第298話 ナオコの一人旅

「えーと、ここから船に乗るんだけど・・・

私、本当に異世界にいるのかな?」

ナオコは電車に乗り、ルートの領地であるトーアに着くのだが、其処には小さいながらも日本で見たことあるような遊園地やショッピングモールがあり、その先にある港すら日本の様式であった。


「君は王都から来たのかい?」

「えっ?あっ、はい。」

ナオコは不意に男に声をかけられ驚く。

「それほど緊張しなくていいよ、此処での犯罪行為は厳しく罰せられるからね、治安は良いところだよ。」

男の言う通り、此処には多くの貴族が来ていることもあり、厳重に警備されている、至る所に警備兵が立っており、何かできる様子は無い。

「それはあまり心配してないのですけど・・・」

「そうなのかい、結構驚く人が多いのだけどね。」

「そうなんですね、王都の駅でも暴力行為に出たら外に出されますので此処でもそうだと思っただけですけど。」

「おや、王都の駅と此処が同じだと何でわかったんだい?」

「・・・失礼ですけど、これ以上知らない人と話すつもりはありません。

失礼します。」

「おっと、失礼。

名乗りをしていなかったね。

私はジョージア王国、第一王子マーサという。

別に怪しい者では無いよ。」

「第一王子?これは失礼しました。」

ナオコはマズイと思いすぐに謝罪する。


「声をかけたのは私だし気にすることは無い、それより君の名前を教えてもらえないか?」

「私はナオコと言います。」

「ナオコ?聞き慣れない名前だね。」

「私は異世界から来た日本人です。

王家の方ならおわかりになられると思うのですが?」

「なるほど、ゴウさんのお知り合いということですね。」

「はい、マーサ様はゴウさんと御面識が?」

「残念ながらまだ会うことが出来ていないんだ。」

「そうでしたか、重ね重ね失礼な事をお聞きしました。」

「いや、良いんだ。私も公務でいるわけでもない、ただゴウさんのお作りになられた日本の施設というのに興味があって此処に来たんだ。」

「そうなんですね。

あ、あの、何故それで私に声をかけてくれたのですか?」

「それはね、此処に着く人みんなが驚きの表情を浮かべるのに、君だけが戸惑いの表情を浮かべていたのが気になったんだ。」

「私そんなに顔に出てました?」

「少しね、しかし、ヒホ、ニホンだったかな、そこでは珍しく無いものをなのかな?」

「はい、これより大きな遊園地もございますし、ショッピングモールも色々な物があります。」

「大きな遊園地か、それは行ってみたいな。」

「ゴウさんならいつか作りそうな気はするんですけど・・・」

「それは楽しみだ、あの方は様々な物を生み出すチカラがお有りのようだからね、私が生きている間に作ってくれないかな?」

「生きている間って?」

「昔から身体が弱くてね、すぐに病気になるんだ、医者からもいつ何かあるかわからないと言われているからね、」

「それじゃあ、今外を歩いているなんて、大丈夫なのですか?」

「不思議とゴウさんの作った施設にいる間は身体の調子が良いんだ、だから無理を言って此処に滞在させて貰っている。」

マーサの言う通り、此処にはゴウが作ったホテルが有り、それは解放されている、王家の人なら予約が一杯とはいえ泊まることも可能なのだろう。


「ナオコさん、ゴウさんに会うことは出来ないか?」

「えっ?」

「一度でいいんだ、実際に会ってお話がしたいのだが、恥ずかしながら公的に訪ねると王家の家督争いに巻き込みかねない、非公式に会ってお話したいんだ。」

「そう言われましても、私もゴウさんとそれほど関係が深い訳じゃなくて、ゴウさんの親戚の友達なんです。」

「そうか、無理を言ってすまない。」

マーサのショボンとした表情はナオコの母性を刺激するものがあった。


「これからゴウさんの所に向かいますから友達を通して伝えてもらいます。」

「ゴウさんの所に向かうのですか!」

「は、はい、少し問題が有りまして相談に向かう所なのです。」

「どうだろう!私も同行させてもらえないか?」

「えっ、でも王家の方ですし、お供の方もいらっしゃるのでは?」

「共といっても護衛の騎士が二人いるだけだ、今の私は第一王子といえど家督争いから遠い所にいるからね、此処に滞在している事にすれば問題無いはずだ。」

「ですが、私には決めれません。」

「迷惑はかけない、頼む!!」

「・・・わかりました、でも護衛の方の承諾を取ってからにしてください。」

「勿論だ!少し待っていてくれ!」

マーサは近くで様子を伺っていた二人の騎士と話し始めるのであった・・・

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