第284話 最後の対面
「ま、待って、家族に伝えるってどういうことよ!」
「残念だけどリエさんの死刑は免れそうに無い、だからもし帰れた時にご家族に伝えられるならと思って最後の別れの時間を作ってもらったんだ。」
「私が死刑・・・」
「そうだよ、何人も殺してしまったんだ、その罪を償うしか無い。」
「いやよ!私は死刑なんていや!!」
「嫌と言われても俺達にはどうしようも無い、今回面会時間を作ってくれたことも特別なんだ。」
「アンタがなんとかしなさいよ!」
「残念だけどなんとか出来る話じゃ無いんだ。
それでどうする?」
「いやよ!私は遺書なんて書かないわ!」
「そうかい、それならそれでも良いよ、時間までミユキさんと別れを惜しむといい。」
「ちょ、ちょっと!私の遺書を待つんじゃないの!」
「待たない、遺書を残すかどうかは君次第であり、俺はミユキさんへの配慮として提案しただけだ。
それ以上でもそれ以下でも無いよ。」
「ミユキ!こいつをなんとか説得して!」
「ごめんねリエ・・・」
ミユキは申し訳無い思いを抱える。
友人とはいえ、理由無く、人を殺してしまったリエを庇う事は出来ないと理解していたのだ。
「ミユキ!私達友達でしょ!」
「友達だからこそ、最後の言葉を聞く必要があると思ったの・・・」
「最後って何よ!助けてよ!私死にたくないよ!」
リエは自分に死が近づいている事を感じ泣きながら膝をつく・・・
どれぐらい経っただろう、面会室の扉が開き兵士が中に入ってくる。
「ゴウ様、お時間にございます。」
泣き崩れるリエをミユキは慰めていたがいつまでも此処にいる訳にもいかない。
「ミユキさん、そろそろ・・・」
「・・・はい。」
ミユキは俺に促され立ち上がる。
「ちょ、ちょっとミユキ、何処に行くのよ!私も連れて行ってよ。」
「リエ・・・
ごめんなさい、連れていけないの・・・」
ミユキはずっと涙をながしている・・・
「お願い、私死にたくない・・・
こんなところで死にたくないよ!」
「リエ、私じゃどうする事も出来ないよ。」
「ゴウ様、お時間にございます。
申し訳無いのですが決まりでございます。」
「すまない、あと彼女の最後の時間が裸というのはさすがに可哀想に思う、これで着るものと食事を。」
俺は兵士に数枚の金貨を握らせる。
「ゴウ様から頂く訳にはいきません!」
「君達が彼女を恨んでいるのを知っているのにお願いするんだ、せめてこれぐらいは納めてくれないか?」
「・・・わかりました、彼女が最後の時を迎えるまで、相応の扱いをお約束いたします。」
「ありがとう。
ミユキさん、行きましょう。」
俺はミユキの手を取り、泣き崩れるミユキを支えながら部屋をあとにするのであった。
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