまねぇ」
バルドルに礼を述べて、ニーロが手早く拘束していく。バルドルからロープをもらうと一人ずつわけてしっかりと縛り直した。ニーロとキーランが三人を引きずって集めているなか、フアニアはバルドルへと駆け寄る。
「バルドルさん、大丈夫ですか!? アルは……!」
「……情けねぇ。連れて行かれちまった。早く追いかけねぇと!」
バルドルの右腕から血が流れ出ている。服の袖をちぎって手早く止血する彼を止めたのは、フアニアではなくニーロだった。
「あなたに尋ねたいことがある。森の奥のヴォルフはそなたが元か」
「……そうだ! 呪いなんて駄目です! アルを一人にする気ですか!?」
すがるようにバルドルの左腕に抱きつくと、彼はニーロとフアニアを見比べた後、諦めたように息を吐く。
「見たのかあれを」
頷けばバルドルが右手でフアニアの頭を軽く叩いた。
「ったく、ガキってのは目を離すと何をしでかすかほんとわからねぇな」
「だって……」
「安心しろ。あれは俺が呪ったわけじゃねぇ。とにかく詳しい話は後だ。今はあいつらをとっちめて……」
「それはキーランがしている。なのでそちらの事情を説明してくれるか」
ニーロに言われ、フアニアはバルドルと共に驚いた。気がつけば四人の姿がない。いつの間にそんなことになっているのか。手際が良いというか慣れている。
バルドルは少し警戒するようにニーロを窺う。
「助けてはもらったがあんたらは何だ。さっき神殿騎士って。その背中の天秤の紋章は教会で見たことがある」
ただの教師と学生ではないだろうとは思っていたが、やはり違ったようだ。フアニアも問い詰めるように視線を向けると、ニーロはさっとマントを払い直し、手を合わせて跪いた。
「では改めて。俺は教国で神殿騎士を務めるニーロ。あっちにいるのは宣教師キーラン。我らは
「え」
そんなつもりは全くなかったので、突然そのようなことを言われてフアニアの方が驚く。呆気にとられているフアニアに、「お前は知ってたのか?」とバルドルの問いに勢いよく首を振った。
「初耳です! 何故初めに言わなかったのですか」
「人柄を知ってからの方が話を聞いてもらえるだろうと思ってな」
「……フアニア。まさか、食い物もらって懐いたのか?」
バルドルの指摘に目をそらす。そんなことはない。それだけで行動を共にしたわけではないが、甘味をもらって良い人認定してしまったが故に、何も言えなかった。
がっくりと肩を落として呆れるバルドルに頭をぽんと叩かれ、
「俺も言えた義理じゃねぇけどな、もうちっとお前は食い物につられるのを止めろ」
「先ほど二人にも言われました」
「当たり前だ!」
ぐいっと強く頭を押さえつけられる。そんなに押さえつけられたら地面にのめり込むのではないかと思っていると、ニーロがバルドルの背をじっと見つめていた。
「……その傷。もしや、あのヴォルフに傷つけられたのか? 僅かに気配がする」
「え? 町長に怪我させられたのではないのですか?」
バルドルを見上げると、バルドルは仕方ないと言った様子で語り出す。
「町長じゃねぇよ。それに、あの呪いは元は俺と一緒の村にいた男だ」
バルドル達がモレニの町についた時偶然再会したらしい。バルドルの顔を見るなり青ざめて逃げ出した男を不審に思い問い詰めたところ、そもそも村長が全て裏切っていたことを告白したそうだ。村一番の美人だった妻を町へと向かわせたことも、帰ってこないことも男は知っていて協力した。男は罪の意識に耐えかねて、盗賊に襲われて死んだことにして村を離れていたそうだが、生きていくのは難しく結局また悪事に手を染めて、ここ最近は町長の手足として動いていた。そこであの時の産院で書類を改ざんした官吏が町長であることを知り逃げようとしていたという。
「……けど、あいつは結局追い詰められ殺された。どうやら頻発している人さらいも町長が関係しているらしいが、その責任をヴォルフに押しつけるか、見つからなければあいつに罪を着せようとしたようだ。あいつの恨みと後悔が気づけばああなっちまった」
