終天のニルヴァーナ ~千年前、世界を滅ぼした覇王は、現世では世界を守ります~

桜木 澪

序章


 千年前。

 そこは、圧倒的力を持った一人の少年が全大陸を支配した世界。


 ダモクレス大帝国。

 帝国覇王、グレイニル・アルカード。


 突如、世界は覇王の手により、終焉を迎えることとなる。

 グレイニルが繰り出した一つの魔法。

 

 途端に世界は変貌する。

 

 裂ける大地。

 燃える海。

 黒光りする空。


 人は後にこの魔法を『終創(しゅうそう)』と呼んだ。


 突如訪れた未知なる災害。

 この世に生きる全ての生物は怯え逃げ惑った。


 しかし、彼らに逃げ道など無い。

 この世界にはもう、平穏な地など無かったのだ。


 刻々と迫る世界の終焉。

 

 一秒一秒が重く長い時間。


 誰もが理解する――世界の終わりを。


 日が昇りようやく世界は露わになる。

 世界は淡々と続く荒野に変貌していたのだ。


 木々が生え、海が波を作り、空には雲が浮かぶ。


 かつての世界。

 そんな世界の面影は何一つ残っていなかった。


 これが世界の終焉。

 本当に世界は終わってしまったのだ。


 そんな終焉した世界で、一人の少女が立ち上がった。


 後に創世の巫女と呼ばれる少女、クリス・ニルヴァーナ。


 クリスが繰り出した一つの魔法。

 世界は一瞬にして光に包まれた。


 大地に木が芽吹き、水が海を作り、空に光が射した。


 それはまるで絶望からの創造。

 人はその魔法を『天創(てんそう)』と呼んだ。


 一人の少年が世界を終焉させ、

 一人の少女が世界を創造した。


 アルカードこそ、天災であり絶望の言葉。

 ニルヴァーナこそ、創造であり希望の言葉。


 やがて、その二つの名は絶えることなく後世へと引き継がれる。


 千年後。

 その二つの名が再び世界へと響き渡ることとなる――。




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