第39話


「教えろ、ダリウス」


 消滅するダリウスの元へ、ニルはゆっくりと歩み寄る。


「何を――?」


「――その力は誰から貰ったんだ?」


 少なくとも、人間がその力を自ら作り出すことは不可能。

 人間が手にするには、その魔力を移管して貰わなければならない。


 ――無論、魔人である。


「それは――」


 口を開いた直後。

 ダリウスの身体は風化した様に砂となり、空へと散ってしまった。


 目の前で散る一つの命。

 彼は人間だったのか、魔人だったのか。


「遅かったか・・・・・・」

 聞く間も無く、闇属性の魔力が彼を襲った。


 ――僕に意思とは関係無く。


 ニルはため息をつく様に、大きく息を吐くと二刀の宝具をしまった。


 これで戦いは終わった。


 ――残るのは、あの兵器の対処である。


「ニル・・・・・・」

 ニルが展開していた防御結界で、アイリスは呆然とその光景を見ていた。

「ん?」

 右手で空間を撫でる様に振るうと、防御結界は解除される。

「・・・・・・ありがとう」


 ――助けてくれて。


 様々な感情が駆け巡ったが、まずは自身が言うべきは助けてくれた彼へお礼を述べることだろう。

 アイリスは小さく頭を下げた。


「どういたしまして」

 アイリスへ向け笑みを浮かべると、電磁砲へと視線を移そうとしていた。


 途端。

 電磁砲から回転音が鳴り響いた。


 回転音の正体。

 それは高速で回る電動機だった。


 慌てて真下にあった簡易操作台へと視線を移す。


 デスクほどの大きさの操作台。

 そこにいたのは、ダリウスから博士と呼ばれていた白衣の老人。

 老人は大きなレバーを引いていた。


 ――だから、電磁砲が動き始めたのか。


 電磁砲の中心部で急速に集束する魔力。

 ニルは思わず、電磁砲の先端を見上げた。


 磁界が電気を生む様に。

 高速回転することにより、魔力が集束・凝縮がされていく。


 そして、その凝縮された魔力は次第に増大していく。


 それほどの魔力量。

 だから、彼らは魔力が必要だった――カノンが必要だったのだ。


「鎖錠天理」

 ニルは告げると、黄色の魔法陣から四本の鎖が出現し、瞬く間に老人を拘束する。


 これ以上、余計なことをされる訳にはいかない。


 機械音。

 電磁砲の先端が延長し、南東の方角へと銃口を向けていた――。

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