第288話 追放者に対して

リュウタが追放されたが学生達にそれ程混乱は起きていなかった、マコトの一件は人望のあったカスミを守る為に団結していたが、元々不良だったリュウタの味方になる者は少なく、庇護してくれているゴウを殺す事に加担した事を重く捉える者の方が多かった。


「ったく、あいつは何を考えているんだ、ゴウさんのお陰で俺達は生活出来ているっていうのに。」

纏め役であるマナブはため息を吐く、カスミを守る為に共闘したマナブは数少ないリュウタの擁護派でもあるのだが、立場的に直接助ける事が許されない事も理解していた。


今はゴウが店長を任せてくれ、同級生達に働き口をくれているが、ゴウの勘気に触れ、庇護を止めると言い出せば全員が路頭に迷う事になってしまう、ゴウがそのような事を言い出すとは思えないが自分の命を狙った者を助けようとする者にまで寛大な心を期待するのは間違いだろう・・・


日課になっている訓練を続けているとマナブは声をかけられる。

「マナブ、この前俺達ゴブリンを狩ったぜ!」

「おい、テルカズ戦闘の許可は出てないだろ!」

「お前が休みの時にルート先生が何人かに実習として連れて行ってくれたんだ。」

「なっ!僕が休んでいた時にそんな事が!」

「まあね、でも、あれはヤバい、ゴブリンなんて雑魚って思っていたけど、間違いだよ。」

「違うのか?」

「違う違う、向こうも頭を使ってくるし、何より人型っていうのが辛い、人を殺しているような物だろ?

俺には冒険者は無理だな。」

同級生の何人かは現実を見て冒険者を止める者が出ていた。

「じゃあなんで訓練を続けているんだ?」

「そりゃこんな世界だろ、身の守り方ぐらい知らないと何かあった時に困るだろ。」

「まあそうだな・・・」

「マナブだって、店長なら剣の腕なんていらないけど鍛えているだろ、同じだよ。」

テルカズはヒラヒラと軽く手を振る、言う通り今の立場で剣を使う事など無い、だが使えると使わないは違う、せっかく基礎を教えてくれる人がいるのだ、学べる事は学んでおくこと事が大事だとわかっていた。


「しかし、リュウタがゴブリンキングを倒したなんて嘘だな。」

「えっ?」

「ルートさんに案内されて冒険者ギルドを訪ねたけど、ゴブリンキングなんてここ十年現れていないって言ってたよ。」

「見栄をはったという事か?」

「まあね、大怪我したみたいだし、つよい相手と戦った事にしたかったんじゃないか?」

「なんでそんな嘘を・・・

それよりじゃあアイツは訓練もせずに今後生きていくつもりか!」

「まあ追放されたしな、全く何を考えているんだか。」

伝えられる情報にマナブは不安になる、追放されたとはいえ同級生に死んでほしいわけでは無い、せめて訓練だけでも受けれるように出来ないか検討するのであった。

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