第342話 属国交渉

「さて、交渉と言うがラニアン王国が多くを望むことは出来まい。」

「アクラさん、こちらもそれはわかっております、ですが話し合う事で開かれる道もあると思いませんか?」

「良いだろう、とりあえず聞くだけは聞いてやる。」

「貴様!魔族の分際でクロエ様のお言葉を聞くだけだと!」

「ローズ黙りなさい!黙らないならこの場から出ていきなさい!」

「クロエ様!何故そのような事をおっしゃるのですか!」

「貴女が口を挟むと纏まる話も纏まらなくなります!貴女はどちらを選びますか!」

クロエの言葉にローズは口を紡ぎ黙って座る。


「アクラさん、失礼しました。

話を続けてもよろしいですか?」

「かまわない。」

「ラニアン王国として望む事は魔王軍との停戦です。」

「我々はラニアン王国の軍の動きを見て軍を動かしている、口先だけの停戦を信じろと言うほうが無理があるだろう。」

「それは承知しております、ですので私の身柄を魔王軍へお預け致します、ラニアン王家の私なら人質になると思いますが?」

「クロエ王女一人の身で諦めるとは思えん。」

「ラニアン王国の領地は既にルデンのみです、戦にならないと思います、どうか存続だけでも許可願いたい。」

「攻め落とすのは簡単な事であろう。」

「戦争になれば抵抗するしかありません、そこには多くの血が流れてしまいます、またラニアン王国が滅びる事になればかつてのラニアン王国の領地でも民に動揺が生まれるのでは無いでしょうか?」

「そこまでラニアン王国に求心力があるかはわからぬが・・・」

アクラは少し考える、広い土地で人族が決起すると面倒な事になる事は間違い無い、キツく引き締める事はしていないが同族が滅びる事を許容するかは不明であった。


「アクラさん、現在ラニアン王国はルデンのみの食料では生活を維持できていません、今後魔王国から食料を輸入する事で生き延びる事が可能です。

私達ラニアン王国が逆らう事が出来ない状態での存続、言わば属国のような形になるでしょうか、そのような形でお見逃ししてもらえないでしょうか?」

「そこまでして存続する意味はあるのか?」

「歴史あるラニアン王国を私達の代で滅ぼす訳にはいかないのです。」

「クロエ王女の気持ちはわかった、だがこの事は魔王陛下の採択が必要であろう。」

「それでは検討していただけると考えてよろしいでしょうか?」

「まだ検討段階だがな。」

「ありがとうございます。」

クロエが頭を下げる姿をローズは苦々しく見つめるのだった。

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