第335話 その頃のラニアン王国
その頃、風前の灯であるラニアン王国では城に出仕する貴族の数が目に見えて少なくなって来ていた、ロンベル侯爵が魔族に裏切ったのだが王家が制裁に動く事が出来ない上に、魔族に従ってからロンベル領が発展し始める、その状況にラニアン王国を見捨て、魔王国に寝返る者が増えていたのだった。
「どうなっているのだ!何故欠席者がこれほどいる!
今国がどういう状況かわらからぬ筈は無いだろう!」
ヘリオスは会議にすら数が足りていない事に怒りの声をあげる。
「陛下、欠席者は既にルデンから離れております。」
「なんだと、ルデンを離れてどうするというのだ!今はルデンに戦力を集め魔王を討伐する時であろう!」
「・・・陛下、昔からいざ知らず、今の魔王は我等を、人を滅ぼすつもりは無いようにございます。
此処は一度頭を下げ、魔族と共存すべき時かと存じます。」
「オマル伯爵!そなたは魔族の恐ろしさを知らぬのか!
ハーツを見よ!降ったのち拷問を受け、あのような姿にさせられてしまったのだぞ!」
「・・・確かに酷いお姿になられた事は理解しております、ですが一般兵は解放されておりました、話によるとハーツ殿下が全ての責任をお取りになられたとか。」
「オマル伯爵!ハーツのあの姿を見てもまだそのような事を言えるのか!
今一度、戦意を高める時であろう!」
「今ルデンでは集めた兵の食料にも事欠く始末にございます、このままでは戦う前に干上がってしまいます、どうか御英断を願います。」
「オマル伯爵!わかった!そこまで言うなら全兵に伝えよ!
これより魔王討伐の為、戦を開始する!」
「陛下!」
「干上がる前に敵を打ち破れば良い、幸い我等を侮り、ルデン周囲の兵は減ってきている、今ならば勝つことも可能であろう!」
「一戦に勝った所でどうなるのですか!
敵の本軍が此方に向くだけでは無いですか!」
「一戦に勝利すればラニアン王国の健在を知らしめる事が出来る、さすれば日和見で魔族に加担した者も戻ってくるだろう。」
「そんな希望的な思いで戦を仕掛けるべきではありません!」
「臆したかオマル伯爵!
もう良いわ!他の者は戦の準備をせよ!」
ヘリオスが命令の下、戦の準備が始まるのだった・・・
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