第2話


 ベルセルク学園。

 校内。


 入学式が終わり、ニルは教室にいた。

 A組がニルのクラスだった。


「あ、さっきの」

 自席に座るニルは思わず、小さく声を上げた。

 教室に入って来たニルヴァーナの少女と目が合ったからである。

 どうやら、同じクラスの様だ。

「っ! ・・・・・・さっきはすみませんでした」

 ニルを見るなり、真っ赤な顔で少女は頭を下げる。


 さっきは――。

 ニルは少女とぶつかったことを思い出す。


「僕もよそ見していたからね。――僕の名前はニル。ニル――ドラゴニス」

 後ろ髪を掻きながらもニルは微笑み、椅子から立ち上った。


 今の彼の名はニル・ドラゴニス。

 魔導師を目指す者。


「私の名は、アイリス。アイリス――――ニルヴァーナ」

 自身の名を告げるアイリスは、どこか躊躇った表情をしていた。


 ニルの周りにいた生徒は、アイリスの名を聞くなり彼女へと目を向ける。

 寸前まで目の前の生徒と話していたのに、それさえも忘れた様にアイリスに釘付けだった。

 それほどのことなのだ。

 ニルヴァーナである彼女がここにいると言うことは。


「ニルヴァーナ・・・・・・。もしかして――?」

 聞き覚えがある様にニルは席から立ち上がると、腕を組み考え込む。


 無論、知っているとも。

 それに、彼女へ向けられるその視線の意味も。

 彼女へ向けられる視線は次第に増えていった。


「・・・・・・そうよ」

 眉をひそめ、どこか申し訳なさそうに視線を下へと逸らす。

 まるで、その期待の視線に答えられないと言う様に。

「そうなんだ・・・・・・、よろしくね。アイリス」

 気にしない様な何食わぬ顔。ニルは席へと座った。

 ニルの目には周囲の生徒の様な期待の眼差しは無い。

「っ――! う、うん」

 ニルのその表情にアイリスは素直に驚いた。

 素性を知っても尚、変わらずに接してくれる人。

 アイリスにとって、その人物はニルで二人目だった。


 そして、チャイムが鳴るとホームルームが始まる。


 ニルはホームルームの中、現世での日々を思い返していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る