第33話
操作室前。
アイリスは操作室の入り口の鉄製の扉を開いた。
操作台の先にある大きな電動機、エンジン。
あれが電磁砲の源だろう。
エンジン部の手前にある黄色の魔法陣。
その中心にカノンはいた。
「っ!」
ようやくたどり着いた。
やっと、カノンの元へ着くことが出来たのだ。
座り込むカノンは両手足を拘束されていた。
魔法陣の端部から、裕度のある鎖に繋がれた錠。その姿はまるで奴隷の様だった。
銀色の分厚い首輪。
そこから、一本のケーブルがエンジン部へ向かっている。
「・・・・・・」
カノンは苦痛に耐える様な顔で息を荒くしていた。
今の彼女の魔力量は、普段の魔力量の半分以下。
ケーブル内で動く魔力。
おそらく、あの首輪からカノンの魔力を抽出し、エンジン部へ送っているのだ。
今にも倒れそうなその雰囲気に、アイリスは言葉を失った。
誰が彼女をこんな目に遭わせたのか。
憤怒の様な感情が心の中で駆け巡る。
何も考えず、一目散にカノンの元へと走った。
「――おや、来客かね」
突如、耳へと入るその言葉。
驚いた様にアイリスは立ち止まった。
黄色の魔法陣。
カノンの隣で告げる白髪の白衣を着た老人の姿。
白衣を着た老人は杖を突き、腰を曲げていた。
「っ!?」
反射的に鳥肌が立つ。
背筋が凍る感覚だった。
いつからそこにいたのか。
気づかなかった事実。
アイリスは驚きを隠せずにいた。
「ん? 君は――ニルヴァーナか」
アイリスを見つめると、白衣の老人は理解した様に告げる。
そして、右手に持っていた杖を勢い良く地面へと突いた。
突いた地面から展開される白い魔法陣。
瞬時にアイリスの周りに数多の白い魔法陣が展開され、そこから白い鎖が放たれる。
敵襲。
前触れも無く、突然老人は攻撃を繰り出した。
「くっ!」
白い翼で空へと舞い上がり、アイリスは逃げる様にさらに上空へと飛翔する。
逃げても逃げても追って来る白い鎖。
ただの鎖では無かった。
「やはり、君もこの電磁砲の動力源には最適だね」
老人は眺める様に上空の景色を見つめ、不敵な笑みを浮かべる。
動力源。
その言葉にアイリスは、この老人が元凶なのでは無いかと考えた。
白い鎖がアイリスへ追いつく寸前。
アイリスは大きく息を吐いた。
「天撃」
右手を白い鎖に向け、告げる。
光の法撃が白い鎖へと放たれると、白い鎖は浄化される様に消滅した。
「なら、私も行こうか」
上空のアイリスから聞こえた小さな声。
すると、アイリスから数メートル先の上空に白衣の老人が現れた。
転移魔法。移動魔法。
そのどちらかではあるが、移動速度が速すぎる。
「そう驚くなよ、ニルヴァーナ。君も似た様なものじゃないか」
解せない眼差しをアイリスへと向ける。
飛翔では無い。
まるで、上空に足場がある様にその場に浮いている。
「似た様な・・・・・・?」
いったい私と老人で何が似ていると言うのか。
「ああ。この世界での『異端』と言う観点で――な」
老人は不敵かつ下品な笑みを浮かべた。
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