第351話 ハーツ王太子再び
「お兄様、何故此処に!」
クロエは滞在する部屋にハーツがやって来た事に驚きを隠せない。
「お前にばかり無理をさせる訳にはいかないからな、それに向こうが停戦を望むなら私に危害を加える事は無いだろう。
此処で次代の王たる私が停戦を纏める事で民共に再びラニアン王国に敬意を持たせる事ができる。」
「たしかにそうですが、魔王軍との交渉は難しい物があります、魔王軍と諍いを起こしてしまったお兄様が出れば難しくなると思います。」
「なに、向こうも停戦を模索しているのだろう、ならば私の事をとやかく言う余裕は無いはずだ。
それに国民からの信頼を取り戻す為にも私が話を纏める事に意味があるのだ。」
「・・・わかりました、ですが私達が不利な状況というのは変わっておりません。
あくまでも向こうにどれだけ譲歩を願えるかという話です。」
「わかっている。
それより何故お前の護衛騎士は縛られているのだ?」
「それは諜報活動がバレた結果、魔王軍に捕縛され交渉中の解放は許可されていないのです。
ですがローズがもたらしてくれた情報により、我が国の進むべき策が見えたのです。
交渉が済めばローズには褒美を与えるべきと考えております。」
「なるほど、わかったクロエの考えのままにしよう。」
「ありがとうございます。」
「・・・しかしだ、クロエお前の進言でこれだけは認める訳にはいかない。」
「お兄様、なんでしょう?」
「お前とあの平民との婚姻だ!」
「えっ?しかし、これが一番大事な事なんです!」
「何がだ、王家に下賤な血を入れるつもりか!」 「そのような言い方はやめてください。
ゴウさんは魔王軍にとって要人といえる方です、ゴウさんのもとに嫁ぐ事により、魔王軍とジョージア王国両国と縁を持つことが可能なのです。」
「だめだだめだ、お前はプレザと婚約している身なのだぞ、何故他の男に嫁ぐと言うことになる!」
「婚約?私は誰とも婚約などしておりません!」
「これは父上も認めている事だ、お前の意思など関係無い!」
「お待ち下さい、たとえ婚約が事実であったとしても考え直すべきです!
ゴウさんと結びつくことはラニアン王国として必須です!」
「ならば、叔母上を嫁がせれば良い、さすれば王家との結びつきも得れる。」
「叔母様とは、もしかしてマルリーヌ様ですか?」
「そうだ、ライン侯爵が裏切った今叔母上を嫁がせる訳にはいかなくなったからな。」
「お兄様、失礼を承知で言いますが叔母様を嫁がせる事は不可能だと思います。」
「不可能だと?王族を娶る栄誉になるのだぞ。」
「我が国の者ならそうかも知れません、ですがゴウさんは他国の者、ラニアン王国の王家の縁を求めているわけでもありません、さすれば叔母様の器量にかかっているとは思いますが、お兄様、男性として叔母様は娶りたいような方ですか?」
「はっきりと言うな、失礼に当たるぞ。」
「失礼を承知で言っております。
ですが叔母様を嫁がせるなど提案しただけで国が滅びる事になるかも知れません。」
「・・・」
「男性とは若さと見た目が大事とお聞きした事があります、それをふまえても私が適任だと思っております。」
「お前が美しいのは私がよくわかっている、だがお前はプレザに嫁ぎ、プレザ王族に迎える必要があるのだ。」
「・・・お兄様、プレザを王族に迎え入れるだけならプレザに叔母様を嫁がせれば良いのではないでしょうか?」
「プレザに叔母様を?」
「はい、叔母様を娶れば王族になる事は可能でしょう、プレザならラニアン王国の者、叔母様を娶る事の誉れを理解しているでしょう。」
「しかしだな・・・」
「お兄様!お兄様がプレザを信用し、側に置こうとしているのはわかります!
ですが今は国難を乗り切る時なのです、お兄様の私情で国を滅ぼすおつもりですか!」
「・・・わかった、プレザには叔母上を娶ってもらう事にする。」
ハーツはクロエの説得に折れるのであった。
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