苦いものを噛みつぶしたかのように顔をしかめるバルドルに、フアニアも胸が痛くなる。
「でも、それで何でバルドルさんが町長と取引を……?」
「妻のイザベラの行方を知るために。あいつの仲間を装って代わりをかって出て、いもしないヴォルフ探しをしていたのさ。まぁ、結局あいつの恨みがヴォルフになっちまったがな。町からの帰りがけ様子を見に行ったら、うっかり襲われちまってな……」
「呪いの獣の傷を受けたのに生き延びたのか!? どうやって……」
ニーロが驚いたように目を見開く。バルドルはちらりと横目でフアニアを見た後、いたずら小僧のように口の端をあげた。
「さぁな。奇跡でも起きたんだろうさ」
詳しくはフアニアにもわからないが、バルドルが助かったのはフアニアのせいだ。
解毒薬の薬草が効いたものだとばかり思っていたが、あの薬草はアルの慈愛で復活した薬草。フアニアの腹の中を通して神の力が宿ったもの。それが運良く作用して助かった可能性が高い。薬草が枯れていたが故に苦肉の策だったが、逆に功を奏していたとは。それこそ奇跡だろう。あながち間違いでも無い。
話が一段落つくと、森から聞こえてきていた悲鳴が少し収まり、キーランが良い笑顔と共に軽い足取りで向かってくる。
「いやぁ、簡単簡単。三人ばらけて脅せばすんなり吐いてくれましたよ」
「……お前は」
ニーロが責めるように見つめるが、不服そうにキーランは肩をすくめる。
「やめてください。血は流していません。神は大地が血で汚れるのを
仕方ない仕方ない、と笑うキーランにバルドルさえ引いている。話の内容的に町長が一番えげつないのに、キーランの方が爽やかすぎて逆に怖くなってきた。
「それで娘はどこに! アルは……!」
「申し訳ありません。それは本当に知らないようで。ただ、町長は相当追い詰められているらしく、彼らが命じられたのはあなたを殺して、連れの子供連れてくることだったようです」
「……ちっ。あいつに負わせようとしていた責任を今度は俺にかぶせるつもりだったか」
くそっと苛立ったように地面を蹴り、バルドルは立ち上がるとフアニアを抱え上げた。
「町へ行くぞ。町長を問い詰める」
「それは僕と我が君で向かいます。こっそり侵入して調べるならそれが最適です。お二人は先ほど捕まえた三人を連れて町まで向かってください」
「だがっ……!」
不安そうにフアニアを見つめるバルドルの眼差しに、どこか心が温かくなるような気がした。彼がフアニアを巻き込むつもりがなかったことは黙っていたことからわかっているので、おそらく危険が及ばないか心配してくれているのだろう。
「私もアルを助けたいんです! アルは……初めて私にご飯をくれた人だから」
「飯の良し悪しで判断するなと今言ったばかりだが……。わかった。どのみちこの腕じゃ役にたたねぇ。俺もすぐに追いつく。アルのことを頼んだ」
そうして、フアニアはキーランと急ぎ町へと向かった。キーランの細そうな腕で抱きかかえられることに抵抗があったが、意外にも安定してたことが一番の驚きだったが、一番落ち着かなかった。
まだ空が明るい為、モレニの町の門からフアニアは入ることができない。どうするのかと思えば、外壁を飛び越えるという荒技だった。
「ここの見張りがよくさぼっているのは把握済みです」
本当にこの町は大丈夫なのだろうかと不安になるような情報を得ながら、町に入ると降ろされた。目指す先は、町の北側にあるという町長の自宅。
「役場ではないのですか?」
「証拠となるものは家に隠しているでしょう。普通ならもう少し考えますが、ああゆう短絡的に上に取り入ろうとする人間はつめが甘いことが多いです。覚えておくといいですよ」
「わかりました」
また一つ、人間について嫌なことを覚えてしまったなと思いながらも、聞き入れておく。
昼間の町は夜よりは活発的で新鮮だったが、不安そうな顔つきをした人達も多く見られた。
町長の家は非常にわかりやすいほどに豪勢だった。綺麗に整えられた白い石造りの二階建ては、家という雰囲気にはあまり見えなかった。どちらかというと、神聖な建物に近い雰囲気が漂っている。
