第331話 駅に来たカツ

「こんなに日本人がいる!」

駅に来たカツが驚いたのは駅の設備もさることながら、三十人程の日本人がいた事に驚いていた。


「みんな此処で働いてくれている子達だよ。」

「えっ、働いているの?この子達まだ中学生だろ?」

「カツくん、生きる為には働かないといけない事はわかるよね?

この世界で中学生ぐらいの歳で働いているのは当たり前の事なんだよ。」

「それはそうかも知れないけど、ゴウさんがいれば働かなくても済むんじゃ?」

「いつまでも面倒をみるわけにはいかないからね。」

「えっ?」

「日本に帰る術が無ければ全員ここで生きていかなくてはいけないけど、俺は君達が死ぬまで面倒をみる義務は無いからね、出来ることならみんなには独り立ちしてもらいたいと思うよ。」

「それだけのチカラがあるのに見捨てるつもりなのか!」

「見捨てるなら此処に住むことも許さないし、君を釈放させる事も無いよ、働いている子にはちゃんと賃金を渡しているし、何かしたい事があるなら支援もするよ。

だけど、何もしない子をいつまでも面倒みる気にはなれないかな。」

「おいおい、駅の持ち主は億万長者だって聞いたぞ、少し多いけどみんなを養うぐらいの甲斐性を持てよ!」

「カツくん、これ以上ゴウさんに失礼な事を言うのは止めてもらえませんか?」

カツの言葉が段々荒くなってきた所でミユキが間に入る。


「ミユキさんもこんな状況おかしいと思うだろ?

ミユキさんの口からも言ってくれよ!」

「いえ、私はゴウさんが正しいと思っていますし、それに何よりゴウさんの物ですから、御主人様に歯向かうような事はしませんよ。」

「御主人様?アンタは高校生に手を出して恥ずかしいと思わないのか!!」

「カツさん、私はゴウさんに救われたんです、ゴウさんを悪く言うなら許しません。」

「ミユキさん・・・」

ミユキが制した事でカツはショックを受けている様子だった。


「カツくん、君には金貨5枚の借金がある、それを払い終わるまでは此処で働いてもらい、それ以降不満があるのなら出ていってもらってもかまわない。」

「せこい事を言うなよ、金貨5枚ぐらいお前なら微々たる物だろ!」

「釈放の条件だからね、これは守って貰う。

仕事についてはマナブくんに聞くと良い、ミユキさんカツくんをマナブくんの所に案内してもらっていいかな?」

「わかりました、カツくんこちらです。」

「くっ、こんな傲慢いつまでも続くと思うなよ!!」


「カツくん!それ以上ゴウさんを悪く言うなら私からカツくんを追い出すように言いますよ!」

ミユキの怒った声にカツは固まったまま、部屋をでていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る