第292話 再出発

「ルートさんが同行するんですか?」

「はい、ゴウ様が向かう所が私の進路でございます。」

「それは助かるけど、領地とか大丈夫?」

「大丈夫です、陛下から文官も派遣される事になっております。

優秀な家令もおりますので私が不在でも問題ありません。」

「それならお願いします、ルートさんがいると私も心強いですから、歓迎します。」

「勿体無いお言葉です。」

俺は同行してくれるルートと握手を交わし、再び魔王国に向けて出発する。


「カスミとゴウさん、また出かけちゃったのか。」

見送ったあとナオコは少し寂しそうにする。

「ナオコさん、またすぐに帰って来ますよ。」

「それはわかっているんですけど・・・」

落ち込むナオコにマナブが声をかける。


「それにカスミさんが帰って来るまでにやる事は沢山ありますよ。」

「やること?」

「ええ、ナオコさんを始め何人かの人には店長教育を始める事になりました。」

「それってゴウさんの指示?」

「ええ、勿論本人の意志が優先されますがやる気があるならそれぞれ店を任されると思います。」

「それって、カスミ達が拠点を変えてもついて行けるってことよね?」

「此処が本拠地なら良いのですけど、ゴウさんと話している様子をみるに魔王国が本拠地になりそうですから、カスミさんの近くにいたいならそちらの店を任された方が良いかもしれませんね。」

「わかったわ、頑張る。」

「その意気です、やる事は沢山ありますよ、まずは現地人の雇用からシフトの設定、値段の設定、売上の記録、色々覚えてもらう事はあります。」

「他にもいるって事はみんなバラバラになるのかな?」

「・・・無いとは言いません、ですがゴウさんの交通網で繋がっている店舗になるはずですし、店と言っても近くで業種が違う店を開業しても良いそうです。

それなら僕達の繋がりが無くなる事は無いと思います。」

「そうよね、うん頑張って覚えるわ!」

「まあ、女子の中ではゴウさんのお妾を狙う子もいるって聞いたがその方面でも繋がりが・・・」

「あーカスミがしっかり見張ってるからむずかしいかも、でもそうよね、この世界で嫁ぐ子が出てもおかしくないのよね。」

「そうですね、既に何ヶ月も経ってます、帰れない事を考えて行動すべきかもしれませんね。」

悲しい話だが帰る術があるかどうかもわからない、ならばこそこの世界で生きていく事を考えていくべきだろう。


「嫁ぐで思い出したけど、最近街では性病が流行ってるらしいよ?男子は大丈夫?」

「なっ、俺達は中学生だぞ、そんな関係はまだ早いだろ!」

「そうかな?この世界で私達ぐらいの歳は既に成人扱いされるでしょ?

そういったお店に行っている人もいるんじゃないかな?」

「・・・無いとはいえないな、だが性病が流行っているとなれば今一度周知しておく必要がある。

ナオコさんも女子に連絡を頼めるか?」

「わかってるわ、でも女子関係は既に知ってるわ、男子の方が問題でしょ?」

「わかってる、よく言っておく、それと避妊具の支給も検討しないと・・・」

「既に信じてないよね、それ・・・」

「最悪の事態に備えてだ、性病を舐めていると命に関わるからな、流行っているのはこの世界で治療は出来る病気なのか?」

「わからないわ、私も噂で聞いただけだもの。」

「それも含めて調べてみるか・・・」

ゴウがいない今自分達の事は自分でやる必要がある、性病が流行ってしまいましたなど情けない報告をする訳にはいかない。

マナブは急ぎ男子を集め性病について周知するのであった。

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