第344話 察知

「ゴウ様、お気をつけください。」

ククリは腰に差していた刀に手をかける。

「・・・隣の部屋?」

ククリの言葉に俺は周囲の気配を探ると隣の部屋に僅かながら気配を感じる。


「ええ、上手く気配を消しているようですが!!」

ククリは壁を突き刺す。


「ぐぎゃ!!」

壁の向こうから声が聞こえる。

「隣の部屋に侵入者です!逃がすな!」

ククリの声に廊下を警備していた兵士が隣の部屋に侵入するとそこには足を刺され身動きが取れなくなったローズがいた。


「この愚か者ですか・・・」

「お前達!この私の身の安全を保証しておきながら攻撃するとはどういう了見だ!!

この恥知らずが!」

「身の安全を保証したのは発言だけだ、ゴウ様の身辺まで潜入して何をするつもりだった!

事と次第によってはその首を刎ねる。」

「ひぃ!」

ククリの殺気に負け腰を抜かしている。

その間に兵士に拘束される。


「ククリさん、殺気が出すぎているよ。

ローズさん、何故こんな所に居るんですか?」

「わ、わたしはラニアン王国の繁栄の為にゴウを活用してやろうと・・・」

「黙れ、ゴウ様を侮辱する気か!」

「ククリさん落ち着いて。

ローズさん、私は魔王国とラニアン王国、両国の話し合いに参加するつもりはありません。」

「なんだと!!」

「両国ともに縁が有りますし、一般人の私が国家の関係に口を挟む立場にいないだけです。」

「何をふざけた事を言っている!

貴様は人族であろう、魔族に組する事無く人族、ラニアン王国の為に尽力を尽くすのが当然である!」

「えーと、私は両方と、いえ、どちらかと言うと魔王国の方と縁が深いのです。

ラニアン王国の味方をするぐらいなら魔王国の味方をしますよ。」

「この裏切り者め!!この手が自由ならその首斬り落としてくれる。」


「誰の首を斬るというのですか?」

ククリは刀をローズの顎に当てる。

「ククリさん落ち着いて。」

「そうだ、お前達は私に危害を加えないという約束を反故にする気か!!」

「ククリさん、こんな奴の為に名を落とす必要はありません。」

「しかし、この者はゴウ様に危害を加えるとまで言ったのです。」

「私は大丈夫です。それにもう拘束されてます、何もする事は出来ないでしょう。」

「・・・ゴウ様がそうおっしゃるなら、しかし、油断すると斬りたくなってしまいそうです。

どうか今晩はゴウ様の側に居させてもらえないでしょうか?」

「俺の側に?」

「はい、ゴウ様に止めてもらわないと私はこの愚者を斬り捨てそうなのです。」

「わかりました、今晩は一緒にいましょう。」

「お願いします。」

俺はククリを止めるために同じ部屋で一晩を過ごす事になる。


「さあ、ゴウ様お部屋に戻りましょう。」

「いや、その前にローズさんを・・・」

「おい、この愚者を拘束したままクロエ王女に引き渡せ、愚者の行いを伝え、拘束を解いた時は交渉終了、ラニアン王国を滅ぼすと伝えろ。」

「はっ!」

ククリは兵士に命じてローズを連れて行かせる。


「さあゴウ様、今晩はいい夜になりそうです♪」

俺はククリに手を引かれ部屋に戻っていくのだった・・・

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