冷たい気配を感じて隣を見ると、キーランが静かに怒っていた。笑顔だが、確実に怒っている。
「キーラン……何かありました?」
「……この建物は教会です。まさかここまで不敬なことをしでかしているとは」
宣教師ならば許しがたいに違いない。フアニアとて内心呆れてしまう。
結局神が去ろうが去らまいが、人間が変わることはなかったということのように思えて悲しくなる。彼らの悲しみが
僅かに眉をひそめると、キーランがフアニアの前で跪き手を合わせる。
「どうかこれを人間の基準だと思わないでください。
まるで神々に従った眷属や聖霊達のような態度に、フアニアは首を横にふって拒否した。
「それぐらいわかっているので、止めてください。私は神でも何でもなく、跪かれるような対象じゃありません。ついでに我が君と呼ぶのも止めてください」
「わかってくださり嬉しいです、我が君」
「私はわかってくれなくて悲しいです」
むぅっと唇をとがらせて睨みつければ、キーランは困ったように目を細めつつも、どこか嬉しそうにはにかむ。
「こればかりは仕方ありません。いつかその理由を語らせてください」
「結構です。それより、早く行きましょう」
町長の家の前には警備の兵士が一人ぐらいはいると思ったが誰もいない。安心して正面から入らせてもらう。教会ということでキーランには構造がわかるようで、こちらです、と教会正面の入り口ではなく下働きが出入りする入り口を教えてくれる。
教会にはそこで暮らす神官達の為の部屋があるようで、そちらではないかと当たりをつける。
けれど、不思議なことに中には人の気配がない。町長が屋敷として使用しているならば、下働きの人達が忙しく働いていてもおかしくないのに、姿すら見えない。
しかし、あれほど気配がなかった居住区の二階にあがる階段にさしかかると、上の階が騒がしいことに気がついた。
キーランは上体を下げて足音を消し、慎重に階段をあがっていく。最上段からそっと顔を覗かせると、町で見かける兵士よりもう少し身なりが良さそうな兵士が忙しなく行き交っていた。
「あれはノスタルの武官ですね」
武官と兵士は違うらしい。兵士は町や村で育成し結成されるが、武官は一定の身分か試験に合格しなければなれないと教えてくれた。
つまり、産院や門番の兵士達と違って訓練の度合いが違うということである。
「どうしますか?」
「僕にお任せください。我が君は笑顔で隣にいてくだされば問題ありません」
「……わかりました」
多少の不安は感じるものの、他に手だてはないので従うことにする。フアニアは自分の頬をぐにっと持ち上げ、笑顔を張り付ける。笑顔の度合いはアルの優しげな笑顔を参考にした。
二人で堂々と階段をあがり廊下を進むと、当然のごとく武官に取り囲まれる。
「何者だ!」
「
懐から取り出した木札を武官に見せつける。フアニアから見えたのは裏側に描かれた天秤の紋章だけだった。受け取った武官は木札をじっくりと見聞した後、キーランに札を返す。
「偽物ではなさそうだが、そちらの子供は何だ」
じろりと見つめられ緊張しつつも、フアニアは笑顔を保って黙っておく。
「彼女は見習いとして今回の旅に同行しているのです。お気になさらず。それよりも何故武官の方々が教会に?」
何を勝手に入り込んで踏み荒らしてるんだ? とでも聞こえてきそうな冷ややかな問いに、キーランの意図が伝わったのか不機嫌そうに武官が顔をしかめた。
「教会に用があるわけではない。ここを自宅代わりにした男に用があるだけだ」
こちらもその男に用があるのだが、と思っていると、廊下の先にある部屋の扉が開き、感情があまり窺えない平坦な声が聞こえてきた。
「何を騒いでいる。身柄は見つかったのか」
「!?」
廊下に出てきた男にフアニアは見覚えがあった。明るい中で会ったわけではないし、暗闇だったので顔もはっきりとは見えなかった。けれど、あの夜明け色の長い髪と鋭い瞳には覚えがある。
あの夜に出会った悪食の男だった。
