第329話 カツの存在

「なあリュウタ、ちゃんと俺の事を伝えてくれたか?」

牢屋に戻ってきたリュウタにカツがたずねるのだが・・・

「うるせぇ!それどころじゃ無いんだよ!」

リュウタは他者を気遣うどころでは無い、反射的に怒鳴るのだが、ふと気になることができた・・・

「なあ、カツは俺達と違うタイミングで来たんだよな?」

「まあな、あの部屋にいたのは同級生とおっさん、あと娘を連れた母親ぐらいだったはず。」

「ゴウって名前に覚えは無いか?」

「ゴウ?知らないな。」

「それじゃ・・・たしかミユキだったかな、その名前は?」

「ミユキ!知ってる同級生だ、美人系な綺麗な子だろ?」

「マコトという名前は?」

「知ってる同級生だ!二人とも一緒にこの世界に来たはずだ!」

「なあ、お前の方から俺の助命を頼めないか?」

「なんだ、助けてもらえなかったのか?」

「頼むって!それにお前をゴウの奴に紹介すれば罪も少し軽くなるかもしれないからな。」

「まあ、俺としてもここを出れるなら助かるからな。」

「決まりだな!おーい!大事な話があるんだ!来てくれ!」

リュウタは何度も叫び、食事の運搬に来た兵士に頼みこみ、なんとかサンチェまで連絡する事に成功する。


「なに?ゴウの探している者が牢屋にいるだと?」

「そうだ。」

「ふぅ、減刑を求めているとはいえ、そのような荒唐無稽な話をするとは・・・」

「いいのか!確認すればすぐにわかる事だ!

もしそいつの刑が執行されればゴウと深い溝を作ることになるぞ!」

「・・・良いだろう、一応使者を出そう。

それでその者の名前は?」

「それより、俺の減刑はどうなる?」

「真実ならば功績により多少の減刑は認められる。」

「どれぐらいだよ!」

「それはゴウ様の求めている度合いにもよるな。」

「くっ、いいか!絶対に減刑しろよ!」

「良いだろう、私も騎士団を預かる者だ、嘘を付くつもりはない。」

「わかった、名前はカツ、ゴウの女に言えば確実にわかる。」

リュウタと約束し、名前を聞いたサンチェは使者をゴウへ送る。


「カツ?それってミユキさんの同級生じゃ無かったかな?」

「はい、村川カツくんなら同級生ですね、でもなんで牢屋に・・・」

「罪は街への不法侵入です、城壁を飛び越えた所を捕縛しました。」

「城壁を飛び越えた?あの高さを?」

街を囲う城壁は十メートルぐらいある、飛び越える高さでは無い。

「はっ!報告ではそうなっております。」

「えーと、それでその罪だとどれぐらいの刑罰に?」

「私の私見になりますが何処の差し金かによって刑罰は変わるはずです。

現在裏取りを行なっている所にございます。」

「その子と面会出来るかな?」

「可能にございます。

いつでもお越しくださってかまいません。」

「わかりました、明日にでも伺わせてもらうとサンチェさんに伝えてもらえますか?」

「かしこまりました。」

俺は面会の手筈を整えて、翌日再び騎士団を訪ねるのであった。

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