第283話 牢屋のリエ
捕縛されたリエは裸のまま牢屋に入れられていた。
「服ぐらいよこしなさいよ!」
「黙れ!お前に渡す服なんか無い!」
警備兵のリエに対する扱いは最低なものである、本来なら連行する必要も無く殺す所だが、ゴウと面識のある同郷者ということもあり、捕縛の際に命は取らないように強く言われていたのだ。
「おっ、姉ちゃん、良いもの見せてくれるじゃねえか、欲求不満かぁ〜」
「うるさい、黙れこの変態!!」
向かいの牢屋にいる男から茶化されリエは牢屋内にあった寝る用の布に包まり裸を隠すのだった。
「なんで私がこんな目に遭わないといけないのよ・・・」
リエの瞳には悔しさから涙が浮かんでいた。
それからもリエの不遇は続く、食事の時でさえ・・・
「おい、飯だ食え。」
パンとスープが雑に置かれるの。
「ちょっと、スプーンが無いんだけど。」
「お前にスプーンなんか渡したら何をするかわからない、渡せる筈が無いだろう。」
「なによそれ!手で食べろとでも言うの!」
「嫌なら食わなくてもいい。」
すぐに食事を下げようとする。
「待ちなさい!食べるわよ!食べればいいんでしょ!」
リエは食事を抱え込む。
「なら大人しく食べてろ!
食器は投入口に置いておけ。」
牢番は次の囚人に向かって行く。
そんな日が幾日か過ぎたある日・・・
「面会だ立て。」
「面会?」
リエを面会だといい何人かの兵士がやってくる。
「そうだ、本来なら即死刑にすべきお前だが、最後の挨拶をしたいと言うお方がいるのだ、大人しくするんだぞ。」
「わかったわよ、誰だかわからないけど会えばいいんでしょ!」
リエは布を身体に巻きつけ立ち上がる。
「リエ!!」
「ミユキ!」
面会室で再会した2人だが、二人の間には鉄格子があった。
「リエ、なんであんな事をしたの・・・」
ミユキの瞳には涙が浮かんでいる、それは会えた嬉しさではなく、今後会えなくなる哀しみから来ているものだった・・・
「ち、違うの!私は何もしていないわ、いきなり攻撃されたから抵抗しただけよ。」
「何もしてないなら助ける事も出来たのよ、でも・・・」
ミユキは後ろに立っている俺を見る。
「残念だけど、リエさんが森の奥で人を殺していた所を見た者がいる、そして、被害者を誘っていた事を知っている者もね。」
「嘘よ!アンタはミユキを私に取られたくないから嘘を言ってるのよ!
ミユキ信じて!」
「ゴウさんが嘘をつく必要は無いよ。
それにその報告は私も一緒に聞いたから・・・」
「えっ、ミユキ・・・」
「リエ、この世界に来て一人で生きているリエの事を尊敬してたのよ、でも人を殺して生活していたなんて・・・」
「・・・仕方無いでしょ!どいつもこいつも女の私をエロい目で見て襲いかかってくるのよ!そいつらから金を奪って何が悪いの!」
「それでも殺しちゃ駄目だよ。」
「はぁ?何を言ってるのよ、殺さないと襲われて奴隷にされるのよ!
そんな無様な生き方はできないわ!」
「・・・私にはその生き方は出来ないわ。」
ミユキは無様と言われても人を殺して生きる事に抵抗を感じる。
「二人とも落ち着いて、俺としてはミユキさんの言いたい事も、リエさんの言いたい事もわかるよ。
ただ、リエさんはやり過ぎたんだよ。」
「私がやり過ぎた?」
「そうだよ、こっちに来た時に襲われたんだね、その時に殺してしまったのは正当防衛だし、事故みたいな物だと思う。
だけど、王都近郊で殺して金を奪っていたのは楽に稼ぐ為だよね?」
「それの何が悪いの!獣を狩ってお金を得るのとケダモノを狩ってお金を得る、違いは無いわ!」
「随分違うと言っても君にはもう届かないだろう。
此処からは建設的な話をしようか。」
「何よ!私達の話しに入ってこないで!」
「いつまでも時間は無いからね。
リエさん、言い残す事は無いかな?」
「言い残すこと?」
「そう、まだ帰る手段は見つかってないけど、もし帰った時に家族に伝えておく事は無いかい?
それを預かろうと思ってね。」
「家族に伝える・・・」
あらためて家族に伝えると聞くとこれまで実感の無かった、だが家族の事を聞きリエは心の底から震えが来るのであった。
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