第299話 旅は道連れ
「ナオコさん、説得に成功したよ。」
「騎士様はそれでいいのですか?」
「陛下からもマーサ様にはなるべく自由に過ごしてもらうように言われている。
他国に向かうのは問題かも知れないがこれまでの事を考えるとお止めする事も出来ない。」
騎士は覚悟を決めた目でナオコに答える。
ナオコにこれ以上言えることはない。
「明日、船に乗って魔王国に向かいますから準備をお願いします。」
「わかった、すぐに船を手配するが・・・ナオコは手配出来ているのかい?」
「私はこのチケットで乗れるそうなんですけど、すいません、どんな手配になっているのかまではまだわからなくて。」
「それなら一緒に受付に行ってみようか。」
「そうですね。」
ナオコはマーサに連れられ港へと向かう。
ナオコが受付にいるラクーンにチケットを見せると手配が進んでいく。
「えーと、出航時間を書いて人数もですか?
マーサ様も一緒に手配なさいますか?」
「良いのかい?」
「ええ、時間も人数も記入欄がありますので大丈夫だと思います。」
「それなら3人お願いしたい。」
「じゃあ、私を含めて4人と・・・」
ナオコは記入を進めていくがこの時気付いていない事があった、定期便は時間が決められており、出航時間を自由に記入する事は出来ない、出来ることは定期便がある時間を指定するだけなのだ。
これが意味することは・・・
翌日、時間通りに待機する船に向かうのだが・・・
「この船には何故乗れない!」
港に停泊している船に乗ろうとする者達がいるのだが誰も乗ることが出来ない、ラクーン達が看板を持ち乗船出来ない事を告げ、次便の乗船を告げていた。
「あ、あれ?もしかして・・・」
ナオコはこの船が貸切りの可能性に気付く、そもそもゴウがいざという時に備えて用意してくれていたチケットなのだ、どんな状況でも乗れるようにしているようにしていてもおかしく無い。
「ナオコさん、この船に他の者はいないのか?」
マーサも周囲の様子から自分達だけが乗船しようとしている事に気付く。
「どうやらそうみたいですね、ゴウさんから預かっていたこのチケットは特別製だったみたいです。」
「これほどの物を手配できるなんて、ナオコさんとゴウさんはどんな関係なんだ・・・」
「このチケットは私が預かった訳じゃないんです、いざという時に備えて準備してくれていた物でして。」
「なるほど、ゴウさんはそれほど君達を気にかけているということですね。」
「そうなんでしょうか?」
「そうじゃないと君達の為に船を一隻そのまま用意などできないだろう。」
「うーん、なんか誤解があるような・・・」
ナオコはゴウに感謝をしているし、優しい人だとは思っているがどこか抜けている所も感じる、今回のチケットの件ですらそこまで考えていないと思っているのだが、納得しているマーサを訂正する勇気も無くそのまま流した状態で船に乗るのであった・・・
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