第18話


 魔法都市エニシス構内、研究所。


 カノンを攫ったダリウスたちは巨大な砲台の前にいた。


 魔法都市エニシス。

 王都ベルセルクの隣国であり、魔導兵器が発展している国である。


「博士。どうです、電磁砲は」

 ダリウスは操作台に座っていた白衣を着た老人に問う。


 ここは電磁砲および施設の制御を行う中央制御室だった。


「順調に充填しているよ」

 老人はダリウスに笑みを向けた。


 操作台に設置されている充填メーターの指示針。

 現在、10の数字を指示しており、ゆっくりと上昇していた。


「その調子だと、今日中には放てますか?」


 その上昇率であれば。

 ダリウスは確信する顔で問う。


「ああ。・・・・・・まあ、動力源次第ではあると思うが」

 そう言って操作台の先にあるガラス窓の景色を眺めた。


 数メートル下。

 巨大な黄色い魔法陣が浮かんだその中心。


 カノンはそこにいた。


 動力源次第。


 つまりは、あの少女の身体次第――か。


「――まあ、放つのが最優先ですよ」

 意図を察しても尚、ダリウスは釘を刺す様に言った。


 放てれば、それで良い。

 どうせ、あの少女は死ぬまで動力源になるのだから。


「・・・・・・了解だよ」

 そう言うと老人は、メーターの左側に取り付けられた抽出装置の出力レバーをゆっくりと上げていった。


 最初にレバーがあった位置は『2』、今は『5』になっている。


 瞬間。

 黄色い魔法陣が光り輝いた。


 途端にカノンが叫び声を上げる。

 魔法陣から急激に魔力を吸い取られていたのだ。


「どうです?」

 眉間にしわを寄せ、ダリウスはもう一度充填メーターを見つめる。


 先ほどのメーターの上昇よりも速い。

 出力を上げた甲斐があったのだ。


「この魔力量で抽出していけば、今日中には可能だよ」


 動力源が壊れなければ。

 老人はその言葉は口に出さなかった。


「なら良いです。それで行きましょう。これが始まりですから」

 そう言うとダリウスは老人に背中を向け、制御室の出入口へと向かう。



 ――さあ、世界の変革を。


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