第302話 来客
「ナオコさん、そちらの方は?」
「こちらはジョージア王国の第一王子様のマーサ様です。」
「第一王子ということはアリサさんのお兄さんですか?」
「ええ、アリサがお世話になりました、それとリスクがご迷惑をおかけした事、お礼と謝罪をあらためて申し上げます。」
「いえ、別にマーサさんのなされた事ではありませんし。」
「それでも王家の者として、二人の兄として言わせてください。」
「わかりました、お言葉をお受けします。」
引き下がりそうに無い気配を感じた俺はその言葉を受け入れる。
「ありがとうございます。」
マーサは頭を下げる。その姿からは貴族にありがちな高圧的な雰囲気を感じる事はなかった。
「マーサさんはこちらにどんなご用事で?」
「私はゴウさんに会いに来たんです。
トーアで偶然ナオコさんと知り合いになりまして、ゴウさんに会いに行くと伺い、同行を願い出たのです。」
「フットワークが軽いですね、王族の方はもっと動きにくいものかと思っておりました。」
「私は病弱で王位継承から遠いですから、もし、何かあってもそれだけの話になるだけです。」
「病弱ですか?見る限りお元気そうに見えますが?」
「不思議なものでゴウさんの施設に滞在している間は調子が良いんです」
「そうなんですか?」
「ええ、トーアに作られた宿に一ヶ月ほど滞在させてもらっていますが私がベッドから離れて自由に歩いているなんて家族ですら信じられないでしょう。」
「王家の重圧から離れているからかもしれませんね。
そうだ、ご病気と仰るなら今度トーアに作る医院で検査してみますか?」
「検査?」
「はい、私がいた国の技術で病気を調べてみればわかる事もあるかも知れません。」
「それは是非お願いします!王宮の医師ではわからなかったんです。」
「そうですか、とは言ってもお二人共船旅を終えたばかりです、このまま船に乗るのも大変でしょう、今日はこのシーモに泊まり、明日帰国しましょう。」
「それはお任せしますが、ナオコさんは急いでいたのでは?」
マーサはナオコに向く。
「私も今すぐどうにかなる話じゃないと思うし、それにこのまま船に乗るのは避けたいわ。」
船の揺れは少ないとはいえ一日船に揺られていたのである、地面に降りた今もまだ揺れているような感じを受けているのにこのまま乗船するのは体的に苦しかった。
「この町には温泉宿がありますから、今日はゆっくり休んでください。」
「温泉ですか!」
「はい、温泉です、そうだカスミちゃん今晩はナオコさんと泊まるかい?」
「うん、それは楽しそう。
ナオコどうかな?」
「カスミとゴウさんが良いなら。」
カスミとナオコは久しぶりの再会という事もあり、楽しそうにしている。
「そうと決まれば宿に行こうか。」
俺達一行は港近くにある、俺が作った温泉宿へと向かうのであった。
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