第338話 ラニアン王家の生きる道

「お父様、こうなった以上、降伏するしかありません。」

クロエは一呼吸してヘリオスに降伏を薦める。

「クロエ、何を言い出すのだ!」

「お父様、あの建物に侵入出来るかお試ししてみてください。」

「なに?先程からクロエは何を言って・・・」

「お父様、ゴウ様の施設は許可の無い何人の侵入も出来ないのです、もしあの施設に魔王軍が進駐すれば攻めることの出来ない砦が目の前に現れた事になるのです。」

「なっ!おい誰かあの建物に侵入出来るか調べてこい!至急だ!!すぐにいけ!」

ヘリオスは兵に命じて確認するが、答えはクロエの言葉通りであった。


「なんと・・・町から出ることも叶わないのか。」

ヘリオスは報告を受け初めて表情が曇る。

「お父様、ゴウさんはお優しい方です、降伏すれば無体な事はなさらないでしょう。」

「待て、降伏などすれば我等王族は死ぬことになるではないか、いや死ねる我等より、クロエお前の身が心配だ、魔族に穢され高潔なラニアン王家を穢すのでは無いか。」

「大丈夫だと思います、ゴウさんがおられるならそれ程酷い扱いになるとは思えません。

それより相手の印象を良くする為にも我等の身の保身をはかるより国民の事をお願いするほうが先だと進言致します。」

「国民の事をか!平民など何処でも生きていけるであろう。」

「お父様考えを改めてください、国民あっての国です、少なくともゴウさんには王族という事は関係ありません、一人の人としてお付き合いすべきなのです。」

「・・・クロエよ、お前はそのゴウとかいう平民と交流があったのだな?」

「はい、保護されておりました。」

「・・・クロエ、ゴウを此方に取り込む事は出来ぬか?」

「ゴウさんを此方にですか?」

「そうだ、侵入出来ない施設なら我等が活用すれば魔族を倒せるだろう。」

「今更だと思うのですが・・・」

クロエは渋い表情を見せる、今やゴウに会う機会すら無い、会った所で味方をしてくれるかどうかは不明なのだ。


「クロエ、なんとかしてくれないか、私の代で王家を終わらせる訳にはいかないのだ。」

「・・・出来ることはしたいと思います。」

クロエはヘリオスからの頼みとも言える命令を聞くしかなかった。

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