第337話 時すでに遅し

「お父様、なぜ戦の準備をしているのですか!」

城内の物々しさに気付いたクロエはヘリオスに問いただしていた。

「クロエ、これは我が国の運命をかけた戦いなのだ。」

「お父様!今は戦より講和にて道を探すべきです。」

「魔族と話し合いなど出来るはずが無い、だいたい交渉中にも関わらず、ポメに攻め込んだではないか、そのような相手を信じる事など出来まい!」

「あの時の交渉は決裂していたでは無いですか!」

「交渉とは互いに条件を擦り合わせる事だ、一方的に交渉を打ち切った魔族とは分かりあう事など出来ぬ!」

「お父様、私達ラニアン王国が魔王に勝つ見込みなどありません、今は国の存続の為に頭を垂れるべき時にございます。」

「クロエ!お前はハーツをあのような目に合わせた奴等に頭を垂れよというのか!」

「・・・お兄様の事は不幸な事でした、これも全て無駄な条件を提示した結果だと思っております。

当初の条件ならあのような体になる事はなかったのです。」

「クロエ、それもこれも交渉を打ち切った魔族共のせいではないか!」

「お父様、ご自覚ください、こちらは既に条件を出せるような戦局に無いのです。」

「クロエ、そなたは疲れておるのだ、誰かクロエを自室に連れて行け。」

「お父様!」

「安心しなさい、戦に勝てば元通りの暮らしに戻る。」

「お父様話を聞いてください!!」

クロエがなんとか説得を試みている中、外から騒ぎ声が聞こえてくる。


「何事だ?」

「陛下、街を囲むように不可思議な物が現れました。」

「不可思議な物だと?」

「はい、駅と呼ばれる建物と繋がっているようなのですが・・・」

報告を受け町の外の様子を見るのだが・・・


「なんだあれは?」

地面が少し盛り上がり、何やら建造物があるように見える、すると駅周辺に建物が現れる。

「なんなんだ!!何事だ!!」

ヘリオスはいきなり現れた建物に驚きを隠せない。

「お父様!あれはゴウさんのお作りになられたものです。」

「ゴウ?ああ、平民の奴の事か。」

「お父様、ゴウさんを軽く見るのはおやめください。」

「軽く見るも何も、平民風情を王の私が気にすることでは無いだろう。」

「お父様、ゴウさんのお作りになられた施設には誰も許可なく入ることができないのです。

つまりゴウさんが魔族と繋がりを持つ以上、目の前に通行出来ない壁が出来たものと考えるべきです。」

「なんなのだそれは!あれは王都を囲んでいると聞くぞ、我等はルデンに閉じ込められたというのか!」

「そう考えるべきかと・・・」

クロエの表情は暗い、まさかゴウが町を囲むように建物を建てるとは思っていなかった、これによりラニアン王国の領地はルデンのみとなり、遠からず滅亡する未来が見えてきていた・・・

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