第321話 牢屋の中

「ちくしょう!出せ!俺は何もしてない!」

リュウタは騎士団詰め所に連れて行かれ牢屋に入れられていた。

「兄ちゃん、騒ぐな。」

向いの牢屋に入っている男から声をかけられる。

「誰だ!」

「誰だはご挨拶だな、俺はカツ、まあちょっとやらかして此処にいるんだ。」

「なんで俺がお前に指図される筋合いがあるんだよ!」

「うるさいから静かにしろよ、騒いでもなんにもならないうえに印象が悪くなるからな。」

カツの言う通り、騒いでも仕方無いのかも知れない、それにカスミやマナブ達は外にいるんだ、今頃俺を助ける為に動いてくれているだろう。

そう思うと心に余裕も出てくる。

 「それでカツって言ったな、アンタは何をしたんだ?」

「おいおい、先に名前ぐらい名乗れよ。」

「リュウタだ、これでいいか?」

「リュウタ?日本人みたいな名前だな。」

「日本人みたいも何も俺は日本人だからな。」

「日本人なのか!!」

薄暗い牢屋で互いの顔もよく見えないのだが、ガンと牢屋の柵に何かが当たる音が響く。


「俺も日本人なんだ!村川カツ!お前名字は?」

「俺は星崎リュウタだ。」

「ちゃんと名字も日本人だ!リュウタこの町に東京駅があっただろ!あれはお前が関係しているのか!」

「関係しているも何もあそこで寝泊まりしてたし、今も同級生がいる。」

「他にも日本人がいるのか!」

「ああ、俺はクラスメイトと一緒にこの世界に来たからな、今も三十人ぐらいが駅にいるぞ。」

「そんなにいるのか、なあ日本に帰る方法はあるのか?」

「知らねえよ、俺達も訳がわからず連れてこられただけだからな。」

「じゃあ、お前のチカラは何なんだ?

俺は高くジャンプが出来るんだ。」

「はあ?チカラ?

俺はこの拳一つでで天下無敵なんだよ。」

「拳で天下無敵か、となると格闘系のチカラなんだな。」

「何を言ってるかわかんねえけど、格闘は得意だぜ。」

「そうか、そうか。

それでお前は何をやって捕まったんだ?」

「俺は冤罪だ、泊まっていた宿に違法行為があったから捕まっただけだ、そういうカツはどうなんだ?」

「俺は不法侵入で捕まったんだ、駅を見てつい城門を飛び越えてしまったのが失敗だったんだ。」

「不法侵入かよ、だせぇな。」

「うるせぇ、違法な宿に泊まって捕まってるお前に言われたくない。」


「まあ、俺は暫くしたら仲間が助けに来るはずさ。」

「仲間が?しかし、此処は騎士団だぞ、簡単に助けに来れる所じゃ無いはず。」

「いけ好かねえ偽善者だが、王家と繋がりがある奴が駅にいるんだ、俺の同級生が今頃そいつを説得して助け出そうとしているはずさ。」

「そうなのか!それなら俺の事も伝えてくれよ、同じ日本人ならチカラを貸してくれるだろ?」

「まあ言うだけなら言ってやるさ。」

「助かるぜ!」

カツは牢屋で初めて出会えた日本人リュウタに感謝していた、そしてこのまま助け出される事を願うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る