第318話 第一騎士団長サンチェ

俺達がキノコ亭に向かっている中、マーサから連絡を受けた騎士団は騒然としていた。

「マーサ様が騎士団の派遣を求めておられる。

これは一大事だぞ。」

これまで王子として命令を出さないマーサが至急騎士団に来るように連絡が来たのだ、その報せを受けた第一騎士団長サンチェは重く受け止める。


「第一騎士団ですぐに動ける者は何人いる?」

「はっ!すぐにとなりますと300といったところかと存じます。」

「ならば全員すぐに出撃準備をさせろ!後続も順次支度させるように。

先発隊の準備ができ次第、ビビンお前がに率いてキノコ亭に向かえ、私は今すぐマーサ様のもとに馳せ参じおチカラになってくる。」

「お待ちを!後続とはどれぐらいの規模を?」

「第一騎士団全員だ、何が合ってもすぐに対応出来るようにするのだ。」

「はっ!!」

サンチェは準備をビビンに任せ、軽装のままキノコ亭へと先行するのだった。


「マーサ様、至急との連絡を受け、このサンチェ駆けつけました。」

俺達がキノコ亭に着くと同時ぐらいに馬に乗った男が駆けつけ、マーサの前で下馬し、挨拶をしていた。


「サンチェ!お前が直接来たのか!」

「至急との御命令にございましたので、まずは私が参りました。

すぐに後続も来る予定にございます。」

「マーサさん、こちらの方は?」

「第一騎士団を率いているサンチェだ。

サンチェ、こちらはゴウさんだ、古の魔法使いとして噂ぐらいは聞いているだろう。」

「なんと駅から出ないと言われている、ゴウ様でしたか、これは御尊顔を存じず申し訳無い。」

「いえ、引きこもっているだけです。

失礼、ご紹介に預かりました、ゴウです。

サンチェさん、以後お見知りおきを。」

俺は一先ず挨拶をするのだが、それよりやらねばならぬ事がある。


「ゴウさん、行きましょう!」

マナブが我先にとキノコ亭に向かおうとする。

「マナブくん、待って。何があるか分わからないから俺が先に行く・・・」

「ゴウ様、このような時の為に私がいるのです、私の後についてきてください。」

ククリは当然かのように先頭を歩きキノコ亭へと入って行く。

「ちょ、ククリさん危ないですよ!」

「大丈夫です、ちゃんと対応してますから。

おい店主、此処にリュウタがいるならすぐに呼び出せ。」

ククリは店に入るとすぐに店主の所に行く。

「客の事は話せねえ。嬢ちゃんの親か彼氏か知らねえが此処は密事を行うところなんでね。」

ククリは金貨を1枚テーブルに置く。

「おいおい、金じゃねえんだよ。」

更に1枚、2枚と積み、5枚になった所で・・・

「これでも呼び出さないか?」

腰に差してある刀に手をかける。

「・・・待て、わかった!おいリンナ、リュウタに至急の客が来たって呼んで来い。」

「はぁ?なんで私が・・・」

「いいから呼べ、緊急事態なんだよ!」

「わかったわよ!」

リンナは不機嫌そうにリュウタが泊まっている部屋へと歩き、扉をノックする。

「リュウタ、お客よ、至急出てきて。」

「今いいとこなのに・・・」

「いいから!」

「ちっ、わかったよ!」


「見つけた!」

ククリは足に魔力を纏い、尋常では無い速さでノックされた部屋へと走り出し扉を切り飛ばす。


「なっ、なに?」

「邪魔だ!」

ククリはリンナを蹴り飛ばし室内へと突入する。


其処には呼ばれた為にズボンを履いているリュウタの姿があった。

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