第38話
「では、行くぞ――アルカード!」
ダリウスは右手を力強く握ると、渦を巻いた黒い魔力は小さな球へと凝縮された。
そのまま、右手を斜め下にいるニルへと向ける。
何かを放とうとしている。
あの凝縮された膨大な魔力を。
「邪龍」
瞬間。
凝縮された黒い球から、巨大な禍々しい龍が出現する。
雄叫びの様な声を上げ、喰らい尽くす勢いでニルへと襲い掛かった。
絶覇で敵う相手では無い。
それに避けても、近くにいるアイリスたちが避けれないだろう。
答えは一つ。
僕の手でこの龍を倒すこと。
「――魔剣・ダモクレス」
魔剣を右手に構え――ニルは大きく息を吐いた。
しかしながら、眉間に寄せた厳しい表情は変わらない。
知っていたのだ。
この宝具を用いても、この龍を倒せないことに。
「一刀なら――ね」
ニルは魔剣だけで邪龍を倒せると思っていなかった。
魔力を研ぎ澄ませる様に目を見開くと、ニルは左手を横に振るう。
「聖剣・ネフィタリス――」
告げた瞬間、左手に出現する聖剣・ネフィタリス。
オシリスが持っていた宝具だ。
先ほどニルによって破壊された後、形状を生成し直したのだ。
二刀の宝具を外側へ振り、二刀の魔力を研ぎ澄ます。
魔剣の闇属性。
聖剣の光属性。
次第に刀身は各々魔力を纏っていく。
「なんだ、その剣は――」
「宝具さ。かつての僕が君ら魔人を倒すために作ってもらった武器だよ」
来たるべき魔人との戦いに向けて。
それこそ、宝具が生まれた意味だった。
二刀を縦に構え、合わせる様に龍へと振りかざした。
闇の斬撃。
光の斬撃。
ぶつかりそうでぶつからない距離で、二刀の斬撃は一直線に龍へと衝突する。
一瞬にして、巨大な龍は二刀の斬撃により両断された。
そして、勢いを落とすこと無く斬撃は、邪龍の後方へいたダリウスへと斬りかかる。
「転移」
ニルは瞬時にダリウスの上空へと転移する。
再度、二刀の宝具を構え、闇と光の斬撃を放った。
正面と背後から迫る闇と光の斬撃。
ダリウスに逃げ場は無かった。
「魔風!」
闇属性を纏った手刀を振りかざし、両手を用いて二方向からの斬撃に対抗する。
数秒。
ダリウスの手刀は斬撃によって切り裂かれる。
交差する様に二方向からの斬撃にダリウスの身体は引き裂かれ、施設の床へと落下する。
「何だ・・・・・・と」
ダリウスの身体の半身は、魔剣が持つ闇属性の魔力により消滅していた。
徐々に残りの身体も消滅していく。
ダリウスが消滅するのは、時間の問題だった。
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