第1話
ベルセルク学園。
入学式。
ニル・ドラゴニスは快晴の空見上げ、疲れ切った様に息を吐く。
藍色の髪をした小柄な少年。
年齢的には青年だが、見た目は少年だった。
「あー、やっと着いた」
数十分道に迷った末、ニルはようやく学園の校門へと辿り着いたのだ。
二日前までニルは、王都ベルセルクから国を一つ跨いだ王国に在籍していた。
学園へとやって来るため、汽車を乗り継ぎここまで来たのだ。
「さて、中に入ろう――」
ニルは気持ちを切り替える様に背筋を伸ばす。
すると、突然横から何かとぶつかった。
突進と言えるほどの勢い。
突然の出来事にニルは思わず、小さくうめき声を上げた。
「きゃっ」
直後、ニルの隣でそんな声が聞こえる。
ぶつかった拍子に倒れる少女。
どうやら、少女とぶつかったらしい。
座り込む少女。
白銀と呼ぶべき真っ白な長髪。
柔らかな眼差しと白い眉。
その表情は、どこか自信が無い様な控えめな表情をしていた。
綺麗なその容姿。
初めて出会うはず――。
だけど、僕は彼女を知っていた。
彼女の持つ魔力。
それはニルヴァーナの血筋が持つと言われる創造の魔力。
歴史に伝わる希望の名。
彼女はニルヴァーナの名を持つ少女であった。
ニルは理解する。
その魔力の本当の意味、本当の姿を。
「大丈夫?」
座り込む少女にニルはゆっくりと手を差し伸べた。
ぶつかって来たのは彼女の方だが、紳士として差し伸べない訳にはいかない。
手を差し伸べるニルを呆然と見つめる少女。
「・・・・・・はい」
戸惑いながらも少女は、ニルが差し伸べた手を取った。
ニルが手を引くと、その反動で少女は立ち上がり、小さく頭を下げる。
「あっ! もうこんな時間!」
ニルの背後に立つ時計塔の時刻を確認し、少女はハッとした顔で叫んだ。
そして、その勢いのまま校内へと走って行った。
取り残されるニル。
数秒後、ニルは大きく息を吐いた。
「・・・・・・まさか、こんなところで出会えるとはね」
ニルヴァーナはベルセルクにいると言う噂。
それ故、もしかしたらこの王都にいれば会える可能性があるかもしれないと。
微かな希望はあった。
しかし、確証など何も無かった。
所詮、噂話だ。
そんな小さな可能性もやってみるもんだ。
――ほら、会えたもの。
不思議とニルの表情は晴れ晴れとしていた。
「――ニルヴァーナ」
空を見上げ、ニルはそう告げる。
そよ風が心地良い。
この空も、この世界も生きている。
それも、ニルヴァーナの天創によって世界が創造されたから。
一度、終焉を迎えた世界を彼女の祖先が生き返らせたのだ。
「やっぱり、僕らは巡り合うんだね」
僕とニルヴァーナは――。
ニルは見上げたまま微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます