第352話 魔王国対ラニアン王国の交渉

「魔王軍よ!直ちに兵を退くが良い、特別に追撃はしないで置いてやる。」

俺とミユキ、ククリが結ばれて一週間、ラニアン王国との交渉が緩やかに開始されるのだが、いつの間にか使者としてやって来ていたハーツが威勢良く宣言する。


「・・・なんだこの痴れ者は?」

アクラはハーツの宣言に呆れる、そもそも兵を退く必要など無くなって来ている。

ゴウが作り上げた駅の周辺では様々な物が購入出来る、兵の中には家族を呼び寄せる者まで現れだしたのだ、いくらでも駐屯出来る勢いがあった。


「痴れ者、よくぞ此処に顔を出せたものだ、ゴウ様のお慈悲で救われた命を捨てに来たというのか?」

「何を言っている、私は使者として来ているのだ!魔王軍は使者を殺す真似はしないと聞いたぞ!」

「人にもよるだろう・・・

まあいい、痴れ者程度を始末してゴウ様との関係に傷が入ると困る。

ラニアン王国の使者として扱ってやるが・・・

ラニアン王国には属国として存続するか滅亡するかの選択肢しか与えていない、多少なりの条件交渉には応じても良いと伝えたが大筋で変わる事は無い。」

「なっ!我が国を属国にするだと!」

「お兄様、落ち着きください。

アクラ殿、ゴウ様は本日もお越しくださらないのでしょうか?」

「ゴウ様はお忙しくされている、このような痴れ者との交渉に来る時間など無い。」

「・・・そちらにしてはお兄様はそうかも知れませんが

私はゴウさんとそれなりの関係を持っていると思っております。」

「・・・なるほど、ゴウ様との縁で条件緩和を願うつもりか?」

「ゴウさんを通して縁戚になれば多少なりのお目溢しは望めるのでは無いでしょうか?」

「ゴウ様と通して縁戚・・・なるほど、そちらの間諜は姫様とゴウ様の関係を調べたようだな。」

「ええ勿論、思いの外ゴウさんとの関係構築が早いことに驚きましたが、私としましてもゴウ様に嫁ぐつもりでございます。」

「まだ受け入れてもらえてもいないのに強きな事だな。」

「あら、ゴウさんが私を側室に迎えようとしている事は調べがついております。」

「ぬっ、そのような話は・・・」

アクラは振り返り部下に確認するが当然ながら魔王国にそのような話は聞こえてきていない、アクラは少し困惑する。

「私はククリさんより前からゴウさんと一緒にいたのです、ゴウさんが私に興味を持っても不思議な事では無いでしょう。」

クロエが自信満々に答える以上、アクラに多少なりの動揺が走る。


「どうでしょう、今後の縁戚ということを考え条件の方の見直しを?

勿論お話次第では序列を争う事は致さないと約束致しましょう。」

「なに、序列に口を出せるとでも!」

「何も持たない私をゴウ様が手厚く庇護してくれた、この事から私がどれだけゴウ様と距離が近いか分かると思いませんか?」

「ぬっ・・・しかし、ゴウ様の口からは何も聞いておらぬ。」

「ゴウさんは王女である私との身分差を気にしていたのです、ですが今なら身分差を乗り越えることが出来るのです。

国が滅びかけた事でこのような状況が訪れた事は皮肉に感じますが私としてはゴウさんとの婚姻出来るようになった事を喜ばしいと思っております。」

クロエはニコリと笑う、交渉はクロエに押されてしまっていたのだった。

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