「オズウェル様! 申し訳ありません。宣教師達が突然訪問してきたもので……」
「宣教師……?」
武官の言葉にオズウェルと呼ばれた悪食の男がこちらに目を向け、僅かに瞼がぴくりとひくつく。視線はキーランに向いているが、隣にいるこちらにも不穏な視線が向けられている気がした。
驚いたのはこちらとて同じである。しかも、武官から敬称をつけられる立場とはどういうことだろうか。
「……とりあえずこちらで話をきこう」
他の部屋より少しばかり広い部屋の中は随分と荒れた様子だった。町長が荒らしたのか武官達が荒らしたのかはわからない。オズウェル以外にも武官が忙しなく調べごとをしている。調べるというよりは、何かを探しているようだ。
「私はモレニの北門から先にある領地で行政官を務めているオズウェルだ。領地内にて発生していた人身誘拐の罪を犯していた罪人がこちらの町長と関係があるとの情報が入った為調査させてもらっている。教会を荒らす気はないが、勝手に立ち入ったことは詫びよう」
どうやら領地境の町は有事の際に素早く対処できるよう、どちらの領地にも調査する権限があるらしい。
淡々と詫びるオズウェルにキーランは手を合わせて軽く礼をとる。
「詫びる必要があるのは町長でございます。実は奇遇なことに、我々も彼の行方を追っていまして」
「……宣教師が何用で?」
キーランは簡潔に説明する。フアニアが世話になった人が連れ去られたこと。犯人の一部を取り押さえ護送中であること。そして、売り先がどこかを調べに来たこと。
「町長が懇意にしている闇商人の居場所がわかるような物などはありましたか?」
「……ないな。あるとすればこの中だと思えるが、鍵だけ持ち出したようだ」
オズウェルが指し示したのは壁に取り付けられた鍵だった。壁の一部が正方形の枠になっていて、錠前の鍵がついている。武官達は鍵を探しているらしい。
「壊す用意もしているのだが、町長の身柄を確保するのが優先で人員が足りない。町の人間はどこまで町長と関わっているのかも不明だからな」
相変わらず表情を変えずに話すが、少しばかりため息がもれている。
オズウェルも悪食ならば鍵ぐらい食べれば簡単に開けられるはずだ。けれど、彼がそれなりの立場で働いているということは人間を装って暮らしているということになる。どうやってその立場までこぎ着けたのかはわからないが、迂闊に悪食だとばれるような行動をとる気が無いようだ。
「教会に詳しい者なら見てわからないか?」
ちらりとオズウェルに見られてフアニアは察する。
「わかりました、見てみます。ですが、これは教会に関わる秘密なので見ないでもらえますか」
フアニアがお願いすると、オズウェルは武官達にも背を向けるよう伝える。確認がとれるとフアニアは錠前が刺さっている部分にかじり付いた。それをさも開いたように見せかけ報告する。
「開きましたね」
武官達が驚いたように振り向くが素知らぬふりをしてオズウェルがさっさと中の物を取り出す。中に入っていたのは書類のようで目を通していく。書類は闇商人と取引した契約書のようだ。証拠になりそうな物を何故取っておくのか。
「そのうちこれを証拠品として提出して逆に捕らえて手柄にでもするつもりだったんですかねぇ。ですが肝心の場所が……」
キーランも一緒に書類を見ながら手がかりはないか探していくと、何やらふと目にとまったようだ。
「これは改ざん前の帳簿か何かですかね。ずいぶんとムササビ航路を利用してますね。しかもこの村は覚えがあります」
「どの村ですか?」
「我々が立ち寄ったリビスです」
フアニアの両親が立ち寄った村だ。話を聞いた時に普通の農村にしてはずいぶん荒っぽいと思ったが、関係があったとは。だが、よく考えればフアニアが初めて人さらいにあったのもあの村の近くだったことになる。
「町からは馬車が何台か出て行ったと報告があり、探らせていたが。行き先がわかったなら、先回りできるかもしれないな」
