第308話 王へ進言

「父上にお話があります。」 

マーサは王都に帰るなりクルトと対談する。

「マーサ、身体は大丈夫なのか?」

「ええ、最近はだいぶ良くなってきております。

それより進言したいお話がございます。」

「どうした、弟達の邪魔にならないよう政治から離れていたお前が進言とはめずらしい。」

「たしかに王位継承の邪魔にならないよう過ごしておりましたが王家の者として民の為になる事を知りながら知らぬ顔は出来ませぬ、どうか検討願いたい。」

「ふむ、聞こう。」

「はい、最近民の間で性行為により病気が流行っている事はお聞きになりましたか?」

「知っておる、女遊びの過ぎる貴族の中にも病気になった者がおる。」

「ご存知なら話が早い、この度ゴウさんの配下も病気になったようでゴウさんは治療を行いました。」

「ゴウの配下も感染したのか、申し訳無いな・・・

うん?今治療と言ったのか?」

「はい、ゴウさんいわく治すことが可能との事でした。」

「まさか、あれは神が貞操観念の低い者に降した罰であろう、治療する事は叶わないと神殿を始め各治療士も言っておったぞ。」

「それは知っておりますが、ゴウさんは治療に自信がお有りのようでした。

そこで私はゴウさんに治療を我が国民にも施してもらえるようにお願いしたところ、引き受けてくださいました。」

「待て待て、信じがたい話だが本当に治るのか?」

「父上、試してみれば良いのです。

何もしなければ治らない病気なのです、まずは選んだ者に治療を施してもらい治れば大々的に発表し、国民の治療にあたってもらうのです。」

「治療費はいくらなのだ?」

「銀貨1枚だそうです。」

「安い!!神殿の治癒の祈りでも金貨1枚は取るだろう。」

「ゴウさんは利益を求めていないそうです。」

「いや、それにしてもゴウの持ち出しが多いだろう。」

「そこで国として補助金を出すのはどうでしょう?」

「補助金?」

「はい、ゴウさんに国として報酬金として渡すか、一人当たりに対しての助成金として渡すか検討する必要はあると思いますが、何らかの形でゴウさんの労苦に対しての礼をするべきかと。」

「たしかに国民が治るなら報酬を渡すべきだな。」

「どうかご検討ください。」

「わかった、前向きに検討しよう。」

クルトはマーサの提案を会議にかけ、国策として性病対策に乗り出すのであった。

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