第22話
数分後。
エニシス海域。
「そろそろ、陸が見えるわ」
アイリスは緊張感のある声で告げる。
「――だね」
陸地が見えた頃、海岸沿いには数多の影が見えた。
影の正体。
それは多くの兵士だった。
ニルたちを待ち構える様に配置している。
予想通りの展開。
ニルは冷静に兵士を眺める。
「百――――三百はいるね」
ざっと兵士の数をニルは数えた。
各々が持つ魔導武器。
展開される魔法陣。
間違いなく、彼らには戦う意思があった。
その様子だと、彼らはエニシスを支える魔法騎士団の団員の様だ。
「ははっ。まるで、戦争でもしようとしているみたいだね」
その光景に、ニルは思わず笑ってしまう。
海辺から陸まで十メートル。
ニルとアイリスは地上五メートルほどの場所で止まった。
「私は魔法騎士団、第一部隊長のスメラギだ」
立ち止まるニルたちへ、先陣にいた鎧を纏った騎士の男は告げる。
左腰に差す洋剣。
そこから感じる魔力は、ベルセルクの上級魔導騎士に該当した。
つまり、このスメラギと言う男は、
エニシスの魔導騎士でも上位の騎士であると言うこと。
「第一部隊長ですか――」
魔法騎士団の六部隊あるうちの一隊。
スメラギはその隊長なのだ。
彼が持つ魔力に必然性が帯びる。
これがエニシス魔法騎士団の幹部クラスの魔力なのか。
彼がその指標なのかもしれない。
「それで、アルカード」
「・・・・・・ああ」
今の僕はその名で間違いない。
そう言う様にニルはゆっくりと頷いた。
敵国に対して、ニルは冷たい口調で対応する。
あくまで、僕は覇王(仮)なのだから。
ニルの返事で確信に変わったのか、兵士たちがざわついた。
「なぜ、あなたがここに?」
抜刀出来る様に洋剣を構え、単刀直入にスメラギは告げる。
僅かに感じる殺気。
無論、他の兵士からも放たれている。
警戒心からか、それとも恐怖心からか。
皆、険しい顔をしていた。
「どうしてここに――か」
数秒考えた。理由は決まっている。
問題は言い方なのだ。
「僕らは用があって来たんだよ」
ニルは口調を変えた。
やはり、今の僕にはあの口調は言い辛い。
「用だと? いったい、この国に何の用が?」
眉間にしわを寄せ、スメラギは途端に解せない眼差しを向けた。
「エニシスのどこかにある電磁砲を破壊しにね」
「電磁砲――?」
聞き覚えの無い単語の様にスメラギは首を傾げる。
「ああ。その動力源のために、彼女の友達が連れ去られてね。僕らはただ、友達を助けに来ただけだよ」
隣にいるアイリスに視線を向け、ニルは淡々と告げる。
そうだ。
ここへ来たのは、仲間を取り戻しに来ただけなのだから。
「動力源?」
何の話か。不可解な表情を浮かべ、スメラギは首を傾げた。
「うん。そうだよ。だから――」
目を瞑り、ニルは大きく息を吸った。
「だから・・・・・・?」
「だから――通してくれ」
目を見開き、ニルは魔力を開放する。
威圧とも呼べるその魔力。
一瞬にして、後方の兵士は気絶する。
半数の≪百五十人≫。
その光景は、異様そのものだった――。
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