オズウェルの言葉にフアニアが驚いていると、二人は慌ただしく動き出した。今は見習いの立場ということになっている為、フアニアは彼らの指示に従いついていくしかなかった。
あれからオズウェルも武官に指示を出し、フアニアはキーランと共に南門脇に設置されている
ムササビと呼ばれる人間よりも大きな獣に乗って、櫓を垂直に登り、高所から滑空するように進んでいく。高い場所に上がるとよくわかったが、町や村、遠いと中間地点などに櫓や塔が建てられているようだった。ムササビは次から次へと飛び移る形で移動するのだが、飛んでる最中は怖くないのだが、垂直に登る時がひやりとする恐怖感が強かった。
しかし、そのおかげかあっという間に村に辿り着いた。アルがさらわれたのが昼ぐらいだったので、陽が沈みかけている今なら先回りできたのではないだろうか。
「高額なだけあって速いんですが、慣れないと驚きますよね」
ははっと笑うキーランに、フアニアは何も言えなかった。神々も空を移動することはできたがそれとは完全に別物であった。
村に設置された櫓から次々と人が降りてくる為、村は少しざわついている。
本来ならバルドル達と合流して来たかったが、族を連れてくるのに手間取っているのか合流できなかった。代わりに何故かオズウェルと武官が数人ついてきた。
証拠人である町長の確保をする為だということだ。
「あの……突然どうされたのですか?」
恐る恐ると言った様子で村長らしき老人が声をかけてくる。線が細く、風が吹けば飛んでしまいそうである。老人の前にオズウェルが進み出た。
「今すぐ村民全員を広場に集めろ」
「わ、わかりました」
オズウェルの無表情の迫力に圧倒されたのか、老人は顔を青くして周囲に声をかける。周りで見ていた村民達もただ事でないことを感じ取り、次々と集まってくる。夕暮れということもあり農作業を終えて戻ってきていたのか、すぐに集まった。
「これで全員か。隠し立てすれば罪が重くなるぞ」
「は、はい。全員です。あの……罪とは何があったのでしょう」
村民はみな地面に膝をつき頭をたれている。それが人間の間での礼の取り方のようだ。一様にして不安そうな顔で周囲と顔を見合わせる。
「モレニの町長が人をさらい身分証を売りさばく人間達とつながりがあることが発覚した。彼はこの町へと頻繁に来ていたようだが、知っているか?」
「それは知りません! 町長が来ていたことは事実ですが、査察だとおっしゃっていました。
村長の言葉に続いて、周囲の村民達も知らないよな、と口々に声をあげる。
森を食い荒らしたのはフアニアだ。産まれた時お腹が空いたので少し多めに食べてしまった記憶があるが、こればかりは仕方が無い。
暗くなっていくなか、フアニアも村民を見渡す。俯きがちなので顔はよく見えないが、ふと一人見覚えがあるような気がする男がいた。
隣に立つキーランに、フアニアはそっと声をかける。
「……あの、後ろ側に座っている男ですが見覚えがあります」
表情を変えずに静かに頷くと、護衛でついている武官に了承を得た後、オズウェルに声をかけた。
「オズウェル様。少しよろしいですか?」
「何だ」
「実は少し前、こちらの村でお世話になりまして。村長は覚えておいででしょう?」
優しげに声をかけるキーランはとても親しみがあるように見えた。村長は少し体から力が抜けたのか、嬉しそうに声をあげる。
「おぉっ、あの時の学生か」
「はい。それで、あの時僕は村の人達といなくなった女性を森で探しましたが、一人別行動をとっていた方がいましたよね。彼はよくその様な行動をとるのですか?」
キーランがフアニアが見覚えがあると言った男に視線を向ける。一斉に周囲から向けられた男が引きつったような笑顔を浮かべ、一歩下がる。
「お、俺はただ森に詳しいから、他のみんなより奥を探しに行っただけだ! おかしいことはないだろう!?」
「そうだけどさ……。あんた町長が来た時にも案内してただろ。木こりのあんたなら他と違って余裕があるからって」
ざわつく周囲の目が男を追い詰めていく。
その時、村の入り口の方から馬車の音が響いてきた。
