第294話 散策
「あのゴウさん、視線が気になるのですけど・・・」
ミユキの言葉の通り窓の向こうには人集りが出来ている。
「あはは、窓際は失敗だったかもね。」
俺達を一目見ようと多くの魔族達が集まってきている、ただ邪魔をしてはいけないという思いもあるのだろう、店舗の窓に張り付くのではなく、少し離れて見ているのだがそれでもかなりの数が足を止めて俺達を眺めている。
そんな中、メニューを見ると果実ジュースの中に別枠でミカンジュースが何種類もある。
「あのなんでミカンジュースだけこんなに種類かまあるんですか?」
「ミカンジュースはかつて創造神様の故郷で数多く作られていた誇り高い果物です。
神代の時に故郷の味をいつでも味わえるようにと数多の品種がここイーヨに持ち込まれ栽培されているのです。
その種類ごとに味が違いますので当店ではあえて分けて提供させてもらっております。」
「たしかに見慣れた品種名です。」
愛媛に住んでいたミユキやアヤカには馴染み深いのかその名前に心当たりがあるみたいだが・・・
「『せとか』『はるみ』『清見』って人の名前みたいだな。」
「そういった種類なんです。」
「違いがわからないけど、折角だし色々頼んでみる?」
「そうですね、みんなでシェアして飲んでみましょう。」
ミユキの提案にカスミ、アヤカの嬉しそうに賛同した為に俺達は何種類も頼む事にする。
「それではゴウさんからどうぞ。」
「じゃあ、この『せとか』からいこうかな。」 俺は一口せとかを味わう。
「うん、知っているミカンジュースより、甘い。」
「『せとか』は糖度が高い品種と聞いた事があります。
さて、私も一口・・・」
ミユキが俺の飲んだグラスを手に取ろうとすると、横からカスミの手が伸びてくる。
「ミユキさんは知っている味でしょ?
ここは知らない私から先に飲んでみるね?」
「カスミさん、私も知っている味か確かめたいのです。」
ミユキとカスミが笑顔でやり合っている中・・・
「ゴウさん、こっちの『はれひめ』も後味がすっきりして美味しいです、飲んでみてください。」
「どれどれ、うん、本当だね、甘いけど後味かわサッパリしてる。」
俺はアヤカが勧めてくる『はれひめ』を飲んで味の違いを再確認していた。
「「あーー!!アヤカちゃん!」」
「ふふ、どうぞお二人は取り合いを続けてください♪
先手は私が行きますから。」
俺がミカンジュースの味比べを楽しむ中、女性陣も楽しそうにお喋りに興じている姿に俺はほっこりするのだった。
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