勢いよく走ってくる馬車を見て一番初めに動いたのは武官達だった。手早く御者を取り押さえ、馬車の入り口を勢いよく開け放つ。武官がすぐに捕まえるかと思ったが、彼らは躊躇するように一歩下がる。
馬車から男が、縄で縛られ布を加えされたアルを連れて降りてきた。だが、明らかに顔色が悪い。男の手にはナイフが握りられ、いつでもアルを殺せるような状況だった。
「まったく騒がしいですな。何事ですかな?」
フアニアは町長の姿を見たことが一度もないけれど、判別できるぐらいには噂通りだった。ぎらつく固められた髪に、町では見かけたことがないような生地の良さそう服。ぽてっとした体型が裕福さを表しているかのようだ。
「町長。その少女はどうされました? それに私はあなたに調査を依頼していたはずですが」
オズウェルの問いかけに対し、町長は朗らかな笑顔を浮かべて話を続ける。縛り付けたアルを伴って平然と会話する姿に不快感が勝った。
「これはこれは行政官殿が何故こんなところに?」
「罪人を捕らえにだが」
「ははっ、奇遇ですな。わしも捕らえに来たのですよ。ほら、以前より調査をお願いされていた犯人を見つけましてな。こうして捕まった少女も無事確保したところです」
「その割に扱いが悪いようだが?」
どうやら町長は人さらい達が捕まったことを知らないようだ。アルがさらわれたのはアル達がバルドルの元へ駆けつける前だった。バルドル一人を処分してそこにいた娘をさらわれた子供扱いして難を逃れようとしたらしいが、ニーロが全て返り討ちにしたのでその情報すら行き渡っていないということだ。
そのことにすら気づかず、町長はとくとくと自分の武勇のごとく話を続ける。
「では、何故町ではなくここにいる?」
「それが仲間がこの村にいるとのことで。いやはや、まさかこの村を心配して査察していたわしの足下でそんな悪事が行われているとは。そこの木こりの男ですぞ。逃げる前に捕まえた方がいいのではないか?」
にんまりと笑う町長は人間の汚さそのもののようで、フアニアの記憶を刺激する。それはオズウェルも同じなのか、表情こそ変わらないものの、僅かに眉間に皺が寄っている。
武官の一人が男を捕らえようと近づくと、犯人扱いされた男が声を張り上げた。
「勝手なことほざいてんじゃねぇぞ、くそじじい! こっちはなぁ、てめぇが子飼いの族にさらわせた売り先が見つからないガキを殺して、身分証を売りさばいてる証拠を残してあるんだ。自分一人助かろうなんざ甘いんだよ!」
男の懇親の訴えにも町長は顔色一つ変えずに笑顔のまま。アルを人質のように構えながら、ゆっくりと男に近づいていく。
「何を言っているのやら。お前の管理する木こり小屋の倉庫に子供を隠しているんだろう? 責任を押しつけようとは、まったく農民風情が愚かしい」
村民達は町長と男の言い分、どちらを信じればいいのか困惑した様子で二人の顔を見比べる。
「お前さん……本当にそんなことをしてたのかい?」
恐る恐る近くにいたおばさんが声をかけると、男は苦しげに唇を噛みしめ声を張り上げた。
「俺はただガキ達を預かってただけだ! はじめは森で拾った身分証を闇証人に売ってただけだったんだが……」
「お前、それは村から届け出たって金はもらえるだろう」
「あんなはした金じゃ誰の腹がふくれんだよ! その内もっといい仕事があるって言われて……」
そして悪事に手を染めていった、というところだろう。腹さえ空いていなければ、誰も飢えていなければこんなことにはならなかった。そんな思いが滲み出ていた。
村民達も彼の稼ぐお金に助かっていたのかもしれない。誰もが複雑そうな顔で黙り込んでしまった。
だが、彼の想いは町長には届かない。
「飢えているからと罪を犯していいことにはならない」
どの口が物を言っているのか。呆れてフアニアは物も言えない。周囲の苛立ちが最高潮に達した時、フアニアの肌が泡立つように寒気が走る。
「!?」
反応したのはフアニアとオズウェルの二人だけだった。嫌な物が近づいてくる気配がして遠くの空に目をこらす。
「どうしました?」
キーランの声さえどこか遠くに感じながら一点を見つめる。すると何か黒い物が勢いよくこちらに向かってきていた。
本能だろうか。昼間見たヴォルフの形をとった呪いだと気づくと同時に、フアニアは走り出していた。
「アルっ!!」
呪いがどの様に効果を表すのかわからない。今町長に捕まっているアルに影響がないとは言い切れなかった。
「何だお前はっ!」
町長が駆け寄るフアニアに嫌悪感を示し、手にしていたナイフを構えるが、構わずアルに両手を伸ばす。ナイフがフアニアの二の腕を僅かにかすめると同時にアルを突き飛ばし、二人で地面に転がった。
そしてそれは落雷のごとき勢いで現れた。
黒く淀んだ影がヴォルフの形をとり、真っ逆様に町長に向かって口を大きく開ける。頭のてっぺんから足下まで一瞬で飲み込まれた町長は、一泊置いた後悲鳴をあげた。
「うあぁぁぁっっ、なん……これ……あ、ああああ」
黒い影は霧散してはヴォルフの頭だけ形どると、町長の全身をくまなく噛みついていく。その度に悲痛の声をあげる町長に、村民達が悲鳴をあげて逃げまどう。
アルと一緒に倒れ込んでいたフアニアは上体を起こすと、何度も呼びかけた。
手首の縄を噛んではずし、口元の布をはずす。軽く何度か頬を叩けば、アルの瞼がぴくりと反応する。
「アル、大丈夫!? わかる!?」
「……フアニア?」
何度か瞬いた後、ゆっくりと目が開く。アルと視線があい、ほっとすると同時に、彼女の足下にまとわりつく黒い影に焦る。
「足、痛くない? 変な感じする?」
「……わかんない。なんも……感じないかな?」
それは逆に危険なのではないだろうか。呪いへの対処はないとニーロ達は言っていた。唇を噛みしめながら黒い影を見つめれば、キーランが駆け寄ってくる。
「我が君、大丈夫でしたか!?」
「キーラン! 呪いって対象者以外にも影響が出ますか!?」
フアニアの言葉にキーランはアルの足下に目を向け、観察するようにじっと見つめる。
「呪いは対象者だけのはずです。ただ、呪いが
嫌な予感は当たっていた。あの時飛び出して良かったと少し前の自分を褒め称えたい。
だが、癒やす手段がない。バルドルを癒やせたのはアルの純粋な想う気持ちがあったからで、フアニアだけではどうにもならない。アルを助けたいと思っているし、心から大切だとは思っているが、それが愛情かどうかはフアニアにはわからないのである。
けれど、バルドルにアルを頼むと言われた。彼を悲しませたくないし、その約束を守りたかった。
「影に触れないように、アルを人目の着かない場所へ移せますか?」
「やってみましょう」
キーランがアルの両脇に手をいれ、引きずるような形で広場から離れた家の影に連れて行く。広場ではオズウェルの指揮の下、文官達が事態の収拾にあたっているので、さほど目立たないだろう。
「アル、必ず助けるからね」
「……ふふっ、やっとフアニアが気を許してくれた……」
「え?」
「ちょっと、寂しかったんだ……」
弱々しく唇をとがらせて笑うアルに、胸がきゅっと痛む。痛む胸を押さえながら、フアニアはアルの足に手をかけた。
「我が君、何を……!」
「私に出来ることは食べることだけって、言いましたよね?」
にっこりと強がるように笑って、黒い影にかぶりつく。何でも食べられる悪食ならいけるはずだ。
「っ……!」
食べた瞬間、口の中に鋭い痛みが走り吐き出しそうになる。全身が拒絶を示すなか、引きちぎるようにして食べていく。
「フアニアッ! そんな物食べちゃ駄目、だよ!」
アルの弱々しい手が押さえつけようとするのを無視して食べる。少しずつだが、アルの足に纏わり付く黒い影が減ってきた。
キーランも不安げに様子を窺っているが、止める気はないようだった。ひとかけらも残さず綺麗に引き剥がすようにして飲み込み、アルに確認する。
「足は……どう?」
「……動くよ。動く、けど。フアニアの方が……」
涙目で見つめてくるアルにフアニアはにっこりと笑顔を浮かべる。
「美味しい物……いっぱい食べたいね」
「そう……だよ。あんなもの食べちゃ駄目だよ! 美味しくなさそうだし」
「うん、不味かった……」
「後でわたしが美味しいスープ作ってあげるからね」
不安そうに抱きついてくるアルの体をそっと引き離しながら、フアニアは安心させるように微笑む。
「ありがとう……楽しみにしてる。キーラン、アルを、頼みます」
「どちらへ?」
「しばらく、一人にしてください……」
これから何が起こるのかフアニアにもわからない。もしかしたら死ぬかもしれない。
痛む体を何とか動かし、村の横にある森へと足を踏み入れる。すっかり陽が落ちた為、森は暗いが、どこかに水場があるのかうっすらと明るかった。
喧噪の声が遠くなり人目がなくなると、フアニアは地面に横たわり自分のお腹を強くおさえる。
腹痛がひどくて、意識が飛びそうだった。
人の悪意の塊という神が一番忌み嫌うものを食べたのだ。神の領域に入ることすら許されず、お腹の中で荒ぶっているのがわかる。痛みに気をとられていた為か、側に人が来ていることにも気づかなかった。
「……何故そんなことを。耐えるしかないぞ」
「自分でも馬鹿だな……って思ってますよ」
オズウェルが静かに見下ろしていた。音もなく静かに座り込んだ彼の手がフアニアのお腹に触れ、苦しげに眉を寄せる。
「何故立ち去らなかったんだ……」
「一つ……訊いてもいいですか?」
「何だ」
「どうして人間に混ざって暮らしているんですか?」
「……君には関係ない」
「まぁ、そうですよね。じゃあ、後……」
「一つじゃないじゃないか」
答えてくれないのだからあれは数に入らない。
「お砂糖って……ないんですか? 甘いものが食べたいんです……甘い味がするものってどれですか?」
「こんな時にそんなことを訊くのか」
「大事なことですよ……」
生きていくには希望が必要だ。甘いものは満足感が高い。さすがに酒ばかり飲むわけにもいかない。一度口にすれば味は覚えるのだから、人間が食べられないもので甘味欲を満たしたい。
痛みから気を逸らすように、僅かな期待を持って尋ねたが、オズウェルは首を振る。
「残念だが、砂糖は長い歴史の中で失われた。今の甘味は主に蜂蜜と果物だな。それと、甘味は他ではあまり補えない」
「そんなぁ……」
僅かな希望さえ失われ、お腹の痛みが増したような気がしてきた。ただでさえ耐えがたい空腹に耐えているのに、楽しみさえもないとは。絶望的な気分だ。お腹を押さえながらごろごろと暴れ回ると冷ややかな目で見下ろされる。
「……納得がいった。君はどうやら人由来の知識があるから人間くさいのか」
「どういう、ことですか?」
そろそろ痛みに耐えるのも辛くなってきた。肩で息をしながらオズウェルを見上げると、彼の指が額を押してくる。
「君を産んだ両親の知識だ。あくまで予測だが、悪食は胎内で
「……両親の」
「記憶としては残らないだろうが、そうとしか思えないことは、私自身いくつか経験済みだ」
そうなると、フアニアの両親は相当フアニアに知識をたたき込んでくれたようだ。手当ての知識があったのはそのおかげだったのか。
フアニアという悪食を産み、生かす為に命をかけた両親は、そこまでしてフアニアに何を望んでいたのだろうか。
「それと。ひとの話しはきちんと聞け。ないとは言ってない。……私も、探しては……いる」
目をそらしながら答えるオズウェルに、お腹が痛いのに笑いたくなってしまった。
フアニアと違って冷静で感情の振れ幅がないので、悪食なのに飢えていないのか、それとも満腹感が得られるまで食べているのかとか思っていたが、やはり食に対する欲は変わらないらしい。似たような点を見つけて、どこかほっとしてしまった。
「じゃあ……一緒にたくさん育てませんか? それで、お腹いっぱい食べましょう」
にいっと笑うと、オズウェルの目が驚いたように見開いた。了承とも否定ともとれない彼の表情を最後にフアニアは気を失った。
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